Yahoo! JAPAN政策企画

検索結果とプライバシーに関する有識者会議

 Yahoo! JAPANは、「検索結果とプライバシーに関する有識者会議」を設置し、複数回の有識者会議を通じて検索サービスの社会的意義や検索サービス提供者の社会的責務について検討を行い、今年度中をめどにその結果の概要を公表する予定です。

1.有識者会議設置の趣旨
 インターネットの普及から20年あまりが過ぎ、世界中の誰もが世界に向けて情報を発信することが当たり前の世界となりました。インターネット上には、学術やビジネスの話題から趣味の話題まで、あらゆる言語で、世界中の人々が発信する膨大な情報があふれています。こうした無数の情報のなかから、インターネットのユーザー一人ひとりが、自分が必要とする情報を見つけ出すことは、本来、非常に難しいことです。
 検索サービスは、この難問を解決し、すばやく、簡単に、かつ的確に目的の情報を見つけ出すことを可能とし、瞬く間に人々の生活に浸透していきました。帰省や旅行の計画を立てるとき、テレビで話題のお店や気になるアーティストについてもっと知りたいとき、友人への誕生日プレゼントを選ぶとき、レポートの調べものをするとき、風邪を引いた子どもを連れて行く病院を探すとき、災害時に必要な避難情報や行政情報を探すとき、日常の数えきれないシーンで検索サービスは利用されています。Yahoo!検索も、Yahoo! JAPANが日本でサービスを開始した1996年にサービスを開始し、今や月間平均ページビュー(PV)が58億件に迫る、Yahoo! JAPANを代表するサービスに成長しています。
 検索サービスは、膨大な情報のなかから人々が的確な情報を探し出すことを可能にし、情報を伝えたい人に対して自らの考えをより多くの人に伝える機会を提供してきた一方、検索サービスに対して、自分にとって好ましくない情報を消したいという要望を持つ人も現れてきました。この問題について、日本においてもさまざまな議論がなされてきましたが、裁判所においては民法の不法行為の枠組みを踏まえてプライバシーの保護が図られてきており、従来、プライバシーと「表現の自由」や「知る権利」とのバランスに配慮しながら、削除の適否が判断されてきています。
 ヤフーの検索サービスに対しても、従来、検索結果に表示される自身についての情報を検索結果から削除してほしいとの要望が寄せられてきました。これに対して、私たちはこれまでの裁判所の判断も踏まえて、要請内容の一つひとつを慎重に検討した上で一部の情報については検索結果から削除を行ってきました。
 検索結果からあるウェブページを削除すべきかどうかを判断する際、私たちが慎重に検討を行ってきたのには理由があります。一つは、特定の情報を検索結果から削除することが検索サービスの中立性や信頼性に与える影響を考慮する必要があるという点です。検索サービスにおいて特定の情報が削除されるなど、恣意的に検索結果が操作されているとユーザーに受け止められることは、検索サービスに対する信頼を根本から損なってしまうおそれがあります。
 もう一つのより重要な点は、検索サービスを利用する無数のユーザー、またインターネット上で情報を発信しているインターネットユーザー全体に与える影響を考慮する必要があるということです。検索結果からある情報を削除すべきかどうかの判断は、削除を求める方々の事情のみを考慮すればよいというわけではありません。検索サービスは、膨大なインターネット上の情報について人々の情報収集の手助けを行うものであり、ユーザー一人ひとりの「知る権利」の実現に大きく貢献しています。また、多くのインターネット上で発信される情報が受け手に届かなければ価値をもたないという意味では、検索サービスは、人々の情報発信、すなわち「表現の自由」の実現にも貢献しています。
 したがって、検索結果に表示すべきか、削除すべきかに関する判断にあたっては、削除を求める方々の置かれた状況を十分に踏まえつつも、検索サービスに対する信頼と透明性を確保すること、そして、私たちの社会における「表現の自由」や「知る権利」とプライバシーという多様な価値をバランスよく反映したものであることが必要となります。そのため、この判断のあり方を整理しつつ、それについて広く外部の専門家からご意見をいただく必要があると考え、「検索結果とプライバシーに関する有識者会議」を開催することといたしました。この会議では、「表現の自由」とプライバシーの問題について、卓越した知見を有する研究者の方々、裁判官としての豊富な実務経験を有する方々にご参画いただき、情報社会における検索サービスの役割を見据えながら、あるべき検索サービスの姿について検討を行います。


2.検討事項
 「表現の自由」とプライバシーとの対立をどのように考えるべきかという論点は、日本において決して新しいものではありません。例えば、「表現の自由」と前科などに関わる事実を公表されない法的利益が対立した「ノンフィクション『逆転』事件(※)」 においては、情報発信による不法行為の成否を判断するにあたって、その作品で取り上げられた事件それ自体の歴史的・社会的意義、当事者の立場、著作物の目的や性格その他の要素など、多くの要素を総合的に考慮する必要性が示されました。
 この判決は、「表現の自由」とプライバシーの問題を考える上で大いに参考になるものですが、直接の情報発信者(例えば、小説家、報道機関、ブロガーなど)の「表現の自由」とそれによって損害を被る個人のプライバシーとの対立を対象としたものであるということも考えると、検索サービスにおける「表現の自由」や「知る権利」とプライバシーの関係についてはさらなる考察が求められることになります。このような論点も含め、本会議では以下の事項について検討を行います。

・検索サービスの社会的意義
 検索サービスの中立性と信頼性、「表現の自由」や「知る権利」への貢献

・検索サービス提供者の社会的責務


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※ノンフィクション作品で自らが過去に起こした事件について実名を使用された個人がプライバシーを侵害されたとして著者に対して慰謝料の支払いを求めた事件。

3.委員
 委員長 
 内田 貴(東京大学名誉教授、弁護士)
 委員
 泉 徳治(弁護士、元最高裁判所判事)
 宍戸 常寿(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
 長谷部 恭男(早稲田大学大学院法務研究科 教授)
 升田 純(中央大学大学院法務研究科 教授、弁護士、元東京高等裁判所判事)
 ※敬称略

4.検討スケジュール
 11月11日に第1回有識者会議を開催します。その後、複数回の有識者会議を実施し、今年度中をめどにその結果の概要を公表する予定です


2015年4月3日追記
 2015年3月30日に「検索結果とプライバシーに関する有識者会議」の報告書を公表しました。