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熟論3【7】次世代に向けて

古閑:ここまで、現状の課題とそれを解決するための対策についてご議論いただきました。まとめに代えて、もう少し先の未来について考えてみましょう。

10年後 20年後、次世代に向けて被災3県があるべき姿とは?

各県は、8年、10年といった計画で復興に取り組んでいますが、その復興計画を終えたさらに先の10年後、20年後、次世代に向けて被災3県があるべき姿について、皆さまはどのようにお考えでしょうか。まず、平野議員からお願いいたします。

平野:まず、津波被災地域から入らせていただきたいと思います。岩手県の三陸などは基本的に海で成り立ってきた地域でもありますし、世界有数の漁場でもありますので、10年後、20年後、30年後、見通したとしても、やはり水産を母体とした一次産業を基本産業として、この地域は成り立っていくのだろうと思います。特に、作る漁業、養殖漁業、それから定置、これについては、もうすでにしっかりとした産業として定着していたものが今復活していますので、これを基本に、この地域の経済が今後とも成り立つような方向で進めていくことが大事なのではないかと思います。
そして、今日の冒頭で述べたことですが、岩手県は、今まで何百年かに一度ぐらい大きな津波を受けています。それから日本全体としても、地震災害を一定の期間で受けている中で、基本的に日本人は災害に強いという、災害に遭ったとしても打ち勝つぞという遺伝子みたいなものがあるのだろうと思います。そういう中で将来について悲観的な姿を描く必要もないと思いますし、ベースの産業としての海があるので、被災地の復興は、確実に一歩ずつ進むと思います。進むのですが、考えなくてはならないのが、将来の人口構成がどうなるかということ。このことはしっかり考えていかなくてはならないと思います。
特に、現実問題として、岩手、宮城の三陸もそうだと思いますが、被災前の高齢化率が、35%を超えていた。地域によってはここ50年間で人口が10万から5万人を割ったような地域もあります。全体として人口減少が進んでいる中で、今回被災が起こり、どのように人口を見通すかというのはなかなかつらい作業だとは思いますが、ある程度高齢化は進むという前提の中で考えなくてはならない。一方で、日本全体もこれから高齢化に向かいますから、むしろ被災地で、その地域の高齢者に優しい、高齢者参加型の地域をつくるという意識を明確に持ってもらって、それを後押ししていく。全体として高齢化社会の先取りしたモデルをつくることをこれから取り組んで、10年後、20年後、被災を受けてこの地域はこういうふうに変わったよというような情報発信をぜひやっていただきたいと思います。 情報発信としてあと大事なことは、今回の被災についてはどういうことが起こったのか。そして、災害に強い町づくりというのはどういう形で、どういう考え方でつくっていったのか。こういったことも10年後、20年後、その先もずっと発信し続ける。そういう被災地であっていただきたいと思います。
あとやはり、三陸等々については豊かな自然もありますから、こういったことも活用しながら、全国から人が来るような観光地であるような方策を今からきっちり準備してやっていくことも大事だと思います。
津波被災地域については被災自治体が主体的にやるということがまず基本だと思いますが、福島の場合は、まず今の双葉郡は自治体そっくり外に出ているということ。それから被災者も全国でばらばらになっています。そういう中で、復興計画をどうやってつくるか、これは国が前面というよりも国がつくるということでやっていかなくてはならないと思います。そして、たぶん双葉郡は8町村ごとに計画をつくっていますが、どこかではやはり、郡としての産業の振興計画もつくりながら、外から企業を呼ぶというようなことを、国主導でやっていくということが大事だと思います。
それから合わせて、福島のサイトの問題ですが、ここの廃炉をしっかりやるということが日本の力をある意味では試されていると思いますし、試されている以上に国の責務だと思います。これをしっかりやることで、これから世界的には原発がどんどん減ってくる中で、廃炉ということが1つの大きなテーマになってきますから。
水素爆発を起こして、サイトが壊れたような状態で、デブリというようなものがある中で、メルトダウンしたものが中にあるというものについて解体ができれば、この技術は世界に発信することもできます。そういった次の再生エネルギーが世界に広まるまでの過渡期としての原発というのはやはりあると同時に、どこかの段階では廃炉が大きな仕事になってきます。福島のあの場所は、その技術、その発祥の地にぜひともしなくてはならない。そのためのいろいろな治験を、世界からもいろんな知恵を集めながら政府も一生懸命いろいろやっています。本当にこれは難しい問題いっぱいありますが、この問題を一歩一歩解決していくことが必要だと思います。そうすることで、福島は、あれだけの事故があったにもかかわらず、こういった廃炉の中でここまで成果が上がったということで世界の注目も集まってくる。それがまた、活性化にもつながるということですから、そういった観点でも、この廃炉についての技術の集積を、しっかりやっていく必要があると思います。

古閑:ありがとうございました。続きまして、秋葉議員、いかがでしょうか。

秋葉:10年後、20年後の東北被災地のあるべき姿ですが、東北は震災がなくても日本の中で2割の国土面積を持っているところに人口でいうと1割しか住んでいなくて、非常に過疎地が多い地域です。震災がなくても医師不足が深刻でした。そういうところに大惨事でしたから、そうした過疎の問題、医師の不足の問題がまさにセンセーショナルな形で顕在化したという特徴があります。そのこと自体は不幸なことでしたが、通常なら考えられないくらいの予算が投入されています。
私は、国会議員になる前は県会議員を10年ぐらいさせていただいておりました。県会議員の時には、県の一般会計も8,000億ぐらいしかありませんでした。現在は、その2倍、3倍の予算で事業がいろいろ行われているわけですから、これをチャンスととらえて震災前の状況に単に再生して戻すという発想でなくて、新しい付加価値をつけて、新しい東北、そしてその新しい東北というのは、まさに日本をけん引するような新しい産業の育成も含めて創造していくという、そういう視点といいますか、発想を持つことが大事だと思います。
実際、復興庁を中心にして、新しい東北の創造事業ということをずっと、取り組んできています。去年取り組んだことの検証もしながら、また新しく取り組もうということで、特にたとえば宮城県の場合には、東北大学が中心になり、東北メディカル・メガバンク構想といいまして、被災された住人の皆さんの健康管理をさせていただきながら、生体をサンプルとして取って、ゲノムバンクをつくいわゆるアンジーの乳房の切除で有名になりましたが、個別化医療といいますが。この人は将来、こういう病気になるリスクがあるから、先に対応したほうがいいといったことをデータに生かしていこうという、長期間のスパンの大きな構想です。
それと同様に、おととしからは、いわゆる医療情報のクラウドを利用して共有化をして、医療機関がだいぶ限られていますから、初年度は石巻圏と気仙沼圏の医療機関をICTで結んで医療情報を共有化することによって、効率的な医療資源に結びつけていこうという事業が始まりました。去年は仙台圏でこれがスタートしました。こういう取り組みはやはり新しい付加価値を生んで、新しいGDPにつながっていく話ですからね。単に復旧するというのではなくて、プラスアルファの価値をつけて、新しい産業につなげていくという発想を持つのが大事だと思います。
今日も話題にもありましたように、亘理や山元で作っているイチゴなどは、復旧も早かったわけですが、従来とは違う技術がそこに使われている。それから私どもの村井(嘉浩)知事が熱心に取り組んできた漁業特区などは、具体的に株式会社がかきの生産を始めて、昨年初めて桃浦のかきということで全国のスーパーに出荷されました。大変おいしくて、他のかきとの差別化もできて、好評です。ですから、その可能性は非常に無限だと思いますので、そういうものを着実に、新しい産業、新しい東北づくりにつなげていくということが、ものすごく大事だと思います。
そして、幸い仙台ではちょうど1年後の3月に、国連主催の世界防災会議が仙台を会場に開かれます。これは世界中から、5,000人を超える関係者がいらっしゃいます。関連の方々を含めると5万人を超えるといわれています。今まで仙台でもさまざまな国際会議が開かれてきましたが、これほどの規模のものは今回が初めてになるので、今そのためのメインの施設なども建設中です。来年の3月に世界防災会議が開催される際に、4年たった姿というものを世界にアピールしていく。
そして、6年後には東京オリンピック。名称は東京オリンピックですが、事実上は、東京を東北オリンピックという位置づけの中で聖火ランナーにはぜひ被災地を歩いていただいて、走っていただいて、世界にアピールをしていただきたいですね。そして、いくつかの競技は、ぜひ東北を会場にして力強く復興している姿をご覧いただきたいですね。昨年日本を訪れた外国人の数も、初めて1,000万人突破したわけですが、やはり東北地方にも、国内だけでなく、世界中から人を呼び込んで、常に風化しないように、活気づけていくという視点も大事だと思います。
特に、私は昨年秋まで復興副大臣であると同時に、厚生労働副大臣も兼務していたのですが、日本の医薬品や医療機器というのは残念ながら貿易赤字といいますか、輸入超過の状態にあります。実は、東北地方というのは、医療機器の製造出荷額は国内でダントツなのです。特に、福島や秋田などは、高い製造出荷額を誇っています。この医療機器の技術というのはたとえばですが、今、宮城県はトヨタを中心とする自動車産業の集積が非常に進んでいます。この自動車産業というのは、非常に医療用の技術に転嫁しやすいというふうにいわれており、そういう実績もあります。手術で使うかん子の工夫であったり、そういった今ある産業の活性化のために、多角化を目指すことへの補助であるとかですね。
くどいようですが、元に戻すという発想ではなく、そこに新しい付加価値をつけて、新しい東北を想像するという視点で意欲的な取り組みをしていくということが大変重要になってくると思います。復興庁が進めている先導モデル事業だけでなく、各都道府県、各自治体がこれからやろうとすることにきめの細かいフォローアップをしながら1日も早く被災地にみんなの笑顔が戻ってくるようにしていかなければいけません。
そのためにも、国も地方も自治体も連携してやっていかなければいけませんが、同じみんなベクトルを向いて仕事をすることが大事だと思っています。私は毎月、自分の会報を出しているのですが、その最新号には私の大好きなジョン・レノンの言葉で、「一人ひとりがみる夢はただの夢に過ぎないけれども、みんなでみる夢はいつか必ず実現する」という言葉があります。やはり、一人ひとりが同じ思いを持てば、新しい創造、新しい価値というのは必ず実現するのだと、思いを1つにして頑張っていきたいなと思っています。

古閑:わかりました、ありがとうございます。では、高木議員、お願いいたします。

高木:今、ずいぶんいろんなお話もありましたので、私自身考えていることを何点か申しあげたいのですが、新しい東北の5本柱というのはもうすでにでています。(1)子どもたちの成長を見守る安心社会、(2)高齢社会に対応した活力ある超高齢社会、(3)持続可能なエネルギー社会、(4)頑健で高い回復力を持った社会基盤・システムの導入で先進する社会、(5)高い発信力を持った地域資源を活用する社会。
これは地元の方たちの意見もうかがいながらつくった5本柱ですが、1つは、先ほど農水産業の再生という話がありました。やっぱり東北は、誰が何といっても一次産業の一番盛んな、そしてまた、日本にさまざまな食糧を供給してくれているところで、大食料供給基地というような役割を果たしていただきたいなという思いはあります。その手法は先ほど申しあげたように、新しい技術を使った農業・水産業を進めていくということもあります。
また、2つ目に、何といいましても世界への防災、減災の発信地というふうに私は思っています。先日も、群馬大学の片田(敏孝)先生が、国土の強じん化ももちろん大事。しかし、それ以上に、国民の心の強じん化が大事という話がありましたけれど、それはやはり国民自身が防災、減災意識、これをしっかりと身につけていくというそこが大事なところであって、その意味でこの東北がそうした防災の教訓を全国に、そして世界に今後も発信し続けていただきたいと思いますし、東北を歩けば、ここはたとえば釜石、こういうことなのだな、防災教育必要なのだな。また、津波がここまでくる、そうしたところを考えていかなければ、町づくりできないのだなとか、そうした発信地。やはりそうしたきっかけは、先ほどお話がありました国連防災世界会議というものが開催されるわけですが、開催地は仙台ですが、それを仙台だけで終わらせるのではなくて、これをどう岩手に福島に引っ張っていき、東北全体として、秋田とか青森とかまた山形とか、そこも大きな被災を受けていますので、そうしたところも世界的に東北が1つということで発信していくような、そういう機会にしていただきたいなと思います。
もう1つは、地域資源が大変豊かで、しかも文化、芸術、伝統、こうした資源も豊かで。その意味では景観も本当素晴らしいですし、国際観光立地に、東北は私はなれると思います。先日も宮城の松島のお話うかがいましたが、レストランの格付けもしていますが、フランスのミシュランが旅行情報誌も発信しています。そこが今回、この松島をわざわざ訪れる価値があると、お墨付きを、三ツ星評価を与えたわけですよね。それは大震災に耐えて、津波から住民を守った。しかも景観がいまだに保存をされている。それは素晴らしいということで、それでこのような形になったわけですが、私はそういう意味では、松島の国際化を加速させて、外国人が訪れても観光ルートを歩いて回れるとか。そういう整備も進められていると思いますがそれを売りにして、そこを1つ、東北のトップランナーになるのだと思います。そういう形で観光の国際化をしっかりと目指していただきたい。こういった資産は、東北にはたくさんあります。芭蕉が歩いた道とか。またそれも今、俳句も世界的に有名になりつつありますし、例を挙げるときりがありませんが、そのような立地を生かした国際観光立地にしていただきたい。
最後にやはり、持続可能なエネルギー社会ということで今、取り組まれていますが、福島の土湯温泉というのがありまして、ここは源泉の熱を利用してバイナリ―発電というのを考えているのですね。他の地熱発電の方式ですと、どうしても源泉がかれてしまうというような支障があるようですが、この方式だと温泉供給に影響を及ぼさないということで、町おこしの起爆剤にできるのではないかというので、国の再生可能エネルギー導入の補助事業にこの町の方たちが手を挙げてくれました。調査した結果、源泉1カ所でなんと250キロワットの発電ができる。小水力発電に適した砂防ダムも近くにあって、両方合わせたらその温泉街の電力は全部まかなえる。しかも今、固定価格買取制度もありますので、余ったものはそこに買い取ってもらう。そういうことを考えますと、エネルギーを地産地消するエコタウンということで土湯はよみがえる。ということで今、土湯の方たちもバイナリ―発電のスタートを今待っていると聞いています。
またもう一方で、浮体式の洋上風力発電、これも今、福島の沖に造られていますが、世界は大体30メートルぐらいの深さが限界らしいのですが、ここでは120メートルの深さ。これがもし成功しますと、日本の利用可能量は、今電力会社が10ありますが、それが約8倍になるのではないか。2億400万キロワットというのが今の発電量らしいのですが、その約8倍まで可能性がある。日本の周りにずっとそれを置くわけにはいきません。でも、そこまでの可能性がある実験が今始まっていて、これは漁業との共存をどうするかということになります。当然、浮体式の足元のところに海洋牧場はつくれないかという実験もすでにスタートしています。
この可能性を考えますと、私は東北にはそうした資源も技術も人もいる。むしろ新しい時代のモデル地域になりうるのではないか。ということから、公共事業から今復興事業でずっと今、東北に資金が回っていますが、この間に次の新しい東北、最先端の東北、ここの準備をしっかりとしていただきながら進めますと、今度はそれが、雇用が生まれる。高齢者の方も若者もここで働くことができる。生活することができる。こういうような形で進めていただきたいなと思います。そのための後押しを私たちも、国と県とまた市町村議員と一体になりながら、現場の様子をしっかりと受け止めて、これからも進めていきたいと思います。
そうしたことを通じて、私は人間の復興ということをうちの党は最初から掲げていまして、人間の復興、心の復興。やはり本当に、あれだけの災害があったけれども、今、あの時に私たちは家族の大切さ、絆、命の大切さということを東北の方たちから見つめ直すことを教わりました。東北の方たちがそうして元気になることによって、絶えずそれが私たちのもとに、あの時こうだったな、またもう1回自分自身を振り返っていく。また、自分の足元を見つめ直して、そこから感謝とか、生きるとか、また力をいただいていく。そうした日本に、また世界に発信していただけるような東北の姿ということを、私自身は思い描いております。

古閑:ありがとうございました。今日は、さまざまな課題についてご議論いただきましたが、最後に、10年後とか20年後のあるべき姿を語っていただきまして、共通の多分ワードは結構でてきたと思っております。付加価値をつけてとか、先取りモデルとか、あとはそれを世界に発信していくとか。そういった可能性も十分に秘めているので、まだまだみんなで頑張って、東北を盛り上げて、本当に復旧ではなくて復興というところを目指していくべきだというお話だったかと思います。ありがとうございます。
熟論をご覧の皆さま、今回の議論はいかがだったでしょうか。震災から3年が経過しようとしている今だからこそ考えるべき課題、今日の議論で取り上げたテーマ以外にも、きっとたくさんあるはずです。被災3県の復興は今後の日本の未来につながっています。ぜひ、ご家族、友人の方と話してみてください。そして、1日も早い復興の達成に向けてどうすべきか。何ができるのか。私たちも引き続き考えていきます。秋葉議員、高木議員、平野議員、お忙しいところ本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
今日の熟論はこれで失礼いたします。ありがとうございました。