Yahoo! JAPAN 政策企画

熟論1【2】悪用される生活保護

松原:【図13】生活保護受給者の増えた原因が、すべてが不正受給だとかモラルの問題だとは言いませんけれども、でもいくつか問題になったことがありますので、そのあたりの紹介に入っていきたいのですが、たとえば、複数の自治体に生活保護の申請をし重複して受給したケース、それから無収入や病気などを偽って受給したケースとか、あるいは受給者を安アパートに住まわせ生活保護費を搾取する貧困ビジネス、こういうような不正受給の事例があったということです。
【図14】それから少し続けてお話しをさせてください。今度は完全に不正だとは言い切れなくても、要するに扶養できる人がいるのではないかという、こういう問題です。高額所得者である著名人の母親が長い期間にわたり生活保護を受給してきた、それから結婚して子どもどもができたら偽装離婚をし、母親と子どもは母子家庭として、母子家庭になりますと受給費が非常に高くなります、それで生活保護費を受給していた、こういうようなケースがあって、このあたりの問題をどう考えるかということと、それからもうひとつはこの議論の先に今回のまさに最初に片山さんがおっしゃいました、自民党も民主党も一緒にその生活保護法の改正について合意して少なくとも現段階では衆議院を通過して、ほぼ間違いなく参議院で通るという状況ですから、こういう事例が起きたということと、そのことが新しい法律にどのように反映されたかということをふまえて、このあたりの議論に入っていきたいと思いますが、このあたりずっと問題にしてきた片山さんからいきましょうか。

資料:不正受給の事例
資料:モラルハザードの事例

片山:そうですね、まず今回一番、いろいろなご意見も含めて現場のケースワーカーや自治体も含めて、調査権限がもっと強く欲しいというご意見が多かったのです。ですから今回のもうじき通りそうな法律では、不正不適正受給対策の強化で福祉事務所の調査権限を拡大しました。今までは資産収入に限定されていた調査事項に就労や求職活動をしているのか、健康状態はきちんと保とうとしているのか、それから扶養の状況ですね、あの芸能人だけではなくて市役所に勤めていた人や銀行の支店長まで見つかるなど、大変なことだったのです。
よく扶養で誤解されてしまうのが、8万円出せなくても2万円出してくれればそれだけで生活保護予算は減るのですよ。オールオアナッシングではなくて、出せるだけと思う部分を少し日本中で増やしてくれたら予算は数十億か、ひょっとしたら数百億減るというそのような世界があるのですけれど。それからこれマイナンバーができればもっとスッと楽になるのですが、福祉事務所が官公庁に情報提供をしたら、それは回答しなければいけない、たとえば自動車を持っているかとか、これもよくあるのです。処分しなければならない自動車を持っているから、市町村民税や児童手当とか失業給付とか国民年金とか、本当に収入がなかったのかとか、これマイナンバーが入れば全部横にいきますし、きちんと正当に人を雇っている事務所で働いている人の収入はマイナンバーがきちんと施行されればそれは把握可能になりますが、自営業やそのようなところに届け出をしないような形で商売する形の資産とあるいは収入と、資産すべてを発掘できないけれど、とにかく調査権限は相当拡大したというのと、一罰百戒で、不正受給で罰則が3年以下の懲役か30万円以下の罰金でした。
そうしたら1千万円もらっていた人はもらい得になるので、せめてほかの詐欺的な行為と同じ100万円まで上げたうえに、税金であと、何年間か翻って調査を受けますよね、所得税で。で、見解の相違で違っていたら加算金がつく、金利みたいに、それがこの制度にはなかったのです。だから例の芸能人も加算金を全然払っていないのです。
ですからそれは、100分の40を乗じた金額を上限とする徴収金に加算金を上げると。それから今の保護費と相殺することもできるようにするというようなこと、それから福祉事務所がDVなどの問題が起きないと認めた場合は必要な範囲で扶養義務者の報告義務を課すと。この辺でかなりよくなってきたのと……。

松原:あの調査先への回答義務、それから不正受給に関する調査権、それから返還金、このあたりのところが今お話しいただいたところで、この改正が衆議院を通過した状態だと、こういうことですね。

片山:そうですね。

松原:長妻さん、ここで少し議論を切って、とりあえず、この不正受給とかあるいはモラルの問題もでました。そのあたりのところをふまえて罰則強化とかこのような対策がとられたことに関して民主党としては最終的に賛成していますね?

長妻:賛成というかこの法律自体を、政権交代直前に民主党がつくって、不正をなくすために罰則を含めて強化をしていくと。

片山:つくってないですよね。

長妻:その骨格でいま法律がでているのですよね。われわれが政権の時にたとえば不正受給についてはたとえば向精神薬を横流ししているとか、これの適正受診のレセプトチェックとか、あるいは金融機関の本店に対して照会すると全金融機関に照会できるとか、あとは就労先の調査権限ですね、あるいは刑事告発を強化すると、不正受給をしていても、ですね。数十人しか刑事告発をされていないという問題があったので、このようなことはわれわれきちっとやるということなのですよ。
あるいは指定医療機関に対する指導権限の強化とか。ただこれ注意しなければいけないのは、いまおっしゃっていただいた不正の例をだしていただきましたが、ふたつに分ける必要があると思うのですね。
つまりひとつは受給者が食い物になっていると。食い物になって貧困ビジネスのいろいろな人たちの食い物になってピンハネされて受給されている、あるいはお医者さん、悪徳なお医者さんに、医療費は自己負担がないからといってですね、すごい治療を受けるようなことがなされているということと、おっしゃるように受給者自身が偽装離婚をするとか、そのようなことはありますのでこの不正は厳につつしむということと今回の法律はセットで支援の方ですね、自立支援の方もわれわれの時に考えたものを入れてですね、それで今回まだ成立はしていませんが参議院にそれがうつっているということです。

松原:ここ、少し本題からそれるかもしれませんが、政権交代は大事な議論なので。この法律、骨格は民主党がつくったの? それとも?

片山:いや、違います。私たち自民党時代にプロジェクトチームで案を出して、そのうち3分の2くらいはその通りにやっていただいておりますが、やりきれなかったのがやはり医療費に自己負担を入れるべきかどうかということと、それから医療費ですね。なぜ医療費かというと非常に多いのです。金額的に。

松原:医療費の問題、そうですね、その議論はもう一回、あとでします。このあたりのところで、長妻さん、どっちがつくったのですか? これ、この法律の骨格は。改正案の。

片山:民主党政権時代に法案はなかったではないですか。

長妻:法律はですね、これ片山さんご存じでおっしゃっているのだと思いますが、ふたつあるのですね。生活保護の方々の自立を促進するひとつのかたまりの法律群と生活保護そのものの不正受給などを調査するような、そのような法律とふたつあるのですね。で、われわれは自立を支援する方、これを中心に生活支援戦略ということでつくって、そしてもうひとつが不正受給、これをなくすための指定医療機関に対する権限、指導権限の強化とか、そういうものも盛り込んだものがあるということで、これ全部当然民主党が全部つくったわけではありませんけれども、われわれも自立支援のところについてかなり注力をしているということ。なので、それが正確じゃないかなと。

松原:【図6】もう一度先ほどのグラフを出します。要するに、増えてきた。非常に急激な増えかたですね、その中に最初長妻さんは、コンビニエンスストアで3食弁当を買うのはぜいたくじゃないのだと、そういうケースがあるのはもちろんですね。だけど今回、長妻さん自身が、今回民主党自身が賛成しているように、やはり調査先への回答義務とかその他は、やはり不正があるだろうという認識はあるわけですね?

資料:生活保護受給者の推移

長妻:不正はダメです。

松原:認識もあるわけですね?

長妻:もちろん。

松原:ですからこういうような法律改正となったわけでこういうのはパッとすぐ数字で聞くのは無理な話ですけれどもやはりこの88万人が215万人に増えたことに関してそういうところの要因も結構大きいと、やはりそういうような不正が出てきたことの背景があるんだというような認識なのか、そうではないのかということを少しお二人に聞いてみたいのですが、少し片山さんからいきましょうか。

片山:まず先ほどの反論として、私たちはリーマンショック以降に派遣村に最初にわれわれが与党だった時に入っていって、緊急避難でほかに何の制度もないので働ける世代にも生活保護はきちんと出した方がいいよというような通達は自民党時代にわれわれのイニシアチブで出しました。
ただその時にこれは大変なモラルハザードになるので早く第2のセーフティネットをつくろうとして、つくりかけた作業をしたところで選挙に負けて私はバッジがなくなりました。
そのあとに求職者支援制度の基金の予算だけは私たちの置き土産で取っておきまして、7千億円の就職支援基金がありまして、これは民主党になってから使いましたが、7割が就職してそのあとに第2のセーフティネットを法制化しようとして求職者支援制度というのを民主党政権時代につくってこれはわれわれ野党だったので大きな改正をする力がなくて従いましたけれど、それがあまりうまくいかないので、今度はまたもう1個セーフティネットをつくってしまったのです。ですから大変申し訳ないけれどそこのところについては長妻さんたちの政権は責任を感じてほしいと思います。

松原:はい、責任を感じて、と言われました。

長妻:常に責任は感じていますね。生活保護のみなさんが、本来は社会保障がもう少しきちんと機能していればですね、そういうところ、あるいは第2のセーフティネット、つまり雇用保険が切れたあと、生活保護、その間のセーフティネットがないとずっと言われてきたわけで、いま片山さんがおっしゃったように求職者支援という制度をわれわれは法律で制定しましたし、あとは住宅手当、これはいきなり生活保護しかなかったのですが、これは家賃だけを税で補助する。
そして就職を、何しろホームレスだとなかなか面接に行って就職できないので家賃の補助ということを充実すると。第2のセーフティネットを拡充するというようなことをしております。
ですから労働の規制緩和とか格差がいまも拡大しているので、やはりそこを、格差を是正するということは社会の安定化を呼んでですね、決して経済成長のお荷物ではなくて、基盤をむしろつくるのだという、そういう発想を転換してやはり取り組まないといけないと思います。

松原:これだけ急激に上がったことをやはり受け止めて制度をどういじるかと、こういうところでその方向性が多少違っても、少なくとも今回のこの法律では両党が……。

片山:現実認識とソリューションについては、5つの政党は自・公・民・みん・維新はほぼ一応妥協できたのですね。

松原:そうですね。

カテゴリー「社会保障」の記事