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熟論1【4】国と自治体の役割

松原:今日のもうひとつの話題に入りたいのですが、生活保護の制度を考えていく時に、いいのか悪いのかとかマクロで先ほど80万人、90万人弱が一気に200万人を超えたということを話しました。しかし想像以上に……。

片山:絶する格差があるのですよね。地域格差が。

松原:【図16】都道府県ごとあるいは自治体ごとにものすごい格差があります。少しそのデータを紹介させてください。最初に、住民1人当たりの生活保護歳出が多い都市と少ない都市これを比べてみました。台東区、年ですからこれが12万7000円ですか。それに対して富山県南砺市だと、2180円ですね、こういう数字になっています。ものすごい差になっています。それからそれぞれの台東区と南砺市を比べますと、その自治体、台東区全体の歳出の中で生活保護費がどのくらいを占めるかといいますと、全体で24.7%。

資料:生活保護負担における自治体間格差

片山:4分の1ですね。

松原:4分の1が生活保護費でとられている。

片山:これ山谷があるのですよ、台東区って。

松原:で、大阪市も19.3%、大きな市ですので、奄美市は15.5%。で、それに対して少ない方は何分の1になるのでしょう、これ、2桁違う。0.3%、これが南砺市です。同じ生活保護の制度のもとでここまで大きな差がついているとはいったいどういうことなのだろうかということも議論しなければいけません。
【図15】もうひとつデータを出させてください。住民1人当たりの歳出を1800の自治体ですね、それを全部グラフにしたもので、いま例に出した台東区、大阪市、奄美市あたりが一番左側の非常に高い数字になります。それに対して一番低い方がこのこちら側になっていまして、この格差っていったいなんだろうと。こんなに生活に困っている人に差があるのかとか、このあたりのところをどう考えるのかということを、これは長妻さんから聞いてみましょう。どうでしょう?

資料:全国都市別 住民ひとりあたりの生活保護歳出

長妻:これいろいろな原因があると思うのですね。ひとつはやはり生活保護の方が住んでいるところをどんどん移動するということがない場合は、格差が激しい地域、いわゆる貧困地域と言われている地域を抱えている自治体という問題もあると思います。そしてもうひとつ言われているのが引き寄せ効果というのがかつて言われて、つまり生活保護受給が甘いところに人が集まると。ただいまはそういうことはないと思いますけれども基本的にはやはり格差が激しい地域が集中しているということがひとつあるのではないかと思います。

松原:ただね、これやはり統計的にしっかり見なければいけなくて、このグラフですね、1800の自治体を全部見ていった時にここまでの差があり、これ100倍くらいの差になっていますね、100倍近い差になっています。これはいまおっしゃったような理由だとそんなに格差がそれぞれの自治体の中でですよ、貧富の格差がそんなにあるわけがないので、やはりそれ以外の要因がないとこの説明がどうもつかないような気がするのですが。

片山:それはつきます。

松原:片山さん、どうでしょう。

片山:まず、台東区は、私は地元の地方議員さん区長さん含めてずいぶん議論をしまして、これは山谷といういわゆる建設関係の下請け労働者のそういうところがある、簡易宿泊街があるところで、いま簡易宿泊街は本当になくなってはいるのですけれど、その関係で公営住宅も多くて、生活保護をもらいに周辺からくる方もいますが、大阪の場合は西成ですね。十何人に1人が生活保護と言われている。ここもやはり昔は日雇い労働者の町で、かつて日雇い労働者マンションやアパートだったところがそのまま全戸、65戸全戸きれいに生活保護マンションになっていました。だから私、橋下市長に言ったのです。あなた府知事時代、市長時代に、日雇いが必要なような事業をあそこまで切ったからそうなったのだと。悪いけれどそういうお仕事なら誇りを持ってきちんとできるけれども、そういうお仕事ができない方というのが世の中に、建設労働者が日本の人口でどのくらい、かなりのポジションを占めているのが分かるでしょうと。われわれは現実の世界に生きているのだから、そういうことをやった結果としてこうなっているのだと。だったら誇りを持って働いての賃金の方がよほど健全な社会でしょうと言ったら、まあそれについては反論なかったのですけれども、まさにそういうところが多いです。そしていま、私は国と地方とか地域、地方分権の仕事をしているわけですけれども、いま地方自治体が4分の1、この生活保護の負担をしておりますので自分たちでなんとかしようと動き出して相当のことをやりだしているのですが、兵庫県の小野市という市が条例をつくって、生活保護をギャンブルに悪用・乱用しているというふうに思う人がいたら通報してくださいと。ただその通報に義務はありませんよという条例をつくって、本当に共産党の人が1人反対した以外全議員賛成して通ってしまって、ごく普通の市長さんですけれどね、市民にアンケートしてもそれはいいのではないのと。せっかくみんなの税金で支えてあげてもそれをギャンブルに全部使ってしまうのはおかしいからねと。こういう意味で社会のお互いがお互いに知っているような市町村は、はっきり言って非常に少ないです。その市町村に仕事があろうがなかろうが少ないです。

松原:いまの事例は知らなかったのですが、通報したあとはどうなるのですか?

片山:通報して本当にそうかどうかは生活保護ワーカーが。

松原:いまの法律ではそれ、止められないですよね?

片山:いえ、少なくとも生活保護ワーカーが指導に行けるのですよ。

松原:指導ね。

片山:いまは1人で100人見ているから、指導をどれだけしたらいいかが分からないから、していないですよ。

松原:要するに、片山さんも長妻さんもこの大きなところについてのお話でした。逆にここですね、少なすぎない? 本来申請しなければいけない人たちが申請できないという状況もここにあるのかなという気もするのですけれどその点、長妻さんどうでしょう?

片山:ここで餓死した人、誰もいないでしょう……。

長妻:先ほど見ていただいた受給額などは都市部なのですね。で、都市部と地方で受給額がかなり違うのです。住んでいる場所によって生活保護の受給額が違いますので、都市部ほど生活保護の絶対額ですから、仮にその受給率が同じであっても大きく出るわけですね、やはり日本の生活保護は、これは学者のみなさんも含めて専門家が言っているのは非常にほかの国に比べて捕捉率が低いと。つまり、受けるべき人が受けていない率が低いと、あんまり受けていないと。入りにくく出にくいのが日本の生活保護で、ドイツなんかは日本より人口当たりですね、3倍とか4倍、生活扶助の制度を受けていて、なぜかというと若い方中心なのですね。ですから、すぐそういうのに入れて、それで就職でそこから出ていくと。非常に入っている期間が短いと。年金は充実しているので生活保護ではなくて年金でできるということで、ですからいろいろ課題があります。

松原:あの、入りにくいというのが、でも逆にこういうところは入りやすかったり。

長妻:先進国に比べれば人口当たりは低い。

片山:つい最近、私、その栃南の農協で講演したのですよ。チューリップとか玉ねぎとか作っているのどかなところで、農業者も多くて。平均所得は高くないけれども、そこでつましく生きようとしたら、リビングコストは高いところではなくて、だけどみんなこの先チューリップが高く売れるとも思えないしお米もあれだしと。全然豊かではないのですけれどなにが違うかというと社会のネットが強い。絆が。だからみんな支えあってしまうからわれわれは社会保障の考え方として自助・共助・公助といっていて、自助・共助が強いのですよ。ですから共助のところは家族とご近所、おそらくそれでほとんど、もしも仕事がなくてもそこで止まっちゃうと思います。

松原:あとはそのたぶん人目とかね、そういう社会の中でのプレッシャーがあって本当は入りたいのに入れないというような状況とか、逆に大都市部で生活保護をもらっていることがなんの引け目にもならないみたいな中で入りやすかったりという差もないと、ここまで大きな差が出ないような気もするのですけれど。

片山:たぶんいまの松原先生のおっしゃり方を聞いていると、では都会に出ていって家族を捨てて生活保護のお世話になる方がいいのかといったら私はその世界をつくってしまったら日本は財政的に持たないと思いますよ。

松原:いや、客観的なここの判断で、やはり生活保護の時に都市部に比べて郡部が低いのは、本当に貧しいかどうかというのと、それに加えて近所の目とか周りの目があるので、それは片山さんがおっしゃったようなのが一番の理想で、そこで助け合えば一番なのですけれど、でもその近所の目みたいなものがあってなかなか申請ができないという話も聞くので。

片山:では、申請できない人はどのように普通に生活していると思います? 貧困者が町にウロウロしているような町ではないですよ、ここ。ではなぜそうやって生きていられると思います? だから近所が面倒見きれてしまうのですよ。

松原:まあその、逆にこの先ほどの片山さんの話からするとね。

片山:だって食べ物あるし。

松原:生活保護の水準が高すぎるのだとしたら、実はそれを受けなくても生活できてしまうんだという話かもしれないので、ただここの問題はひとつひとつの個別のケースをしっかり見ていかなければいけないのですけれど、ただやはりこれ客観的な数字としてここまで差が出ることについてもう少ししっかりとした分析が必要なのではないかということについて。

片山:はい、その通りです。

松原:長妻さんもどうですか?

長妻:そうですね、地方はおっしゃることもあるのと同時に片山さんがおっしゃったように、人とのつながり、ネットワークがある絆があるところというのは比較的、社会保障にただちに世話にならないというか、セーフティネットがそこに張りめぐらされているということもあるのかもしれません。