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熟論6【2】地方産業の創出

別所:地方創生には、人を地方に呼び込むことが重要な点だと言われていますが、そのためには地方に仕事を作ることが欠かせません。まずは、地域産業の創出について考えたいと思います。では基礎情報を、茂木さん、お願い致します。

茂木:まず都道府県の人口と、一人当たりの県民所得の関係です。人口の多い上位三つの都府県と、人口の少ない上位三つの県を比較すると、一人当たりの県民所得は人口の多い都府県の方が、人口の少ない県よりも高いという傾向になっています。次に、都道府県別の有効求人倍率をみてみましょう。東京都が有効求人倍率1.6を超えて一番高く、次いで福島県、愛知県、福井県が1.4を超えて高くなっています。一方、青森県、埼玉県、鹿児島県、沖縄県が0.8以下で低くなっています。

別所:では、今ご説明しました基礎情報をもとに、地方産業創出のために、いつまでに何を行うのか、具体的な成果としては何を目指すのかについてお伺いしたいと思います。まずは石破大臣から、特に国会の委員会でも、「従来と違うことはもう時間がないことです」と仰っていますので、そういう危機感と共にどういうことをすべきとお考えかというお話を伺えればと思います。お願い致します。

石破:私たちは魔法使いじゃないので、エイヤッと呪文を唱えれば突如として地方に産業ができ、地方に雇用ができるなんぞということはありません。そんな嘘デタラメを言うつもりは全くありません。で、今まで地方を支えていたものは何かといえば、それは公共投資と企業誘致です。この二つで地方を支えていたのですね。ですが、もう公共事業もお金がありませんと。アチラコチラにいろんなものを作る訳にはまいりません。お金があれば話は別だと。企業誘致も企業の立数は一番多いときの6分の1になっています。この6分の1というのはすごい数字であって、同じ物をたくさん作りましょうというかたちの、そういうモデルはこれから先日本では不可能なことだと思っています。この二つが健在であったうちは地方の衰退が表に出なかった。同じ発音で言えば顕在化することがなかった。でもその間に、例えば農業・漁業・林業というのはどんどん衰退をしていった。観光も新しいモデルに変わることが出来なかった。ですから、従来型の公共事業、あるいは企業誘致というかたちを変えて、第一次産業の六次産業化であり、あるいは自然エネルギー・再生可能エネルギーであり、そして観光であり。あるいは新しいかたちの福祉のビジョン、医療のビジョンであり。そういうものを作っていかないと、地方の創生なんぞというものはありません。ある意味でないものねだりしてもしょうがないので。あるものを探さなければ地方は創生しないということです。どこで何をやるべきかということは、永田町や霞ヶ関で考えてもわかりっこないので。この国会で今ご審議いただいている法案が成立をすれば、全部の市町村で平成27年度中というのは、遅くとも28年の3月までにという事ですが。我が町の産業をどうする、我が町の人口をどうする、我が町の財政をどうするということをそれぞれの地方で総合戦略というものを作ってもらい、それに相応しい応援を国はしていくということになります。ですから、いっせのせで、全国が再生することはございません。それぞれの市町村が、我が町に相応しい創生のやり方、雇用のやり方とはかくなるものだ、というものが出来たところは創生するでしょう。そうでなければしません。国はそういうことに対して財政的な支援であり、人的な支援であり、情報的な支援で目一杯のことをやります。ですから早ければ、早いところは2年か3年でそうなるでしょう。ならないところはいつまで経ってもならないでしょう。

別所:ありがとうございます。かなり自治体の力が試されてくると思っていますが、増田さんはどのようにお考えでしょうか?

増田:今、人がどんどん一方通行で東京圏に集まってきています。これはもう、前の東京オリンピックの前後、年代でいうと1960年くらいからスタートして高度成長期、それからバブル期、それからまた最近に至るまできている。その理由は、大学への進学が入り口になって、そのまま東京に残って、そして就職をすると。これが一番人生の成功モデルみたいなものがずっと出来上がってきているのが日本の姿だと思います。それをもう一度切り替える流れを作れるかどうかだと思います。産業的にみると、今大臣からお話あったように、もっともっと生産性を上げたり、あるいは産業としての機能を高める上では、農業はまだまだもっと良くなる可能性あるし。海側に行けば漁業だし山に行けば林業。それから、多くの地域で観光業は有効な産業で、全体として、農業も六次産業化するならなんなりするということが必要だろうと思います。これまで地域で産業を支えて来たのはどこかと考えると、医療介護分野。高校を出て専門学校行って、そして介護の方に担い手が行く。高齢者がどんどん増えていますから、まだまだそういう担い手を必要とする時代が、つい最近まで続いていました。地方部から始まってますが、その医療介護が実はもう、高齢者すらだんだん自治体で減り始めてきて、私の推計ですと全体の44、45%の大体800近くの自治体は、もう高齢者すら減り始めるので、医療介護が有力な地域での就職先にならない。ますますその人たちがどうするかというと、産業。農業とか、それから観光業だけでは到底吸収しきれない部分があって。だから今大臣がお話になったように、そこから先どうするかは、地域を一番良く知っている自治体が考えていかないと駄目だと。ただ、新しい仕事を作ったり、あるいは生産性を上げたりするというのは、人口がある程度集まっている地域地域の拠点。県でいえば県庁所在地のような所が、三次産業、いわゆるサービス産業が集まっている、集積しているところで。そういうサービス産業の、これから生産性をどう上げていくかだとか、あるいはサービス産業でどれだけ雇用を広げられるかというのは、私は1つの鍵になると思います。それについて自治体だけではなくて、地域の金融機関ですとか、色々なセクターがもっともっと、新しい職場の開拓に努めてくれると。それから本社機能。今ほとんど東京に集中していますが、あえて地価の高い東京に置かなくても良いような機能がその中にあるだろうと。研修は地方でやった方が、もっとずっと良い効果が出てくるかも知れませんし。購買部門だったらあえて東京におく必要はないということで、企業によってはもう地方に展開しているところもありますから。そういう企業の考え方を上手く使って、それで地方の雇用を増やしていくことも必要だろうと思います。

別所:ありがとうございます。もし私の理解が間違っていたら石破大臣に修正していただきたいのですが。衆議院を通過した法律で、国の役割は何なのかというと、情報の収集とか提供が中心になっていますと明確に書かれていて。国が積極的に自ら何かを作り出すということではなくて、具体的な、自主的な施策というのは地方自治体が策定して、自ら実施しなさいと書かれていると理解しております。ですから、今までのように国が何か財政を用意して、地方自治体にそれを与えて、それが何かになるというものではなくて。地方自治体自らが考え、実行していく責務を負わされているという意味では、国の法律としてはかなり変わったものになっているのかな、という理解です。構造としては、そういう構造を想定しているということでよろしいですか?

石破:そういうことです。国が何かしたくても、国にはもはやお金はない。あるのは借金だけでしてね。国にはお金はありません。ですから、自治体が自立するには、自治体でいかにして税収を上げていくかということに他なりません。国からお金が降ってくるのではなくて、自ら産業を興して税収を上げる。それ以外に、地方が元気になる道はない。しかしどうやったら良いのだわからんぞ、という話になる訳で。国から色んな資料、あるいはノウハウ、そういうものは提供します。有能な人材で本当に役に立つならば、人も出します。それによって地方が自由に使うお金がもっとあった方が良いということでしょう。だとすれば、今までの画一的な補助金というのを整理統合して、そこから財源を生み出すなり、あるいは地域において優先順位をつけて、この分は我慢してもらわなきゃ仕方がないねという部分は必ずあります。ないはずがない。でもそれは、国が押し付けるのではなくて、地域住民の理解のもとに、そこで納得をして削っていかなければ仕方がないのであって。自由に使えるお金が増えて、それでもって税収が増えるかどうかも、地域において検証がなされなければいけません。それは、今まで補助金がありました。それがどんな効果を発現したかという検証は、行われた試しがない。税金を有効に使っていくためには、それがどのように活かされたかという検証がなされるべきであり、自治体の経営というのは、それがまずければ経営者を変える。民間企業であれば当たり前の話です。

別所:ありがとうございます。検証という言葉を述べられていたのですが、大臣の委員会でのご発言をみていますと、ちゃんとした数値目標も持たなければならないだろうと明確に仰っています。産業に携わっている側からみますと、何か目標を作る時には、必ず数値の目標を作るのが当然だと理解していますし、数値の目標を達成しているかどうかを見極めるために、KPIというようなものを設定して、きちんとやっていくというのが、産業を作っていくための常識ではないかと思っています。そういうものをきちんと国の方でも地方と一緒にみながらやっていっていただけると考えていけばよろしいのでしょうか?

石破:地方にお願いするからには国だってきちんとした目標を作って、それがきちんと実行できるかどうかが問われなければいけません。地方にお願いするからには、国側だって同じスタンスで緊張感を持って臨むのは当然です。

別所:今大臣の頭の中にある数値目標とは、例えばどういうものを数値化して目標にしたら良いとお考えでしょうか?

石破:それは、例えて観光客でいえば、入れ込み数だけ見たって、それは入れ込み数だとお金が落ちたかどうかわからなくて、入れ込み数は多いけど落ちたのはゴミばっかりみたいな、そんなことにもなる訳ですね。どれだけの人がどれだけのお金を落としましたか、ということでしょう。あるいは、外から入ってきたお金というものを、いかにしてその地域の中で回すかという事はとても重要なのであって、例えば本当かどうか知らないが、夏の軽井沢現象というのがあるんだそうです。あれは夏の軽井沢に色んなお店が出ますよね?原宿とか、青山とか、六本木とか、銀座とかの物がざざざっと出てきます。来るのも東京の人、売っている物はメイドインチャイナかどうかは別として、東京から来た物を売っている。で、働いている人も東京の人。で、そこで売上が上がったらそのお金も東京のものとなります。ということだと、これは一体何なんだということになる訳で。そこの地域でどれだけお金が回ったか、あるいは、雇用がどれくらい増えたか。あるいは、生産性がどこまで上がったか。まだ何を数値目標としていたかはハッキリ決まっていませんが、あんまり荒唐無稽な事を言われても困るので。やはり実現可能性があって、そしてまたそれがどういうものなのか、どうしたらその数値が達成できるのかということが明確に認識できるものを提示したいと思います。

別所:ありがとうございます。数値目標がない目標というのは、御題目にしか過ぎないと思っていますので、是非そこはきっちりしていただければと思っております。先程増田さんが述べられた中に、サービス産業というお話がありましたが、地方自治体の努力も勿論そうなのですが、産業側に期待されているものもたくさんあるのではないかなと思っています。本社機能の一部の移転というお話もありましたけど、それ以外に、産業として、地方の産業もありますし、今東京にある産業もあると思うのですけど、どういう事を期待されているのか。あるいはどういう義務を果たすべきだとお考えなのか教えていただければと思います。

増田:どういう産業が地方で立地可能かとかいうのは、地域地域によって事情違うでしょうけれども。大きな企業、優れた企業、良い企業、親にとっても自分の子供たちを就職し易い企業ほど、東京で一括本社採用することが多いわけですね。そのために、田舎の大学じゃ駄目、地方の大学じゃ駄目だから東京に行かなくちゃいけない。そしてそのまま東京の企業に就職をする。で、故郷に戻らない。今働き方も非常に多様化してきていると言われていますし、ダイバーシティといったかたちでこのグローバル化時代にどんどん競争力を高めるという事も必要でしょう。しかし一方で、地域を限定して、あるエリアの中だけで動いていくような、地域限定社員は、むしろ地域のブロックブロックで採用する。それを段々地方の方に押し広げていくという採用形態をもっと広げていっても良いのではないか。あるいは非正規で最初入っている人達が、段々地域限定の正社員化していく。そういった人達も当然のことながら、補充する時はやっぱり地方で採用すると。会社としてどういう成長戦略を描くかというときに、もっと地方の力を上手く活かすような考え方を取り入れても良いのではないかと。ただ、企業にとってみても本当に上手くいくのか、大丈夫なのかというご心配も当然ある訳です。ですから、最初申し上げた、例えば東京にある本社機能を地方に移していくというときに、企業としてそういう行動決断をし、それによって地方の具体的な採用が何人増えましたというKPI、数値目標をきちんと達成したのであれば、例えば法人税をある程度まけるとか、何か税制と結びつけてインセンティブを与えていくこともあって良いのではないかと思いますね。

別所:ありがとうございます。今お話いただいたような、産業界に対する期待とか、あるいはどういうことを担って欲しいと思われているのか、出来れば私共としては、たくさん情報として聞かせていただきたいなと思っております。逆に、今の法律の中には、国の役割、地方公共団体の役割が書かれていて、国と地方公共団体の間の色々なコミュニケーションについては書かれているのですが、産業を担う、産業界とのコミュニケーションのところがあまり、もしかすると十分に書かれていないのかなという気がしております。最初に石破大臣がお話された、「かつて企業誘致で産業を」という時代は、一定の企業誘致のパターンで、全国展開が可能だった部分があって、いわゆる横展開が出来た時代ではないかと思うのですが、今はさすがにそういう横展開が簡単に出来る時代ではなくなってきていて、逆に個別の企業企業が考えている事、そのニーズを、国が聞いてみたいと、国が吸い上げて、それを情報として出してみたいということをもしお考えであれば、産業の声を国が聞いていく仕組みもあったら良いのではないかなと考えているのですが、その点について石破大臣いかがでしょうか?

石破:いくらでもお聞きしますよ。ですから企業の方々が、地方に出たいと。で、そのためには何が必要なのか。だから良く石川県小松市の小松の例が出されますよね。あそこの坂根相談役のお話を聞いて、なるほどねと思うことは多い訳で、教えられることもいっぱいあるのですよね。効率も上がりましたと。お給料はそんなに変わらなくても、生活費は物凄く安いですと。通勤時間は10分から15分ですと。広いお家にも住めますと。皆幸せに暮らしましたとさ、みたいな話になる訳ですけれど。で、その話がなんで横展開しないんだろうね。でてくる話は小松さんか、YKKさんか、東芝さんがちょっと話が出てくるかしら、くらいで、そんなに素晴らしいことなら全国にもっと流行っても良いはずだと。で、それが流行らないとすれば、何が理由なんだろうかということは、聞いてみなければわかりません。多分そこに出て来るのは、教育なんだろうと思います。やっぱり東京にいないと良い学校に行けないもんね、ということが、幻想かどうか知らないけど、仮にそうであるとするならば、地方でも良い教育が受けられますよね、というのを担保しなければいかんことになるんですよ。だから、そういう成功事例みたいなものを、横展開していくためには、色んな企業さんの色んな話を聞くことを、我々はもっと積極的にやらねばならんのです。

別所:わかりました。その点は是非よろしくお願い致します。

出演者:
石破茂 地方創生担当大臣
増田寛也 日本創成会議座長
熟論第6回「地方創生に向けて〜日本は変われるか?〜」