Yahoo! JAPAN 政策企画

海外からの配信にも消費税課税を(その2)

海外からの配信にも消費税課税を(その1)」では、電子書籍などのコンテンツを販売する事業者と消費者の取引、いわゆるBtoCの取引における「公正な競争環境のゆがみ」、すなわち競争上の不公平についてお話しました。

今回は、事業者同士の取引、いわゆるBtoBの取引においても生じる競争上の不公平についてお話しします。

おもちゃを販売するにあたって広告を出す玩具メーカーと、広告掲載サービスを提供する事業者との取引をイメージしてください。
実は、前回お話ししたBtoCの取引と同様に、この玩具メーカーが、海外の事業者から広告掲載サービスを購入する場合、Yahoo! JAPANのような国内の事業者から購入する場合と異なり、現在の制度では、消費税は広告掲載サービスの売主である海外の事業者を通じて国に納められてはいません。

それにもかかわらず、BtoCの取引の場合と違い、「事業者同士の取引(BtoBの取引)においては、現状のままとしても競争上の不公平は生まれない」という意見があります。

それはなぜか?
「仕入税額控除」という制度があるからです。

「仕入税額控除」とは、事業者が原料や商品を仕入れたり、広告掲載サービスを購入したりする際に支払った消費税の金額を、その事業者自身が商品販売後に納める消費税から控除することができる制度です。つまり、取引の各段階の中で重複してかかってしまった消費税分を、あとから取り戻すことができるしくみです。
このしくみは、製造や販売などの各段階において支払われた消費税を差し引いて納税させ、消費税を何度も重複して支払うことにならないようにするためのものです。
よって、事業者同士の取引にはこの制度が適用されるため、海外の事業者の広告掲載サービスに消費税が課せられていなくても大きな問題はない、つまり、不公平は生まれないという意見があるのです。

例を挙げてお話します。たとえば、先ほどの玩具メーカー(A社)が、新商品発売の宣伝のため、Yahoo! JAPANのような国内の事業者(B社)のインターネット広告を利用したとします。
この場合、A社がB社に広告掲載料を支払う際、消費税も支払います。一方で、A社は、消費者に商品を販売する時に消費税を受け取ります。
このA社は、消費者から受け取った消費税を国に納税する際に、納税額から、B社に支払った消費税を控除できます。これが仕入税額控除です。(「仕入税額控除について」の図を参照ください)

<仕入税額控除について>


他方で、広告掲載サービスを提供するのが海外の事業者(C社)だった場合、広告掲載料には消費税は含まれていませんので、後から仕入税額控除は適用されず、消費税を控除しません。

この仕入税額控除があれば、A社のような事業者は、自ら負担した分の消費税を後で控除できるので、広告掲載料に消費税が課せられていても課せられていなくても、A社の選択に影響は出ない(つまり、B社とC社との間に競争上の不公平はない)とも考えられます。

しかし、そう簡単に言えるのでしょうか。

というのも、
ア 医療や金融などの一定のサービスには消費税が課せられていないので、仕入税額控除の制度の適用があっても、売上の際に消費者から受け取って国に支払う消費税というものが存在せず、仕入過程での消費税を差し引くことができず持ち出しになっている
イ 多くの中小企業や個人事業主にとっては支払った消費税相当額が計算上、後で取り戻せるとしても、日常の取引では実際の支出額のほうが重要
といった実態があるからです。

ある事業者がインターネット広告の出稿を検討する際、その事業者がアに該当する場合であるほか、イを懸念していたとしたら、国内の配信事業者が提供する消費税課税対象の広告サービスよりも、出稿時点でのコストが抑えられる海外の配信事業者の広告サービスの方が魅力的に見えることでしょう。

これが、まさに不公平な状態を生み、前回、述べたとおり、サービスを受ける側にとって望ましくない結果をもたらすことになります。

これらのことを考えると、やはり、BtoC、BtoBのいずれにおいても、同じ消費地課税(詳しくはこちらをご覧ください)の原則を採用するのが、もっとも公平で、簡潔な解決策です。

なお、BtoB取引は、BtoC取引に比べ、多様な取引が行われています。そのため、全てのBtoC取引において消費地課税の適用を試みた場合の影響を心配する声もあります。しかし、前述のとおり、競争上の不公平が生じている現状、見直しは不可欠です。まずは、明らかに競争上の不公平が生じている分野から是正していくということこそが、いま取るべき最善の方策なのではないでしょうか。

そして、広告やクラウドサービスといったインターネットサービスでは、海外の事業者であっても容易に日本向けにサービスを提供することができるため、現在、内外の事業者による激しい競争が行われています。そこで、競争上の不公平を解決し、公正な競争環境を確保することが喫緊の課題となっている分野といえます。まずは、このような分野から、新しい制度を導入し始めていくべきと考えます。

最後に、消費税の申告や納税の手続き面での課題もありますので、その点にも触れます。

申告や納税の方法としては、
ア 日本に拠点を持たない海外法人などの納税義務者には、納税管理人を届出させることで申告・納税をさせる
イ サービスの購入者に申告・納税してもらう(この方法はリバースチャージとよばれています)
の2つが考えられます。

納税管理人の制度は、制度としては存在していますが、納税管理人を届出しない事業者にどうやって強制をするかという課題をかかえています。
リバースチャージは、サービスの購入者が消費者である場合を考えると現実的ではなく、購入者が事業者である場合にも、国内の事業者に新たな運用コストを生じさせるという課題があります。
両者はともに課題を持っていますが、公平性、実効性の観点からは、アの方策がより現実的で望ましいものと考えています。財務省は制度を作る以上は納税の方法にいたるまで完璧となるものを目指そうとするかもしれませんが、インターネットサービスのように進歩の激しい分野に対応するためには、その時にできるベターな方策を積み重ねることの方が現実的だと私たちは考えます。

今回のインターネットサービスの消費税問題については、ここまでとなります。

Yahoo! JAPANは、インターネットサービスの健全な発展、拡大を目指し、国内の事業者と海外の事業者が対等な立場かつ公平な条件で競い合えるよう、引き続き、関係各所に働きかけていきます。