Yahoo! JAPAN 政策企画

APEC TEL 50@ブリスベン

9月29日から10月3日まで、オーストラリア・ブリスベンで開催された、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の第50回Telecommunications and Information Working Group(電気通信・情報作業部会。関係者の間では、APEC TEL 50と呼ばれています)に参加してきました。

ブリスベンは、シドニー、メルボルンに次ぐオーストラリア第3の都市で、ビジネスの拠点でありながらも、South Bank地区の豊かな自然、街中を流れる穏やかなブリスベン川(遊覧船に乗って川下りも楽しめます)、整備された大規模な美術館や博物館など、リゾート、アート、エンターテインメントに事欠かない国際都市です。これから夏を迎えようとする街中は、陽気な活気にあふれていました。


APEC TELは、APEC域内における新たな成長へ向けたICT開発や、ICT利活用を通じた社会経済活動の向上、安全・安心なICT環境の推進、地域経済統合の推進、ICT分野における協力の強化などを活動テーマとしています。また、全体会合とは別に、これらの各テーマに取り組むために、Development Steering Group (DSG)、Liberalization Steering Group (LSG)、Security and Prosperity Steering Group (SPSG)という3つのステアリンググループ(分科会)を設置して、議論を進めています。APEC域内のICT分野を担当する政策担当者が主な参加者ですが、Yahoo! JAPANのように各国・地域の企業も参加して、政府とビジネス双方が入り混じって、活発な議論がなされる場です。

今回のTEL 50では、Yahoo! JAPANは、LSGとSPSGにおけるいくつかのセッション、最終日の全体会合に参加しましたので、各セッションの議論内容について、簡単に概要をご紹介します。

●自由化分科会:Liberalization Steering Group (LSG)
LSGでは、政府間の議論だけでなく、官民のさまざまな機関・団体が自らの取り組みを発表するとともに、参加者からの質問などを通じてフラットに議論を行う「ラウンドテーブル」と呼ばれる場が設けられました。今回は、e-Governmentに関するラウンドテーブルと、緊急通報対応に関するラウンドテーブルが開催されました。

e-Governmentに関するラウンドテーブル
このラウンドテーブルでは、オープンガバメントやオープンデータのような政府保有のデータ開放に限らず、政府業務の電子化を通じた効率化や行政サービスの向上も含んだテーマについて、各国・地域の取り組みが紹介されました。
まず、この場では、先進的な取り組みとして、オーストラリアのDigital First policyが紹介されました。これは、公共サービスへのアクセスにおいてインターネット経由での利用をデフォルトとすることを実現しようというもので、2017年までに全ての政府間のやりとりはオンライン上でやりとりされるようにするという野心的な目標が紹介されました。オーストラリアの発表者は、システムを可能な限りシンプルにすること、部門横断的なクラウドコンピューティングサービスを採用することで、より効率的でコストを抑えたオンラインサービスが提供できることを強調していました。
その後も、各国・地域における政府業務の電子化やオープンデータ・オープンガバメントの取り組み、直面している課題が共有されました。国内からは取り組みが遅れているとも指摘される日本のオープンデータ政策ですが、紹介された国連E-Government Development Index(算出方法はこちら)を見る限り、米国や英国を上回り、世界6位と高いスコアとなっていました。


また、一連の議論で印象的だったのは、現在、各国・地域が直面しているのは、政府と民間の連携の強化、透明性の確保、市民参加の促進、既存政府部門の効率化など、技術だけでは解決できない課題だと強調する政策担当者が相次いだことです。日本の“e-Government” 政策も例外ではなく、日本政府から公開されるデータ形式などの技術的論点の検討もさることながら、電子化に合わせた非効率な政府業務の見直し、政府と企業間の各種事務手続きの効率化、公的情報アクセスの容易化による市民の政治参加や社会課題の解決など、技術だけでは解決しない政策的課題が重要なのではないでしょうか。

緊急通報対応に関するラウンドテーブル
 このラウンドテーブルでは、緊急通報(日本における110番通報や119番通報に相当するもの)について、各国・地域の取り組みが相互に共有され、議論が行われました。
 緊急時通報への対応については、各国・地域の取り組みに幅があり、例えばオーストラリアやマレーシアではそれぞれ000と999という統一的な電話番号で、事故、消防、救急、犯罪などに関する通報を全て受け付け、相談内容に応じて政府内の関係部署に振り分けるという、トップダウン的な対応を取っています。他方、日中韓のように対応分野に応じて番号が2つか3つに分かれていたり、米国では番号は911で統一されているものの、対応は州ごとに異なっており連邦政府レベルでの統一的な運用が行われていないなど、縦割りまたは分散的な対応をとっている国・地域もあります。
もっとも、今後の課題については各国・地域で共通しているように思われました。スマートフォンなどの機器が衛星利用測位システム(GPS)機能を搭載しているほか、音声を介さずともテキストの送受信でコミュニケーションが容易取れるようになっている中、こうした新機能を活用してどうやってより多くの人命を救うのかについて問題意識が多く提起されていました。例えば、これまでの電話通報では対処が困難であった、山中で道に迷って自らの居場所を把握できない人の救出、監禁されて音声通話ができない人の救出などは、新たな技術の活用によって救うことができるケースになると想定されます。なお、このラウンドテーブルでは、日本からも東日本大震災の際の日本の取り組みを紹介しました。どんなに立派な通報システムを準備しても、災害時に使えなければ意味がありません。日本からは、災害によって通信などの関連インフラがダメージを受けているときでも機能する仕組みを作ることが重要である点などを紹介しました。

●セキュリティ分科会:Security and Prosperity Steering Group (SPSG)
 モバイル機器のセキュリティの確保、ボットネット対策などさまざまなセキュリティに関するテーマが各国・地域から発表されましたが、この分科会では、日本から次回TEL 51において、安心で安全なICT利用環境を発展させるためのワークショップ「APEC Workshop on “Development of a safe and secure ICT use environment”」を開催することを提案し、次回会合で実施されることが承認されました。日本の提案に対しては、米国、オーストラリア、ブルネイなどから支持が示され、当初は半日のワークショップとして提案されたものが、1日かけて行われることとなりました。スマートフォンが青少年に普及する中で、SNS利用に伴うトラブルやオンラインでのいじめなどが、各国で共通に問題となっている様子がうかがえました。


最終日には、全体会合で各分科会の議論内容が報告されるとともに、各国・地域からの提案などについてTEL全体の承認がなされました。次回会合(TEL51)は、フィリピンのボラカイ島で開催される予定で、次回ホストを務めるフィリピンから、ボラカイ島の美しいビーチが映像つきで紹介されました。一週間に渡ったAPEC TEL50は、議長から各国・地域からの参加者やホストのオーストラリアに対して感謝の言葉が送られ、参加者からも笑顔があふれるなど、和やかな雰囲気の中、閉幕しました。