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熟論1【5】生活保護の未来

松原:【図20】少し話題が違うようでいて、これはつながると思うのですが、国民年金保険料の納付率です。だんだん落ちています。これは、法律上はもちろん国民の義務になっているのですが、しかし現実には払わないでいる人の数が増えていると、こういうことです。25歳~29歳に関しては45%くらいの感じです。全体でいきましても6割を切ると、こういうような状態です。なんでこれが今日の議論にかかわってくるかというと、やはりまじめに国民年金を払っていて、国民年金を受け取る時には、それは普通の所得と同じように生活保護の基準からは除外される、マイナスになるので、逆にいうと、年金をもらえなくても生活保護をもらってしまえばいいという、そういう要するに何十年先まで考えてそれをしているかどうかは別ですけれど、でもそこで一種の逃げ、モラルハザード的な状況になっているのは間違いありません。

資料:国民年金保険料の納付率の推移

片山:ええ、なっていますね。

松原:それからすでにお話ししたように、生活保護の受給世帯の中で高齢者の比率が増えつつあって高齢化が進む、そしてその進んだ高齢者の中で、年金をもらえない方が増えていく可能性が高い時に、やはりいまの生活保護の財政的な深刻な問題がもっとでてくる可能性があると。このあたりのことをどう考えるかを、では長妻さんから。

長妻:これは、非常にその通りなのです。これは深刻な問題で、しかもこれをつぶさに見るとですね、実は国民年金というのは自営業の年金で始まったのです。低額の保険料なのですが、実はこれいま20%しか自営業の方いなくなってしまったのですね。他の方はいま非正規雇用とか無職の方。調べてみると、国民年金に入っている一号被保険者の方を見ると、600万人近くの方が会社で働いているのに国民年金なのですよ。厚生年金に入れない。その分類をすると、100万人以上は学生のアルバイトもいるという統計もあるのですけれども、数百万人の方がですね、会社で働いているのに事業主負担が半額出る厚生年金に入れてもらえなくて企業健保にも入れなくて国保(国民健康保険)に入っていると。こういう方々の未納率が高いのです。本当の自営業の方の未納率は実は低いので、そういう方々が老後本当に低年金・無年金になって生活保護になるということの予想がいまからもう火を見るより明らかなので、やはり年金の一元化とか最低保障年金ということで、いま三党協議で国民会議でも議論をしてくださいということでいま働きかけをしているので、ここの視点というのはつまり非正規雇用問題は、先進国の中でも日本が特異でして、数百万人の人が会社で働いているのに、被用者、サラリーマンの年金健保に入れないと、先進国では見られないことなので、ここも大変大きな……。

松原:そうですね。では片山さんどうでしょう?

片山:いやそれはまさに先ほどの平成7年の時の日経連(日本経営団体連盟)、いまで言うと経団連(経済団体連合会)ですね、合併して経団連(経済団体連合会)になったところがつくった日本型ワーキングシェアの時に考えておくべきだったことを、ずっと、政府もそ うですけれど労働者も使用者もめぐってきた。そのツケですよ。

松原:これは深刻ですね。

片山:だから私は、長妻さんに申しあげたいのは、長妻さんはその労働界の出身ではないけれど民主党の大臣までやられて、この話はずっと保守系と、右と左といったら極端ですけれど、どうしても合わない部分だったのが連合(日本労働組合総連合会)に支えられた政権ができたのだから、一回みなさん与党をしたのですから、この問題も税と社会保障の一体改革の時にこう、もっと議論を恐れずにやればよかったですし、これはわれわれの世代でなんとか解決しないとだめです、長妻さん。

松原:そうですね、ではそのあたり、解決しなければいけないという方向性は、両者ぴったり一致したような気がします。【図1】それでもう一度この憲法25条に戻ると、第2項ですね、国はすべての生活部面について、これはあの生活保護だけではないわけですね、社会福祉、社会保障、公衆衛生も入っています、に努めなければならないということで、要するに健康で文化的な最低限の生活というのは、生活保護だけに依存している話ではないはずで、実は年金を払わないのがこちらにかぶさってきますし、それからだいぶ連動ができてきたのは、長妻さんが紹介したように最低賃金は生活保護と連携しなさいよと、こういう話になってきました。当然年金の問題は今日お二人が一致したように生活保護との関係で議論しなければいけない問題でもあって、そのあたりのところでお二人からやや広く、要するに健康で文化的な最低限度の生活という時に、生活保護もあるし最低賃金もあるし、それから母子家庭・父子家庭に対してどうするかとか、それからDVからどうやって守るかみたいないろいろな問題がかかわってくると思うので、まとめとしてひとことずつとはいいませんので、二言でもいいので総合的な問題についてどう考えるかをお話しいただいて、今日の議論を終わりにしたいのですが、どちらからいきますか? ハブからいくか、マングース……。

資料:憲法第25条

一同:(笑)

片山:大臣経験者から。

松原:大臣経験者から。政務官と大臣では、大臣の勝ちですね。

片山:勝ち。はい。

長妻:これ先ほど、片山さんは非正規雇用の問題をおっしゃいました。やはり年金の一元化というのが非常に重要なのでこれが結局、生活保護の問題にも続いていくのですね。その国保(国民健康保険)に追いやられない形。ですから、これをぜひ自民党は、これ片山さんはやる思いがあると思うのですが、自民党自体はいまの年金制度・高齢者医療制度のままでいくといま言って交渉がとん挫しているのですがこれはもう前に進めたい、というのと、もうひとつですね、いまの観点でいえば、ここでは議論にでなかった非常に大きい問題もあるのです。つまり、生活保護の受給額の基準額というのは地方税の非課税ラインと連動しているのです、非課税ライン。あるいは、調べますと30以上ある低所得者対策にも連動しているのです。つまり、生活保護を受けていない方々の低所得者対策というのが30数個、国の制度だけでもそれだけあるんですね、その時に、低所得者の定義をどうやって決めるかと、これは勝手に決めるわけにはいかないので、生活保護の水準をひとつの基準にして決めているのですね。生活保護の水準が今年8月にガクッと、まあデフレということで下がりますが。

松原:ガクッと言っていいかどうか、分からないですけれど。

長妻:いや、戦後最大の下げですから、戦後最大ですから、ですからそれが下がる時に、インフレになるにもかかわらず下がるというのも解せないのですが、その時に注意しないといけないのは、その時に生活保護受給者だけではないのですよ、影響は。それ以外の低所得者の方も、低所得者の水準、定義が下がりますから、いままで低所得者だと言われていて、低所得者の対策で恩恵を受けていた方があなたは突然低所得者ではありませんと言われてそこから外れると。就学支援などはですね、非常に多くの方がクラスでいえば非常に多く受けている地域もあるわけで、そういう30いくつの低所得者対策、住民税の非課税ラインにですね、住民税も払わなければいけなくなる方も出てくるということで、非常に大きな影響があるというのも慎重に議論しなければいけないと思います。

松原:はい、では片山さん。

片山:まず、ほかのものもリンクをしたらもっと厳しくなるというご指摘はこの国会で受けまして、全部その理論は、リンクは断ち切ると。おそらくその非課税限度のことも含めて生活保護の引き下げの問題は生活保護だけにとどめますので、そこは誤解のないようにしていただきたいと思います。フランスで生活していた時の経験をひとつ申しあげたいのですが、非常に厚い生活保護制度を持っている国なのですが、なぜだかホームレスが街にあふれるのですね。どのようなことをやってもネットから漏れる人っているのですよ。
当時フランスにもマイナンバーはなかったけれども、いまはもっと把握していますが、そういう方のためにいわゆる教護施設レストランみたいなものを日本でいうビートたけしさんにあたるような有名なコリューシュというコメディアンの方が提唱して、それがい まフランスでは公的にも一部負担をしたうえに、そこにみんなが善意で寄付するのです。東日本大震災のように。寄付したらぜんぶ税額控除ということで、それがすごい額になって毎冬1日何万食とそれで食べていけるのですよ。そういうところがもうね、たとえば生活保護審査条件ではなくて、みんな困った人は人道的な面で来てもらって、それに対してチャリティをわれわれがすると、チャリティをした部分については税額を引くと、こういうところまで日本の社会はもういっていると思うのですね。
この制度をつくったうえで、生活保護は働ける人たちについてはまあドイツではないけれどもある程度職業訓練ときちんとセットして、すぐに職業のほうに移行できるような形に移していく、それが健全な制度でそのうえでは母親が働かない方がいいわと思ってパチンコしていて、でもお金が出るという社会で20何万円の手取りがあってその子どもが働くようになりますかね? 私はならないと思います。ですからその連鎖を断ち切るためにそういう方を働いていただけるようにする、雇っていただいたら大幅にその企業は優遇される、そちらの方に持っていくのが自民党の社会保障の考え方で、貧困は連鎖されない、お母さんもお父さんも頑張って働けるようになったら、自分もそうしようというふうになって子どもたちには小学校3年から公立で英語が話せるようにしようと、そちらに変えたいと思います。

長妻:これ、いま重要なことをおっしゃったのですが、片山さんはいま総務省の政務官でもあられるので、これは少し総務省の見解と違うのですね。総務省の見解は、地方税の非課税ライン、住民税の非課税ラインというのは生活保護と直接ではないけれども連動していると、そういうことをおっしゃられているので。これ、絶対に連動しないということではないわけですよ。ですからそこを正確に言わないと……。

片山:長妻先生、そこは分かっておっしゃっているけれども、後年度課税だからまだ決められないから、われわれは言っているだけで。

長妻:でも連動しないっていう。

片山:そこがなんだか少し引っかけ的だなという。

松原:はい、ありがとうございました。

長妻:連動しないと言い切るというのが誤解を与えるので、それ、あの少し申しあげておきます。

片山:連動しないことが分かるのは来年だという意味ですね、はい。

松原:それで、少し経済学者っぽいことを最後言わせてもらうと、たとえば負の所得税という考え方があるのですね。要するに、一定の所得以上は所得税を段階的に払ってもらうと、でも一定の所得以下の人はマイナスで、逆に所得税をマイナスでもらえると、そうすると継ぎ目なしになるわけですよ。たとえばそういう議論も財政学の中では出てきています。それからお二人の中で共通してきたのが、この用語自体は民主党っぽいのですが、新しい公共という考え方で、要するに助け合えるところは助け合っていくとか、それから片山さんがおっしゃった最後の困った人たちを救う場はみんなでお金を出し合ってその分は税金から引いてあげればいいではないかとか、そうすると新しい公共的な、要するにみんなで支えあう、自民党的に言うとなんでしょう? 共助? 公助・共助みたいな、そういうこともあって。

長妻:かなり寄付税制を拡充しましたから。

松原:そういうことですよね、民主党はだいぶそこは、寄付税制は取り組みましたから。

片山:でも規模が違うのですよね、フランスのコリューシュという方は。

松原:そうですよね、こういう生活保護の問題はやはり年金の問題が押し寄せてくるし、それから全部救えばいいかというと財政的な問題があるし、それから都市の間でここまで差があると、やはりその申請のしやすさとかそういうところでもなにか調整が必要な面があるかも知れなくて。

片山:それから先生、今日は触れられなかったけれども、一番実は党内でも踏み切れないけれど、ずっとおかしいという議論が多いのは、外国人への生活保護が法律根拠ではなくて通達1本でずっととくに日韓基本条約でもそのまま暫定、暫定できていること。

松原:そうですね。

片山:それが最近は中国からの生活保護を目的とした移住、いわゆる西ドイツ、東ドイツで起きたような、隣の国の生活保護レベルが高くて自分たちの国にはない場合の保護の付け回し、これはなんとかしなければいけないと思う。

松原:はい、生活保護の法律は衆議院が通って、今参議院がたぶん間違いなく通れば制度が変わりますけれども、ではそれですべて解決するかといえば全然そうじゃないですね、やっと一歩ですね。

片山:しない……はい。

松原:で、そのことがただ単に生活保護法だけの問題だけではなくて、年金から最低賃金から税制もそうですね、も含めて大きな問題であることが今日確認されて、答えが出たというよりはむしろ将来に向けての大きな課題を3人で確認しあったみたいな形だと思います。

長妻:最後に1点だけいいですか?

松原:はい、どうぞ。

長妻:これ、ネットですよね。ネットで中継されているので、参議院選挙でネットが解禁されるので、私このテーマでも非常に期待があるのは、やはり日本の国というのは、われわれ問題意識を持っているのは、票と金を持っている団体には非常に手厚く予算がつくというところがあるのですよ。そういう意味では、非正規雇用の方とか、子育て中のお母さんとか、障がい者の方とか、生活保護受給者とか、本当にまじめに受給している方なのですが、そういうところの声というのはなかなか政治の場に届きにくいので、やはりネットというのが、いままでずっと政治を動かしてきた人たちではない人の声も本当にわれわれも真摯に入れてですね、取り組む土壌になるのではないかと期待しております。

松原:ただその受け皿がほんとにあるかどうかというのは、僕は疑問ですけれどね。そういう人たちが、ここに入れたらなんとかしてもらえる。まあ、そういう意味を含めてネットを通じて議論していこうというものの、第一歩がこのYahoo! JAPANがやった「熟論 日本の課題」ですね。

片山:はい、このテーマは鋭いと思います。というのは日本人の、ほとんどはまじめに働いて頑張ろうと思っていて、いま、正直者がばかを見ているのではないかという疑念が実はサイレントマジョリティには一番多いからです。

松原:ええ、そうですね。で、そういう今日はその熟論の第1回でした。たぶん数カ月先になるようにも聞いていますが、次もまたこういう議題でしっかりと議論をすることがまた選挙につながりますし、次のですね。そういうようなことを期待して、これで終わりにしたいと思います。長い時間お二人、どうもありがとうございました。

片山・長妻:ありがとうございました。

松原:これで終わりにいたします。

片山:ありがとうございました。