Yahoo! JAPAN 政策企画

熟論3【4】産業再生に向けて

古閑:次は、産業再生に向けてご議論いただきたいと思います。再生の話題に踏み込んでまいりましたので、ここでテーマを変えて、一次産業の再生について考えてみたいと思います。
震災は一次産業に深刻なダメージを与えました。こちらのフリップは農林水産省がまとめた被害額になりますが、被災3県の農地・農業用施設と農産物被害額が8,657億円、林業が1,959億円、水産業関係被害が1兆1,477億円、合計被害額は2兆2,093億円と算出されています。

産業再生にむけて 震災による農林水産被害の規模

もう1つ、産業の復興が、震災後どのように推移しているか示したデータをご紹介します。一次産業に関する数字は残念ながら見当たらなかったため、ここでは経済産業省が発表している工業統計調査をもとに製造業における付加価値額の推移をグラフにしました。震災前の平成22年を100とした場合、震災後の平成23年には各県8割ほどに落ち込み、平成24年には若干回復しています。平成25年の数字はまだ公開されていませんが、このグラフの傾きからみて、まだ震災前の水準には戻っていないと推測できます。

産業再生にむけて 被災三県における製造業の付加価値額の推移

秋葉議員にお尋ねしますが、被災地の一次産業はどのようにして復興すればよろしいでしょうか。

秋葉:まず、被災地の現況からお話しますと、やはり津波の被害で地盤沈下ということ、それから塩害ということがございました。ようやく今、3年目を迎える状況の中で、約半分までは、ようやく作付けができたり、収穫ができるまでに回復をしてまいりました。私の地元の宮城野区若林区でもですね、2,000ヘクタール以上の最大規模のほ場整備なども実施されております。
それから、宮城県に関しては沿岸部の漁港も、約7割はとりあえず操業できるような水準にはなってきています。やはり、農林水産業がしっかりなりわいとして再生できるような環境をまず100を目指して整えていくことが大事だと思いますし、合わせて福島を中心とする風評被害の問題と、それから損害賠償というものが十分ではない。特に、宮城や岩手は福島にもまして、賠償金が十分払われていない。こういう問題もありますので、そうした点に十分に目配りをしながら対応していくことが大事だと思います。もともと宮城県などは水産加工額では全国一の収穫を誇っていたわけであり、農業県でもありますので、着実に進めていかなければいけないと思っています。

古閑:はい、ありがとうございます。平野議員はこのあたり、どのようにお考えでしょうか。

平野:まず、産業復活、復興につきましては、水産業が早かったなと思います。これは国がどうのこうの、県がどうのこうのというよりは、漁業協同組合、漁師さんの団体ですね。この方々が被災してさまざまな精神的ダメージを受け取るはずなのですが、極端な話をしますと、被災したら直後から、復興のことを考えていました。水産に関しては事業制度の創設が間に合わないものですから、先に水産協同組合、国は待っていられないということでどんどん復活、養殖いかだとかですね。それから漁船も全国に自分たちでいろいろなネットワーク使いながら買ってきて準備を進めるのです。後で水産のお金に関しては制度を作る。これは予算の中では珍しい対応だったのですが、訴求するという。予算制度がないということは、使っているのですが、訴求をするということで対応したということで、被災地にとっては、行く度に勇気づけられたのは、がれきが片付いているというのと合わせて、養殖施設が養殖ブイ、いかだが行く度に増えている。それから漁船の数も増えている。特に、三陸は世界有数の漁場でありますから、魚が揚がってくれば氷が必要になります。そうすると、製氷施設が必要になりますから、これも復活する。それから当然、市場も仮設ながら復活しますし、それから流通が動き出すということで、水産を軸に被災地の産業の復興は進み始めていると思います。
それから、農地に関しては、宮城県がかなり津波で農地が被災して作付けが困難、塩水が入ってきましたから。作付けが困難になっただけではなくていちご団地、それからかき団地等々も流されました。これはやはり地元の高い意欲でかなり早いスピードで復興が進んでいると思います。もうすでに宮城県は出来たイチゴを販売していて、地元の復興にかなり役立っているのではないかと思います。
福島が大変です。海もなかなか漁業が再開できない。そもそも戻りたくても戻れないという中で、一次産業、被災地の原発周辺の農地、それから林地、これをどうするかについては、長期的な課題として取り組む必要があると思います。代わって福島では、立地補助金等々上積みして、他の地域の中で産業ごとを導入して、沿岸地域で失った雇用の場を確保するといったそういったことの対応もしていますが、福島では引き続きこういった対応を基本に取り組みをしていただきたいと思います。
で、あと津波地域については、水産業を軸にしてこれからさまざまな製造業等々も復活するような、そういう支援も必要だと思います。津波に襲われ、被災をしたところにまた工場を建て直すのは時間もかかります。その中でいったん操業停止したものを、工場を復活させるというのはなかなか難しい問題もあります。こういったところでサプライチェーンに対してのさまざまな支援、アドバイスということも、国、県一体となってやっていくことが大事だと思います。

古閑:ありがとうございます。今のお話ですと、水産業が活性化することによって製氷事業者であるとか物流とか、どんどんそういったサイクルで活性化が進んでいくのではないかということかと思います。

平野:そうですね。さらにいうと、三陸はもともと宮城県もそうですが、何回も津波で被災をして、その都度復活したところです。復活の鍵は、その都度水産だったということもありますので、今回もやはり今までの流れといいますか、それは生きているということではないかと思います。

古閑:はい、なるほど。

高木:今のことで私は、東北は先ほどの農水産業が一次的な基幹産業ですから、それを復活させることは雇用の面でも、地域のコミュニティというまさにその点でも重要なことです。ただ、それを再生させるだけではなくて、むしろそこに高付加価値という、やはり新しい時代に即応した高い技術を取り入れた、そうした農水産業ができるように。それをしっかり国として支援すべきだと思います。
先ほどあったイチゴの話ですけど、これも培養液を使ったイチゴ、おいしいイチゴを作って春・秋収穫できるようにして、高い値で出荷できているとか。あとトマトですね。最新のトマトの栽培法を取り入れて、LEDを使って、栽培技術も新しいものを取り入れて、高額で出荷しているとか。そういうことを考えますと、農業においても、これからどういうふうに大区画化をしていくかとか、担い手を利用集積していくかとか。いろんな課題が全国あるわけですが、そうした高い視点に立っていただいて進めることができるように、国としてもしっかり後押しをしていきたいと思います。その時大事なのが、それを誰が買うかというと高齢者の方であり、女性が購入する場合が多いわけですから、買う側と作り手と、ここが対話できるような、そういうところから発想していただくと、さらに東北の持つ、私も農水産業、東北の大好きですから、それはさらにいい流れができるのではないかと思うのですね。

古閑:むしろこの機会をばねにして、新しいものに取り組んでいくような、そういった取り組みもできればいいのではと。

高木:そうですね。

古閑:はい、ありがとうございます。今、水産業の話もでておりましたけれども、Yahoo! JAPANも微力ながら、石巻をベースに漁業者によるEコマースサイトを立ち上げてお手伝いさせていただいております。

産業再生にむけて Yahoo! JAPANの取り組み事例 ヤフー石巻復興ベース 被災地住民との接点をつくり産業の復興へ取り組む

また、昨年から、河北新報社と共催で「ツール・ド・東北」という自動車イベントを開催し始めています。東北に人を呼び、被災地の復興状況をじかに見てもらうこと、現地にお金を落としてもらうことを目指しています。

産業再生にむけて Yahoo! JAPANの取り組み事例 六次産業化を目指してeコマース展開に図る取り組み復興デパートメント

Eコマースに話を戻すと、もちろん、宮城以外に素晴らしい食材を生産したり、魅力的な商材を作る被災地の方々はたくさんいらっしゃいます。ところが、Yahoo! JAPANが石巻で行っているEコマースによる支援を岩手や福島などでも進めたいのですが、そういったことに取り組める人材が少ないという壁にもぶつかってしまいます。震災以降、福島にたびたび入られている高木議員、そのような壁にぶつかってしまう点について、何かご見解をいただけますでしょうか。

高木:復興にはどうしても人材、またこれからこうしたイベント等に取り組むには専門人材が必要になると思います。それで、来年度予算になるのですが、復興人材プラットフォームというのを作りまして、それはヤフーや自治体、さまざまイベントをやっているNPO、そういうところを全部含めて、そうした方たちがどういう人材がほしいかを発信していただく。 また一方で、復興に携わりたい、それに応募したいという方たちに登録をしていただく。マッチングといいますか、お引き合わせをしていこうというのがこの人材プラットフォームということになります。ですから、そこでそれぞれのいろんな特技、またご自分のそうした力を使っていただいて、これをまた復興に役立てていただくという、こうしたことを考えまして、来年度から早くスタートさせたいと思います。

古閑:そうですか、なるほど。

高木:お役に立てると思います。

古閑:ありがとうございます。ヤフーが石巻を拠点としてこれまで被災地で活動してきた中での印象としましては、若者が少ないのかなと感じています。地元の方々も、子どもには東京など多くの職があるところに移ってというようなことを望んでいらっしゃる方もいるというお話もうかがいます。意欲のある若い力を被災地に呼ぶことも大切だと思うのですが、平野議員、そのあたり具体的にはどのようにしたらいいのか。何かお知恵ありますでしょうか。

平野:現状は古閑さんがおっしゃったとおりの面はあると思います。その背景にあるのは、働く場がまずないということで、特にお父さんは被災地で働く場がなくなってしまえば、よそで探さなくてはならない。そこでいったん職を見つけますと、今度はなかなかやめるわけにいかないということで、家族も被災地から呼んでそこで暮らすという方もおられます。
解決法としてあるのは、まず何といっても働く場の復活ということですが、これはやはり一度津波で被災したところで工場を復活させるためには土盛りをしなくてはならない。あるいは区画整理をしなくてはならない。時間がかかるのですね。時間がかかった後で復活させるのは、すぐに復活させるよりももっともっと大変だと思います。そういったところのことを念頭に置きながら、復活した後のサプライチェーン、先ほど申しあげたとおりですが、こういったところの支援もしっかり視野に入れながら、息の長い支援をしていくということ。
それから、被災自治体はいろいろな計画を表に出していますが、もっとこれを強く、被災地の方々に行きわたるような努力を。被災自治体も大変ですが、ビジョンが伝わるようなことを、被災自治体にもう少し努力してもらいたいと思いますし、そこに県も国もこういうふうになりますよと情報を出すことによって、若い人たちもまずは一時的にこちらにいるけれど、将来的には戻ろうかな、戻れるかな。そういった環境をつくることも大事だと思います。

古閑:今のご指摘は、支援自体が足りないというよりは、情報がうまく伝わっていないのではないかということですか。

平野:一番はやはり実態の問題として、働く場が十分に復活していない。たとえば中心市街地を流されたところは商店街の復活もまだこれからですから。そういった中で、実態としてそれがまだ目に見えていないというのがあると思います。あと合わせていろいろな情報が入っていない。ネット等使って各自治体も流すのですが、あるいはいろいろな通信、郵送、郵便を通じていろいろな情報流しているのですが、これを徹底するような努力も合わせて必要なのではないかと思います。

古閑:そういった観点でも、先ほどの人材プラットフォームが生きてくるということになるということでしょうか。来年ということですので期待したいと思います。秋葉議員は、何かこの点についてございますか。

秋葉:そうですね。地元では、有効求人倍率が1倍は超えているのですが、どうしてもミスマッチの現状というのがあるわけです。先ほどから出ているように、なりわいの場が喪失してしまっているので、沿岸部では20…、もう2桁以上人口が流出している自治体も少なくない中で、仙台市を含め、都市部はむしろ人口が増えています。それはなぜかといえば、被災自治体で職を失った人たちが、そういう都市部に雇用に来ているということにもなります。ですから、早く津波で失われた工場であるとか、あるいは職場というものが、時間軸の中で一定の時間はかかるのですが、地盤沈下をしたのを修復してからとか、そうした再建が果たされたあかつきには、戻りやすいような。1つの緩和策なり、支援の強化なり、していくことが大事だと思います。どうしても職場がないことには帰りたくても帰れないという。それが今の現実で、そしてこの人口の流失という関連でいっても、これを復興のしんちょくとともにむしろ戻ってくる人がこれからプラスに転じていくための施策の強化が何よりも重要になってくると思います。

古閑:わかりました、どうもありがとうございました。