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熟論5【8】質疑応答

別所:フロアの方々からご質問をいただく時間にしたいと思います。

竹本:神奈川県庁で黒岩知事の直属のスタッフをやっております竹本と申します。本日はありがとうございます。
我々神奈川県においても、今回の日本再興戦略をベースに特区として何をしていくかということをいろいろ考えている最中でございますが、1点、雇用の関係で教えていただければと思っております。女性の活用という話がいろいろ出ておりますが、それといわゆる働き方、つまり働き方を柔軟にしていくことというのは男女ともに大事だと思っているのですが、それと働く女性が働きやすくなる。それは、結局少子化の改善にもつながる。いろいろな理屈があるのですが、そのあたりの関係性について、どういうふうにご覧になっているか。私としては、日本の働き方が非常に柔軟でないということが、例えば長時間の勤務ができない女性を、ある意味で、社会で活躍できないようにしているのではないかといったところがあったりしますし、男性のほうも働きにくくなっていることが子育てにつながりにくいと考えているのですが、そういう意味での働き方と女性の活躍、少子化の3つの関係性について、先生方のご意見をいただきたいと思っております。よろしくお願いします。

山口:週刊ダイヤモンドの金融関係の副編集長をやっております山口と申します。本日はありがとうございました。
1点だけお伺いしたいことがありまして、私は医療については疎いところがありまして、岩盤と言われている部分について1点質問したいのですが、岩盤となっている具体的な人たちというのは誰になるのかというところですね。もう少し詳しく伺えないかなというところなのですが、例えば族議員であったり、例えば業界団体であったり、例えば当局であったり。いろいろと複雑な思惑が絡み合って成り立っているのかと思うのですが、その点、もう少しだけ突っ込んでお話いただければありがたいと思います。

宇都:大変、貴重なお話ありがとうございます。今週の新聞で国税庁のデータを使って、年金機構の厚生年金の徴収のチェックをやるというような記事が載っておりました。例えば、その先に、当然のことだと思うのですが、歳入庁といったアメリカのケースなども検討できると思うのですが、そこを研究したところ、なんとアメリカの場合、年金は一般会計で財務長官が主管しているということもあります。そう考えていきますと、これから財政再建のスケジュールを考えていかなければいけないと思うのですが、社会保障費の中で特別会計をもう一回見直していくことも考えられるのかなと。歳入庁という切り口で、その可能性を教えていただければと思います。

伊藤: 私からいいですか。最初の働き方と女性の活用、女性だけではないでしょうけどね。非常に大事な点で、さっき一部言いかけたのですが、最近、パートタイマーと正社員の待遇になるべく合わせようという動きが一部あって、マスコミで話題になっているのは、IKEAがアルバイトを正社員並みの給料にする、いっぺんに時給1000円が時給1500円になったのです。あるいはユニクロが、いわゆる地域限定正社員を増やそうということで、たまたま私がテレビで、コメントをしていたときに、インタビューされたIKEAの方が30いくつで素晴らしい仕事をしているのです。でもアルバイターなのです。なんでこんなにすごい仕事なのにアルバイターなのかなと思ってインタビューを聞いていたら、彼、フランス語と英語とスペイン語がペラペラなのですって。要するに、そういうことを仕事というか、本当はやりたいわけですね。でも、生きていくための仕事も必要だというので、今まではあえてアルバイトという仕事しかなかったのだけれど、今回は給料が上がったから非常に良かったと。これなんか多様な働き方の1つの例でしょう。ユニクロでも今度、週に4日ぐらい、1日5、6時間働いている女性がいて、これまではアルバイターだったのですが、そうではなくなったと。この人はどうなったのか、当然視聴者も気にしますよね。私も気にしていたのですが、単純な話でお子さんがいて夕方保育園に迎えに行かなければいけない。しかし、キャリアは続けたいし仕事もしたいという形で。そういう意味でみると、いろいろなライフスタイル、男性、女性限らず、いろいろな形がある中で、正社員は正社員のフリルで守ってそれ以外はパッチワークでやりましょうという時代は終わったのかなと思いますから、こういうことをきっかけに多様な働き方が広がっていくのがいいのかなと思います。
岩盤の話はなかなか難しいのですけど、1つだけぜひ考えていただきたいのですが、岩盤で抵抗しているという人たちは、水戸黄門に出ている悪い代官か何かで、どす黒いことだけを考えているとはあまり考えないほうがいいかもしれません。よく言われる話なのですが、イノベーションとはそういうものです。スタンフォード大学のクレプスという有名な人が言っていましたが、例えばディズニーランドを例にとりますと、東京ディズニーランドでミッキーマウスもドナルドダックも毎日同じことをやっている。毎日同じことを丁寧にやっていて、そこで利益が出るわけですよ。でも、そこではイノベーションは発生しないわけです。どうしたらいいかというと、他の隠れた実験場で悪者役のミッキーマウスとかを作って、壊してみてといったことをやるわけで。従って、企業もそうだと思うのですが、過去守ってきたものをいかにきちっと毎日やっていくか。日本の医療システムはこの瞬間にも何万人、何十万人という命を守りながら過去の仕組みを守っているわけですから、それを変えるとなるとなかなか簡単な話じゃない。しかし、変えないとどうにもならないわけで、だから特区みたいな制度はある意味でいうと、有効な方法だと思います。もちろん、水戸黄門の悪代官みたいな人がいるかもしれませんが、あまりそう単純に岩盤、悪者だという見方だけではないのかなと思います。

別所:ありがとうございます。竹中先生、よろしくお願いします。

竹中:最初の女性の労働力率が日本の場合、まだ低いという事実があります。安倍総理がよく引用する数字ですが、女性の労働力率が男性並みになって、1人あたりのGDPを稼いでくれるとしたら、日本のGDPは今この瞬間、16%増える。単純な計算ではありますが、それを阻んでいるのは何だろうか。たぶん日本の場合は2つあって、1つは柔軟な働き方ができない。私は子どものために10時から4時までだけ働きたい。人によっては、子どもが一段落したからもっと長く働きたい。そのライフステージによってもいろいろ変わるわけで、柔軟な働き方がなかなか認められないし、いわゆる正社員という人とものすごい格差がつけられている。そうすると、働くインセンティブがなくなる。そういう問題があるから、そこを埋めていきましょうというのが1つ。もう1つは、日本の場合、非常に難しいのは、女性が働く時のハウスワークを助ける人がいない。つまり、メイドさんです。私の知っている人が香港やシンガポールでたくさん働いていますが、非常に安い価格でメイドさんを雇っていて、メイドのいない生活なんて考えられないと言うわけですよ。メイドがいなかったら私なんかとても働けませんよ。それが今、日本では非常に制約されていて、昔はそうではなかったわけです。戦争間もない頃というのは、メイドさんが日本にもたくさんいたわけですが、そういうことをやる人がいなくなったので外国人労働を活用しようじゃないか。今度、総理がそのことで女性がもっと働けるようにするために、ハウスワークとエルダリーケアのために外国人労働を活用すると。今度の方針の中に入っていますので、これをやるにはまず特区の中でやっていただかなければならないので、神奈川県にぜひお願いしたいと思います。東京都はあまりやる気がないのでお願いしたいと思うのですが。それは少子化にもつながるわけですよね。
もう1つ、2番目の話で抵抗勢力というのは、ぜひ考えてほしいのは、皆さんの心の中に抵抗勢力の部分があるし、私の心の部分にもひょっとしたら抵抗勢力があるかもしれない。つまり、自分の一般論として言う時と自分の利害に直接関わってきた時と、当然違います。そこは、抵抗勢力が悪いわけではなくて、一生懸命自分の生活を守ろうとしている人とも言えます。もう1つの見方は、改革すれば必ず長期的な利益はあるのだけれど、短期的には失うかもしれない。その短期の損失と長期の利得をどのようにバランスさせるか。それは人によっていろいろ違う。たぶん若い人は長期の利得を稼げるけれど、高齢者にとっては長期の利得がないから、今の利益を守りたいと当然思うかもしれないし。そういう面もある。もう一度言いたいのは、私たちの心の中には、やはり抵抗勢力に誰もがなり得る部分を持っているということだと思います。
歳入庁の話は、全く私はその通りだと思うのですよ。先ほど、発言もしなかったのですが、法人税減税の財源、これは実はみんなの党の浅尾慶一郎さんが国会で、いろいろな意味での税と社会保険料の徴収漏れが10兆円あるという推計を出しています。それに対して、必ずしも説得的な答えを財務省はできていません。10兆円はオーバーでも、もし5兆円あったら法人税を半分にできてしまうのですよね。これから、どんどん消費税を長期的に上げていかなければいけない。増税していかなければいけないのであるならば、税金をごまかしている人をそのままにしておいて増税するというのは、ますます不公平を上げていきますから、私は本当に歳入庁をどこかで考える。アメリカ、イギリスの例があるわけですから。ただし、これは政治的にというのは大変難しい。なぜかというと、税と社会保険料、両方を一緒にすると、歳入庁というのはたぶん財務省から離れて内閣府かどこかに置かなければいけませんよね。やはり税を取るというのは、非常に大きな権力の源泉であるわけで、そういう問題が絡まってくるので、実は相当政治的に強いリーダーシップがないと難しい。でも、やらなければいけない問題だと思います。

別所:ありがとうございました。関口さん、いかがでしょう。

関口:歳入庁のところは竹中さんがおっしゃった通りで、私もそのとおりだと思いますのでそこは飛ばして、最初と2つ目の問題で、2つ目は竹中先生がさらっと上手にお答えになってしまったのですが。言っていいのかどうかわかりませんが、医師会の抵抗というのは、私は一番大きいと思いますね。製薬業界ももちろんありますが。ただ海外は少し変わってきておりまして、昨年の秋ですか。私どもで世界経営者会議というのをやっていまして、サヌフィのCEOが来ていたので話を聞きましたところ、普通は医薬メーカーというのは自分の薬を高く売るのが商売だったのですが、それはもう違うと。要するに、国民がみんな健康になるのが巡りめぐって自分たちの企業のミッションなのだから、高い薬を売るよりも病気にならないように、ヘルスケアのサービスでネットワークとかいろいろなものを使って病気にならないようにする、そのサービスを新しい成長の分野にするのだということを明言されていて、なるほどと思ったわけです。実際、Googleとか、今回Appleも発表しましたが、そういった異業種からもヘルスケアの分野に新しい技術を使って参入してきていますので、そういう形であまりお金を使わなくてちゃんと国民が元気になれるような仕組み作りをどうやって作っていくかが大事だと思います。
それと、最初のところですが、私がIT系だということでそれに寄ってしまって恐縮なのですが、多様な働き方ということでいえば、テレワークというのが一番、すぐ念頭に浮かぶと思うのですね。ところが、今回の成長戦略で私が検索をかけてみたところ、在宅勤務もテレワークもひと言も出てきていません。もちろん、在宅医療もないのですが。そういった形で、新しいツールがせっかくあるにもかかわらず、それを活用しようというのがあまり出ていない。もちろん、各省庁の各論には入っているのだと思いますけれども。そういう意味でいきますと、企業のあり方、さっき運動会型と言いましたが、モノづくり時代の仕組みは、みんながそこに集まってみんながそこで合議をして決めるというプロセスがあったので、そういうやり方を続けると、障害を持っている方とか女性とか、ハンディキャップを負っている方はそこに参画できないわけですね。それってもう最初から、フィールドから外れてしまうということでいえば、しっかりネットワークを作って、そこに参画できるような意思決定のメカニズムを企業として確立していかなければいけないし、行政も周りもそれを認めるような仕組み、あるいは規制、そういった形にしていかないとならないのではないでしょうか。

別所:ありがとうございます。