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一般用医薬品ネット販売に関する意見(2)

以前このブログの一般用医薬品ネット販売に関する意見の中で、「国民の健康を守るために真剣に安全性を検討するのであれば、科学的にアプローチをしていくことが大切であり、一般用医薬品を科学的根拠に基づいてコントロールすることこそが薬害を本当に防ぐことになる」という意見を述べましたが、今回は、この観点からもう少し考えてみます。

一般用医薬品は、薬事法25条1項において、「医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであつて、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものをいう」と定義されています。
この定義は、2006年の薬事法改正によって追加されたもので、それまでは法律上一般用医薬品は定義されていませんでした。

2004年9月6日の第5回厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会の資料では、一般用医薬品は、「一般の人が薬局等で購入し、自らの判断で使用する医薬品であって、通常、安全性が確保できる成分の配合によるものが多い」と定義され、医療用医薬品の承認審査が「医師等の管理が必要な疾病上の治療・予防に使用されることを前提に、有効性及び安全性を比較考量して審査される」とされているのに対し、一般用医薬品の承認審査は「一般の人が直接薬局等で購入し、自らの判断で使用することを前提に、有効性に加え、特に安全性の確保を重視して審査される」とされています。

現行の薬事法の定義をみると2004年当時の資料には記載のなかった「薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているもの」という記載がありますが、薬事法36条の6第4項において、購入者が希望しない場合には薬剤師からの情報提供をしなくてもよいことを認めていますので、現行法上も一般用医薬品は自らの判断で使用することを前提としたものであることがわかります。

医薬品の申請業務に携わる方が参考にされる「医薬品製造販売指針(2012)」(レギュラトリーサイエンス学会監修)の511ページにおいても、一般用医薬品の承認審査の基本的な考え方として、「一般の人が自らの判断で使用するものであることから、安全性の確保が前提となるものであり、配合成分の種類及び分量は有効性とともに安全性が確保できる範囲のものであること」、「国民が自分で選択でき、適正に使用するための情報が整備されていること」と記載されています。

現在の厚労省の議論や報道されている内容をみるかぎり、このような自らの判断で使用することが前提とされていた一般用医薬品の性質が忘れ去られ、インターネット販売に限らず、一般用医薬品の性質とは離れた制約がかけられるのではないかと思われるところがあります。

月刊FACTAの2013年3月号に「日本医師会が芽を摘む「大衆薬」」という記事があります。その中で、医療用医薬品としての年間売上高が380億円を超えるエパデールという高脂血症治療薬(青魚に多く含まれるイコサペント酸エチル(EPA)を高純度に精製した薬。中性脂肪を正常に戻す効果が期待できる)の厚労省における一般用医薬品としての承認の経緯と、日本医師会がその承認後に一般用医薬品としての販売の条件として「医療機関の受診を義務付けること」などを追加要請し、それが受け入れられたことを例に挙げ、「副作用の心配がないクスリでも街の薬局には絶対に売らせない。我がまま強欲な利権団体」と日本医師会を批判しています。もしこの事実が本当であり、医療機関の利益を害するかどうかで一般用医薬品として承認するかの判断が左右されているとすると、日本医師会の問題は別として、それに応じざるを得ない厚労省やそのようなことがまかり通る手続きにも問題がありそうです。

また、現在開催されている一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会の資料において第1類医薬品は「一般用医薬品としての使用経験が少ない等安全性上特に注意を要する成分を含むもの」と説明されています。この第1類医薬品を代表的するものにH2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)があります。H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)の最初の医薬品であるシメチジンは、1975年に開発されており、世界各国でもっとも多く用いられている医薬品として現在までにデータもたくさん蓄積されていますので、いまでもなぜ第1類医薬品に分類されているのか疑問が残ります。

危険だ危険だとする一見もっともな意見の背景に利権争いが隠れていないか、真実はどこにあるのかを改めて確認する必要があるのかもしれません。

関係者間の利益の調整の観点から第2類医薬品だけネット販売を解禁するといった判断をするのではなく、国民の健康のためにはどのように一般用医薬品をコントロールすべきなのかといった観点から科学的根拠に基づいて判断をしていく必要があります。

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