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成長戦略に資するデータ利活用のルールを

昨年12月20日付けで、IT総合戦略本部決定として、「パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針」が公表されています。
この方針の中で、「IT・データの利活用は、グローバルな競争を勝ち抜く鍵であり、その戦略的な利活用により、新たな付加価値を創造するサービスや革新的な新産業・サービスの創出と全産業の成長を促進する社会を実現する」と述べられています。そして、その前提として、「個人情報及びプライバシーの保護」を掲げ、ルールの明確化と制度見直しを行い、本年6月までに法改正の大綱をとりまとめることとされています。

データは普段あまり気づいていないところでさまざまに利活用され、これによって最適化が図られ、私たちの生活に恩恵がもたらされているという側面があります。先週、「スシロー」がビッグデータ分析を行うことにより、回転して時間が経ったために廃棄しなければならない寿司の量を75%ほど削減したとの日本経済新聞の記事がありました。スシローは、新鮮な寿司を1皿105円という低価格で提供している回転寿司最大手です。この低価格を維持しながら、新鮮な寿司を提供し続けることができる裏には、ビッグデータ分析により最適化を図り、効率的な運営がなされていることがあるのだということが分かります。コンビニでも同様に、POSシステムを使って多くの購買データが集積・利活用され、それによって時間帯による製造量、各店舗に向けた出荷量、物流などにおける効率化が図られています。もしビッグデータの利活用がなければ、いま100円で買えているシーチキンのおにぎりも、もしかしたら170円くらい払わないと買えなくなるのかもしれないですね。

データ利活用においては、「このデータを使うと、こういったことが分かるのではないか!」と予想できる場合もあります。しかし、想定外に「このデータからこんなことが分かるの!?」とか、逆に「このデータであんなことが分かると思ったのに期待はずれだった」ということもあります。Yahoo! JAPANでは、検索ワードから割り出すインフルエンザ流行状況レポートを発表しました。初めてこれを発表したのが昨年1月23日ですが、
http://searchblog.yahoo.co.jp/2013/01/yahoobigdata_Influenza.html
こちらをご覧頂くと、意外にも「マスク」というワードは相関性が低いことが分かります。このように、いくつかの分析を試みて、初めてある結果を予測するためにはどのようなデータが相関することになるのかが分かるというケースもあります。データ分析・利活用とは、そういう性質のものであり、初めからデータ利活用について予想できる範囲内でしか利活用ができないことになれば、新たなイノベーションの可能性は相対的に低くなると言えるでしょう。

さて、データの流れについて、デフォルトで水が流れていながらも、所々に岩があって流れない状態となっている川のような「Water On」の状態(写真左)と、デフォルトでは流れておらず、何らかの法律、契約等がある場合のみ例外的に蛇口がひねられて水が流れる荒野の蛇口のような「Water Off」の状態(写真右)とになぞらえて考えてみましょう。上記の例からすると、データの利活用がなされている状態、つまり「Water On」の方が多くの恩恵があるであろうとの想像が働きます。


Water On とWater Off

データ利活用に対し、どのような規制を敷いているかという観点で見ると、米国は「Water On」を志向した枠組みであると言えます。これに対してEUは「Water Off」を志向した枠組みであると言えるでしょう。実際、米国ではIT分野だけで見ても、データを利活用しつつ成功している企業が多くあります。

データ利活用においては、プライバシーの観点から懸念の声があがっています。もちろん、プライバシーには適切な配慮が払われなければなりません。個人情報保護法に基づく個人情報は当然に保護する必要があります。その上で、わが国ではどのような制度であるべきでしょうか。そもそも「プライバシー」とは何か、法律上は明確な規定がありません。そこで、「気持ち悪さ」の先にある真に法的に保護すべき権利は何かを議論し、そこを守りつつも、データ利活用も積極的に行われるような適切な枠組みが、いま求められています。現在、私たちは多くの場面において多くのデータ利活用の恩恵にあずかっている状況にあります。そして、この議論は、プライバシーの専門家だけではなく、データ利活用の恩恵に預かっている人も皆、参加するべきものです。適切なプライバシー保護のもと、国際競争に負けない成長戦略を描けるデータ利活用ができるようになってほしいものです。

米国は「Water On」を志向しており、わが国においても、国際競争に負けない成長戦略を描くためには極力「Water On」を志向すべきです。ここで気を付けるべきは、わが国の社会・経済・文化その他の環境に即した「Water On」の制度とはどのようなものかを探求すべきなのであって、「Water On」を志向する米国の制度に倣えば良いというものではないことです。わが国と米国では、法制度、行政の執行権限その他多くの点において仕組みが異なっていますので、米国の制度をそのままわが国に持って来ればよいとの簡単な話では済みません。
わが国に合った、適した制度をみんなで考えていくべき時が来ています。
政府は本年6月に個人情報保護法改正に向けた大綱をまとめることにしています。
残された時間はわずかです。これは、データ利活用がどうあるべきか、という問題であり、プライバシーの専門家だけにまかせておけばよいという話ではありません。
今こそ、みんなで考えていく時です。