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熟論2【3】第二院(参議院)を置くことの意義

別所:まず、まとまったご意見は後ほど詳しく各論点についてうかがうとして、二院制に関するいくつかの視点からご意見をうかがいたいと思います。

フランス革命期の理論的指導者 アベ・シェイエス※5ページ

まず、これは有名なフランス革命期の理論的指導者であるアベ・シェイエスの言葉ですけれども、「二院制は何の役に立つのか、それがもし第一院に一致するならば無用であり、もしそれに反対するならば有害である」というような有名な言葉があるわけですが、この言葉そのものについて水野さんはどのようにお考えでしょうか。

水野:アベ・シェイエスっていうのは、フランス革命の頃の革命期を生き抜いた理論家というかそういう人ですけれども、二百数十年前のその時にいみじくもその言葉で言い尽くしてあるように、2つ院があっても同じ採決行動をとるのだったら、これは同じことを二度繰り返すだけで、違う形になったら結局のところ政治は暗礁に乗り上げてしまうから有害だというような言い方をしたというのは、この二院制の問題点を端的にあらわした言葉だというふうに思っています。
まさにこういうようなことは現在にも通じることだと思っています。

別所:ありがとうございます。
では、二院制が必要だとおっしゃっている中川さんはいかがでしょうか。

中川:今のアベ・シェイエスの言葉ですけれども、実際には第二院が第一院に常に一致するという状況はあまり考えられないですね。
それから、常に反対をするという状況もまた考えられない。
ですから、こういった状況が長期にわたって常に続いていくということであれば、まさにアベ・シェイエスの言葉のように第二院が第一院に一致するなら無用だし、それに反対するなら有害だという批判も当然出てくると思います。
しかし、衆参がねじれていない状況であっても、第二院が常に第一院と一致するということは必ずしもそういう状況がずっと続くということはありえない。
たとえば日本の場合でも、衆議院で法案が審議されて可決された。
しかしその過程でいろいろ問題が浮かび上がってくる、あるいは法案の審議の過程を通じて国民の反対が強くなってくる、というような状況になりますと、今度は参議院では、たとえば非常に慎重な審議をして結果として審議未了、廃案という形で法が成立しない。
次の国会にいろいろ浮かび上がった問題点を修正するなり、国民の反対がどこにあるのか、もういっぺん見直しをして別の法案として再提出して成立する。
そういう形になるケースもあるわけです。
それから、衆参ねじれているから常に決められない政治になるというのも、これもまた事実はまったく違いまして、ねじれ下でも衆参でもって、あるいは全党一致で通る法案というのはたくさんあるわけですし、参議院がこのままじゃ通らないと思えば、法案の提出段階から各党で協議をして、通るような法案にして出してくる。
あるいは衆議院は通ったけれども参議院で修正をして、そしてまた衆議院にそれを戻す形で、常に第二院が反対をして法案が通らないと、こういう状態が続くことは現実にはないのですね。
昨年2012年8月の消費税増税を含む社会保障と税の一体改革、これはみんなの党とは合意に至っていないのですけど、三党合意という形でねじれ国会のもとでも非常に大きな改革の法が成立しているわけですから、このアベ・シェイエスの言葉は非常に一面的な見方で、また単純化された言葉で、二院制の本質をついているとは私はいえないと思います。

別所:なるほど、ありがとうございます。
今、ねじれがあったとしても、必ずしもねじれた状態のまますべての審議が進まなくなったりぶつかり合うわけではないというようなお話を中川さんからいただいたわけですけども、実際に多くの批判はねじれ国会というところに集中していたような気がします。
実際に、今回の夏の参議院選挙でねじれは解消したんですけど、その前のねじれていた状態で実際どのような状況であったのかということと、ねじれの問題についてどのようにお考えなのか。
今度は水野さんからこの点についてお話をうかがえればと思います。

水野:ねじれ国会というときに、民主党政権のときに参議院が野党多数というねじれ国会もあれば、自民党安倍政権になってから参議院に野党が多数という両方のねじれがあったわけです。
その両方とも私たちは野党の立場でしたから、参議院では多数派で政権に対して対決するという立場の方にいたわけなのですけれども。
われわれは一院制を唱えていますけれども、現実に二院ある以上、われわれが参議院の多数派を占めている時にはなるべくそれを活用して政府の法案などに対しては抵抗する。
当然そういうスタンスをとっていたわけです。
ただ、現実問題としてさっき中川議員がおっしゃったように、ねじれているからといって何でもかんでも暗礁に乗り上げるのではなくて、政党間で協議をして合意を得たものは前に進むことがある。
それはその通りです。
今おっしゃったように、消費税の増税はねじれていた時の野田内閣の時に民主、自民、公明、三党合意で消費税増税法が成立したわけですよね。
私たちみんなの党は反対しましたけれども。
確かにそういう意味ではそういうことはあります。
ただ、それは非常に政治のプロセスのなかで不透明な部分が出てきちゃうというのがあるわけですね。
つまり、両院がねじれている。
しかし、大政党同士が協議をして、民主、自民、公明で話し合えば、確かに衆議院でも参議院でも両院で多数を占めますから進むことはあります。
ただ、そのプロセスは国民には見えにくいのです。
民自公の協議、あの時もちょうど野田総理と谷垣総裁でしたけれども、近いうちに解散する、その近いとはなんだ、とかですね。
でもその協議というのは、国民の前でやっているわけではない。
いわば、密室とはいいませんけれども国会の論戦というよりは裏側でやっているという形になったりするとわかりにくい。
それよりは、前に進むことは絶対ないとはいわないけれど、そこらへんがビハインド・ザ・カーテンでやっているよりも、私たちは一院にして、そうすればそういうことはせずに基本的に多数党の政策というのは進んでいくわけですから、それに対してチェックをすると。
それは選挙という形でチェックをして、国民はそれに対してノーであれば選挙で当然、政権が代わればいいというような仕組みの方が国民にわかりやすいのではないか。
基本的にはそう思っています。

別所:国民にねじれの中での折衝がなかなか見えにくいというお話があって、むしろそのためには見えやすくしたいというお話だったと思うのですけれども、今回のようにねじれが解消した後で、一方ではどんどん進んでいくのはいいけれども、もし1つの多数党だけの一院になった場合、結局、二院制を敷いていてもカーボンコピーになってしまうのではないか。
確かに透明性は高まるかもしれないけど、議論の深み、深まりは、一方で期待できるのかどうかということも課題として上がってくるというふうに思っているのですけども。
二院を敷いていても、多数党が同じだったらカーボンコピーになってしまうのではないかというような考え方について、中川さんはどのようにお考えですか。

中川:カーボンコピーっていうのは、結局、第一院で決まった場合に第二院も同じ党議拘束をかけて第二院でも必ず成立させるのだと。
その国会運営も非常に強引なやり方で進んでいくという場合には、カーボンコピーという批判が出る可能性があると思いますね。
実際にそういう批判も今まで長い自民党の政権下においては……。
衆参両方通る、場合によると強行採決といわれるような手段で、第一院で通ったものは第二院でも通す、そういう形になればカーボンコピーという批判も出てくると思いますけれども、さっき申しあげましたように、実際には第一院での審議の過程でいろいろ問題が起こってきたり、国民の反対が審議を通じて深まってきた場合には、第二院で党議拘束がかかっている以上、今度は与党側が反対にまわるというのはなかなか難しいのでしょうけど、結果として審議未了で廃案になるという形で法が成立しない。
それで審議を通じて出てきた問題をもう一度洗いざらいして、それに対応する修正案を用意して、また出直して次の国会に法案を提出するという形でより良い結果がでることもあるわけですね。
それは参議院、第二院が、第一院の足らざるところを補う。
あるいは熟議の府とか再考の府とか、再び考えるといわれている参議院の役割をしっかり果たせば、与党が衆参両方とも多数であっても決してカーボンコピーというふうにはならない。
第二院である参議院の存在意義が発揮できるような、そういう結果になることは当然あり得ると思うのですね。

別所:今、中川さんの方から、二院、衆参両院において与党が多数を占めていても、必ずしもカーボンコピーにはならないのではないかというお話があったのですけれども、その点について水野さんはどういうふうにお考えでしょうか。

水野:中川先生がおっしゃるように、参議院の議論というのは、専門的な知見から、衆議院の時に行われていなかったような視点からの議論があるのは事実だと思います。
たとえば衆議院は小選挙区選挙制度に対して、参議院は、たとえば比例区なんかはいろんな専門的知見を持っている人が通りやすいということもあったりするので、別の視点から議論をしてそのなかで再考していくということには一定の役割があると思います。
が、それは選挙制度の問題なのですね。
今は衆議院が小選挙区というような形で、比例もありますけどね、基本的には300小選挙区を中心にしているのに対して、参議院の方は比例区とかで業界団体とかそういうなかでのいろんな知見を持っている人たちもいますから、そういうことは再考しているとか多少あるのは事実なのですが、ただ、熟議、再考というのであれば、私は絶対二院じゃなきゃいけないというのではなくて、一院のなかでもっと審議時間を今の2倍とるとかですね。
一院のなかで選挙制度を小選挙区で選ぶ人もいるかもしれないけれども、私たち実は小選挙区の立場ではないですけれども、それに加えていろんな比例的なもしくは全国比例的な選挙制度も一院の中に導入すればできることであって。
多様な人材を供給源にするというのは、絶対二院じゃなきゃというふうには思っていませんし、一院のなかでの審議のやり方の工夫などで十分深い議論はできるのではないかなというふうに思っています。

別所:なるほど、ありがとうございます。
単純に一院、二院という議論の背景には、いろんな課題があるのだというふうに認識しました。
次の論点に移っていく前に、日本の状況だけではなくて、諸外国が一院制、二院制、どうなっているんだというところをちょっと比較をしてみたいと思います。

世界の二院制採用状況※8ページ

これが海外の状況です。
2010年時点で二院制の国家は75カ国にあります。
一院制の国家の数だけいうと112カ国と、実は世界のなかでの一院制の国は非常に多いというのが現状です。
ただ一方で、先進諸国がどうなっているのかというのをちょっと調べてみたのですけども、OECDの加盟国で見ますと二院制の方が多いと。
特に主要8カ国で見てみると、一応すべて二院制をとっているというような状況になっていて、世界全体の状況と経済的な主要先進国を比べてみるとだいぶ違っていて。
これだけの比較では何ともいえないと思うんですけど、ものすごく単純にいってしまうと二院制を敷いている方が経済的に成功しているというふうにも見えてしまうのですけど、この点については水野さん、どのようにお考えでしょうか。

水野:二院制を敷いているから主要国になったとか、経済的に成功した、というのとはちょっと違うというふうに思いますね。
要は、二院制を敷いている国はかなり歴史的経緯があるわけですね。
アメリカが一番典型なのでしょうけど、アメリカの場合はまさに合衆国で建国をした二百数十年前の時に、各州が「州は州である以上、平等なのだ」「どの州も同じだけの代表を出せるべきだ」という主張をしていて、小さい州の人は、「州は州である以上、同権だ」というふうに言って。
一方で大きい州の人は、「いやいや大きい州の方が人口は多いのだから代表者をたくさん出すのは当然でしょう」という主張をして、折衷案として結局、上院はどの州も2人ずつ、下院は人口比だからカリフォルニアみたいに人口の多いところは五十何人代表者を出す。
ハワイとかアラスカ、建国の頃はハワイ、アラスカは州じゃないですけれども、そういうところは2人とか人数が少ない。
そういう歴史的経緯があるわけですね。
英国はもちろん、貴族の上院と民衆の国民、庶民が選ぶ下院ですね。
だから歴史的経緯がある国々というのが、どちらかというと経済的な大国ですから、そういう国が、歴史的経緯があるから二院制をとっているところがある。
それに対して新興国はどちらかというと戦後になって独立したところが多いから、そういうところは一院制を導入している。
二院制を敷いているから経済的に成功して、一院制だから経済的に発展途上だというものではないと思いますが、ただ、日本の場合どうすべきというと、そういう意味でいうと戦前は歴史的経緯として意味があったのだと思います。
つまり、今の時代にふさわしいかどうかは別として、公侯伯子男の華族制があったわけですから、そういう意味で貴族院ということの意義があったのでしょうけど、戦後まさにそういう貴族制もなくなっている。
しかも、日本の場合、連邦国家でもないというなかで、あえて2つ、アメリカのような形で州は州である以上平等、というような形があれば話は別ですけど、そうじゃないなかで二院制をどうしても導入しなければいけない必然性がないのではないかなと。
そのほか、二院を導入しなければいけないという必然性はない、しかし一方で、一院制にした方がたとえば行政改革の観点からみたさまざまな無駄を省けるとかということを考えれば、私は一院制をタブーにすべきではないと思っています。

別所:なるほど、ありがとうございます。
ちょうど今、水野さんにお話しいただいたように、二院制を敷いている国は連邦国家だったり、いろいろなことを考えて二院制を敷いているというところだというふうに思うのですけれども、そのなかの大きな理由の1つに、それぞれの院の代表制が違っているというようなところを各国とも特徴にしているのかなと思っています。

参議員の選挙制度/効果※10ページ

こちらが今、日本の選挙制度になっているのですけれども、こういうふうにかなり衆議院と参議院で似たような感じに思える選挙制度になっているのですけど、この制度を前提にしてそれぞれの代表制というところで、違いとか独自性が発揮できるのでしょうか。
ということをちょっと中川さんにおうかがいしたいと思うのですけどもいかがでしょうか。

中川:今、水野さんが言われたように、二院制をとっている国というのはそれぞれの歴史的な経緯があるわけですね。
まさにおっしゃったように、主要国というのは歴史があって二院制をとっている国が多い。
ですからOECD加盟国ということでみますと、人口1,000万人以下の国だと73%、15カ国中11カ国が一院制なのですけれども、人口1,000万人超の国では逆に79%、19カ国中15カ国が二院制を採用しているということになっています。
それから経済との関係でいいますと、実質GDPが3,000億ドル以上の国では、二院制の国が79%というようなことになっていまして、一方で一院制を採用している国というのは、第二次世界大戦後に独立を果たしたような新興国であります。
ただ、この新興国でも1990年代以降、二院制に移行する国は増えているわけなのですね。
ですから、世界全体で言いますと、ちょっと私も調べてきましたが、1985年に二院制の採用国は割合でいうと29.6%なのですけれども、2010年には40.1%ということで増加傾向にあるわけなのです。
そういうことを考えますと、やっぱり世界では二院制を志向しているなという流れがあるのだろうと思うのですね。
今のお話ですけれども、日本の場合には自民党の長期政権下、55年体制のもとでは二院制でよかったという局面はあまりなくて、むしろ批判としてはカーボンコピーだというような批判が強かったと思うわけです。
ところがここにきて政権交代が起こって、しかも民意が非常に振れるということがわかって、国民のみなさまも自分たちが選挙で選んだ結果、そうなのですけれども、やっぱりあまりにも結果が振れるとちょっと怖いなという気持ちを持ってきたと思うのですね。
そういうなかではやっぱり二院があるということの安心感というものが出ているとは思いますね。

別所:わかりました。
現行の憲法を前提に日本は運営されていますので、そういう意味で言うと二院制ありきで国民もいろんなことを考えているのだというふうに思っていますけれども、今、中川先生もおっしゃったように、二院制に変わっている国もあれば、一方でやはり一院制を採用している国、切り替えている国もあったりして、多数は二院制なのですけれどもそれぞれの国が結構試行錯誤しながら議会のあり方を考えているように思います。
一院制の方が効率的だと水野さんの方はおっしゃっているのですけれども、水野さんの頭の中にもしモデルにできるような外国の例があればご紹介いただければと思うのですけれども。

水野:パッとどの国のモデルが理想的だというのは一概には言えないと思いますが、国によって二院制を導入している国もあれば、一院制を導入している国もあるというのは、まさに一長一短だからこそ、両方あり得るのだと思いますね。
ただ、現実に日本の実態のなかで考えれば、連邦国家でない日本の場合に、二院制じゃなきゃいけない必然性がないということと、中川先生がおっしゃられるような諸問題というのは確かによくわかるんですよ。
たとえば、熟議、再考しなければいけないというようなこととか、あまりにも小選挙区とかでドラスティックな勝ち負けが最近、衆議院選挙で続いていますから、そういう急激な変動を緩和するためには二院あった方が安心感を与える。
これは一理あると思うのですけれども。
一理あるけどそれは二院制じゃなきゃできないことではなくて、たとえばドラスティックな政権運営、政権が交代しすぎるということが続いていることは、衆議院の選挙制度というか衆議院、一院にしたとき、一院の選挙制度を小選挙区じゃなくて比例代表を軸にすれば、ドラスティックにはならないわけですから。
小選挙区だから300議席とっていた政党が、民主党が突然、50議席ぐらいになっちゃうとかですね。
百十何議席だった自民党が突然300議席になるとかですね。
こういうようなことは、小選挙区という制度をやめればそういう問題はかなり緩和しますから。
私はですね、一院制にしたうえで、そういう工夫を導入すればいいんじゃないかなというふうに思います。

別所:なるほど。

中川:いいですか。
要するに第一院、下院ですね、これはやっぱり政権をつくるということが非常に大きな目的ですね。
諸外国でも下院が総選挙をやって多数党が政権をつくっていくということで、まさに政権をつくる、そのベースになる議員を国民が選ぶというのが下院であり、日本の場合は衆議院の大きな役割になりますから、今は小選挙区ですが前は中選挙区と言いましてもやはり選挙区をある程度小さく区切って、そこの代表を選んでいくという形で選挙が行われるわけです。
参議院は今は都道府県単位で、さっき衆議院と参議院の選挙制度がそんな違わないのではないかというニュアンスのお話がありましたが、実際、私は東京選挙区で選出の参議院議員をやっているわけですが、東京都全域が今私どもの選挙区なのですね。
そこに小選挙区が25あるわけです。
ですから衆議院の選挙区の25倍広いわけですね。
これは東京が一番そういう特色があるわけですが、大阪とか愛知とか、そういうところはやっぱり小選挙区がたくさんあって相当広いわけですね。
北海道なんかも地域が北海道全部ですから非常に広い地域から選ばれているということで、私は衆議院と参議院とかなり選挙区が、選挙制度が違うと思います。
そして参議院には今、水野さんもお話しになったように、比例区、全国区という制度がありまして、そういう意味では特殊な知識を持った人、専門的な方が比例区から当選する。
あるいは特定の業界の代表という立場の人ももちろん出てきますけれども、そういうことを考えると、衆参とで相当、選挙制度が違っていますね。
それを一緒くたにするというのはなかなか難しいと思います。
やっぱり、小選挙区制、中選挙区制という形で全国同じ考え方で決めた選挙区で総選挙をやって、それで政権ができていく。
参議院はそれと違う選挙区制度で別の角度から、新たにもういっぺん審議をし直していく。
専門的な知識をもってもう一度熟議をする、再考するという役割が区分されるべきだと思うのですね。
それは衆議院でごっちゃになった方がいいというふうには私は思わないですね。

別所:なるほど。

中川:やっぱり衆議院は政権に近いわけです。
参議院は今、閣僚を出していますけれども、たとえば参議院からは閣僚は出ない、そういうふうにすべきだという意見も前々からあるわけですね。
参議院はむしろ政権とちょっと距離を置いてチェックをする。
あるいは行政の監視をするのだ、と。
こういう機能を強めるべきだという意見もございまして、そういうことを考えると、やっぱり院を分けて、選挙制度も違えて、もういっぺん考え直す、チェックをする、そういう機能を果たしていくというやり方がいいというふうに考えています。

別所:なるほど。
今のお話を私なりにまとめさせていただくと、衆議院と参議院では代表制が違っていて、代表制度の違いが期待されている「チェック機能の違い」につながってくるので、それはそれぞれ物理的に分かれたそれぞれの院が役割を果たしていくのが適切だというのが中川さんのお考えだと思うのですけど。
水野さんのほうは、院は1つでもなかで工夫ができるじゃないかというご意見じゃないかというふうにうかがっているのですけど。
その今の代表制、選挙制度の違いということも前提にしても、1つの院で選挙制度が違うものを組み合わせて、なかで代表制を変えて審議時間とかを延ばせばそこは補完できるのではないかということなのですかね。

水野:できると思います。
現実に、衆議院の選挙制度というのも、今の衆議院の選挙制度も、小選挙区比例代表並立制といっているわけですね。
これはまさに、小選挙区っていう選挙制度と比例代表が並立しているわけで、衆議院の今の選挙制度の中に2つの選挙制度が入っているわけです。
ただ、日本のこの制度は、重複立候補ができるとかですね、比例代表の方は惜敗率で高い人から勝ち残るとか復活するとかっていう、ちょっと妙な制度が入っていますから、なんとなく並立という感じがしないところがありますけれども、実際には小選挙区と全国11ブロックの比例代表が衆議院の選挙制度のなかにあるわけですから。
小選挙区は今、軸ではありますけどね。
300人が小選挙区で180人が比例代表ですから。
このへんのことというのは参議院だってそうなのですね。
中川先生は東京選挙区という地方区、選挙区から選出されていて、一方で全国比例で選ばれる人たちも242人の参議員のうち、比例区の方は今96人ですか、そういうふうにいるわけですから、参議院も参議院で、2つの選挙制度があるわけですから、こういうようなことっていうのは一院にしたなかでもどういう組み合わせにするかいろんな工夫があると思いますが、私はできるんじゃないかなと思いますね。

別所:なるほど。
一院でもできそうだというお話ですが。

中川:なかなか難しいと思いますね。
というのは、参議院の場合には選挙区が都道府県単位になっている。
それに全国区、比例区というのがついているわけですよね。
日本は道州制ではありませんから、完全に都道府県の地域代表という性格にはならない。
憲法上も、一票の格差というときには人口比で今、最高裁の判決が出ますよね。
ですから完全に都道府県の代表だと地域の代表だという、そういう制度にはなっておりませんし、憲法上も最高裁の考え方からすると、そういう制度は仕組めないようなのですけども。
しかし、現実には都道府県という1つの地域を代表している議員だという意識が皆さんあるわけです。
小選挙区の場合にはもっと選挙区が小さくなりますし、中選挙区でもやっぱり都道府県単位よりずっと小さいわけですね。
そこを小選挙区、あるいは中選挙区にしても、そこにまた都道府県単位の選挙区を持ってきたり、今の衆議院の比例区のようにブロック単位、さらに参議院の全国区、そういうようないろんな制度が一緒に入ると、まず選挙する国民の側からしましてもあまりにも複雑になってどういう形で選んだらいいのか戸惑う。
やっぱりそこまで複雑な制度っていうのはできないと思います。
やっぱり院を分けて、選挙の時期も分けて、別の選挙という形で選ぶということでないと私はちょっと無理じゃないかと思いますね。
それで今、二院制をとっている国も、ほとんどは第二院の方は、上院の方は州の代表とかですね、やっぱり地域の代表という色合いが非常に濃いのが、今諸外国の例ですよね。
ですから選挙制度はかなり変えています。
それを一緒にしたような国というのは私は聞いたことがないですね。
一院制の国ではですね。