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熟論6【3】適切な経済圏とは

別所:次に、地方での産業創出等を実現していくために、地方の適切なかたちがどのようなものなのか考えてみたいと思います。経済圏の観点から、地方が目指すべき姿について考えます。では基礎情報を、茂木さんお願い致します。

茂木:はい。お伝えします。地方が目指す姿の一つとして、コンパクトシティがあります。コンパクトシティとは、市町村の中心部に居住地や都市機能を集積し、市街地の活性化や、行政コストの削減を図り、住民の利便性を向上させようとする考え方です。現在コンパクトシティを政策としている都市には、稚内市、札幌市、青森市、仙台市、富山市、豊橋市、神戸市、北九州市等があります。

別所:ありがとうございます。コンパクトシティというお話をさせていただいたのですが、コンパクトシティについては、どのようにお考えなのか。これは増田さんからお伺いしたいと思います。

増田:はい、わかりました。人口がこれから急激に減っていく。かつては日本の都市計画は、人口が増える。住宅地を郊外に作っていかなくちゃいけない。そこが乱開発になる。下水道なんかが整備されてないところにどんどん住宅が建つと、非常に環境が劣悪になる。それを避けるために、大きな開発については開発許可制度にする。あるいは線引と言ってですね、市街化区域と市街化調整区域を分けて、少しずつ市街化区域を膨らませていく。要するに、人口増前提に、全体の町が膨れ上がるのをどうやって上手くコントロールするかという考え方だったのですが。今は全国の都市部を見ても、ほとんどの所が外に出て行くことがなくて、むしろ外縁化して、非常に広がったものの中心部がスカスカになって、そこにもう一度戻ってこようという、そういう動きですよね。ですから、その中心部をもっと住みやすくして、そしてコンパクトなかたちにして、行政の経費も削減する。そこで浮いたものは、もっと住みやすさを向上させるところに使っていったらどうなのか、というのがコンパクトシティの発想の原点だと思います。日本の場合には、居住を強制的に移動させる訳にいかないから、時間をかけて、そのビジョンをしっかりと見せて、段々段々に中心部に集める。今は良く富山が代表例に上がりますよね。富山も随分長い間時間をかけて、底床のLRTという路面電車も使ったりして、段々良い町並みになってきました。私一つだけその点で申し上げておきたいのは、被災地で女川町という、須田さんという町長さんがやっている、原発のある脇ですけれども、震災の後かなり色々な都市計画を作ったのですが、その直後に就任した今の須田町長がね、思い切ってこれだけ人口も減っていくからコンパクト化しようと、盛んにコンパクトシティの計画を色々出しました。石破大臣の下で政務官やっておられる小泉進次郎さんと二人で、この間もシンポジウムに行ったのですが、実はその時にボソッと、そこにいた女子高生に言われたのですが、「震災前に女川町に住んでいた女子高生はやっぱり、町内のお店には行かなかった」と。「隣の石巻にある、イオンモールに買い物に行っていました」と言っていたのですよ。「本当にコンパクトな所に皆住まうようになるから、女川町も良い町作りになりますね」なんて言ってたら、その女の子が、「今まで行かなかったお店いくら集めても私ら行かない、同じようにやっぱり石巻行きます」って。そこでハッと思ったのですが、ただ単に物理的に今まであったものを中心部に集めるということじゃなくて、集積をさせることによって新たに何かお店としてもやれる、見えてくることがあるはずで。コンパクトにした事によって初めて可能になることをそこで提供するということが、コンパクトシティの本当の考え方なんだろうと。それをきちんと踏まえたコンパクトシティ化は町の魅力を高めていくのではないかなと思いますね。

別所:ありがとうございます。コンパクトシティの考え方について、まだまだ実験段階のところはあると思いますが、それぞれ合理的な考え方だと、私は思っております。または一方で、コンパクトシティを進めていった結果は、一定の地域に色々なものを集積させていくことになるという。逆に言うと、それ以外の地域では過疎化を進めていく結果になるのではないかと思っております。地方で色々な場所を問わず産業創成していこうというときに、コンパクトシティのサイズとか、経済圏は一体どういうふうに考えていけば良いのかというのが、課題ではないかと思います。石破大臣、何かお考えがございますか?

石破:増田先生の仰った通りです。単に集めただけでは駄目なんですよ。それは集めただけでは、女川の人は石巻に行くでしょうし。私は昭和32年生まれですが、私たちが子供の頃は高速道路も無かった、高速鉄道も無かった。一生に一度で良いから飛行機というものに乗ってみたいものだ、なぞと思っていた。現在は私の出身の鳥取ですら高速道路が走り、高速鉄道が走り、航空網が発達して。その気になれば2時間で青山とか、原宿とか行けちゃう訳ですよ。そしたらなにも街で買わなくたっていいということになる訳で、そこでなきゃ買えない物、そこでなきゃ会えない人というものを集積せんと意味がないです。実はこれだけ広がった町をコンパクトにするには、物凄いお金と、物凄い時間のかかるものです。日本の場合には土地の所有権は絶対だから、「別に良いよ」と。「魅力ある町になんかしなくたって、俺は年金貰って暮らしているし、兄ちゃんは県庁に勤めて、姉ちゃんは銀行に勤めて家賃も入るしね」、なぞという商店の人たちは実はいっぱいいる。そこで、集積するといっても、「別に魅力のあるもの売らなくたって食っていけるもんね」、ということではどうにもならんので。そこは皆で頑張りましょうよということをしなきゃいかんのだと思っています。あちこちをギュッと集積するとなれば、「周りの集落はどうなるのですか?」ということだと思います。集積をすることによって、例えば地方でいうと福祉団体の、あるいは福祉組織の職員の方の一日の行動を見ると、9割が車に乗っているのですって。一日の9割ほど車に乗って、あそこのお爺さん元気?ここのお婆さんまだ生きている?みたいなことをやる訳ですよね。そうすると時間も物凄くかかるし、効率も悪いしという訳で、そこは集積をしていかなければいかんのです。「あなたあそこに住んじゃいけません、コンパクトシティの内側に来なさい」なんて強制は出来ません。強制は出来ないけれど、どっちの方が良い人生なのだろうねということは、何とかご了解いただかないとならないし。仮に下へ降りてきたとしても、墓参りにはちゃんと行けるよね。また、必要があればその家にも帰れるよね。そしてそこにある田んぼや畑は、住んでいるのが町中であっても必ず通って、畑も田んぼも耕せるよねという、そういうライフスタイルをこちらの側から提示する必要があると思います。

別所:ありがとうございます。コンパクトシティは現在色々なところで試されています。実際に実現をしていくためには、様々な課題があることがわかりました。適切な経済圏の規模を確保しながら、ある意味行政コストを適切に配分していくために集積を図っていく難しさ、というのが感じられると思います。

出演者:
石破茂 地方創生担当大臣
増田寛也 日本創成会議座長
熟論第6回「地方創生に向けて〜日本は変われるか?〜」