Yahoo! JAPAN 政策企画

民法(債権関係)改正に関する自民党ヒアリング

民法(債権関係)改正の議論が大詰めを迎え、平成21年11月から98回にわたり開催されてきた法務省法制審議会民法(債権関係)部会も2月10日に開催される99回目がついに最終回の予定となっています。
国会での審議に向けた準備も進められているようですが、Yahoo! JAPAN政策企画も自民党の「「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」に関する関係団体ヒアリング」に参加してきました。

今回の民法改正は、明治29年の民法制定以来はじめて抜本的に民法(債権法)の在り方を見直すものになります。
民法改正の主な目的は、①民法制定以来の社会・経済の変化に対応すること、②民法を国民にとって分かりやすいものにすることにあるとされています。
改正点の多くは、これまで積み重ねられてきた判例法理を民法に記載することによってより民法を分かりやすいものにしようという②の観点のものになっています。
いっぽう、①の社会・経済の変化に対応するという観点のものとしては、消滅時効の時効期間の見直しや法定利率の引下げなどもありますが、検討開始当初から大きな論点とされてきたものとして約款があります。
インターネット上のサービスにおいても利用規約といった形で約款が使用されていますが、実はいままで約款に関する民法上のルールは整備されていませんでした。
そこで、自民党ヒアリングにおいて、約款に関する以下の意見を提出しましたのでご紹介いたします。




「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」について


2015年2月4日
ヤフー株式会社

1.総論
今回の民法の改正の目的たる、明治29年の民法制定以来の社会・経済の変化に対応すること、および国民一般にわかりやすいものとすることは、民事の基本法という民法の性質を鑑みれば、いずれも重要なことであり、今回の改正については評価できるものと考えます。
特に、技術の進展がめざましく、社会・経済のあり方が常に変化している近年においては、過去の判例や解釈だけにとらわれるだけでなく、より国民の日常生活や経済活動の実態に即した制度として民法その他の一般法が適切に設計されていることが肝要であり、この制度設計が適切になされていない場合には、私たちの生活や経済にも大きな影響を与えかねないと考えます。

2.各論(定型約款について)
明治29年の民法制定時からの大きな社会・経済の変化として、今日においては不特定多数のお客様に画一的に商品・サービス(インターネット上で提供されるサービスのほか、電気、ガス、水道、電車、バス、コインパーキング、スポーツクラブ、コインロッカー、銀行、ホテル・旅館等々)が提供されるようになり、このような商品・サービスが国民生活に密着し、一般化したということがあります。
このような商品・サービスでは、どのお客様とも一律の条件で取引すべく、契約の一方当事者である商品・サービス提供者があらかじめ契約条件を約款(利用規約)として定型化しておき、それをお客様に開示するという形で契約を締結しています。
しかし、現行民法では、契約当事者が一方的に定めている約款を契約として有効だとしている規定がありません。
不特定多数のお客様に画一的に商品・サービスを提供する事業のうち、個別の業法が定められており、約款に関しても監督官庁による関与があるものについては、約款についてお客様との間で契約としての有効性が争いになるということはなかなか考えにくいかもしれません。そのような事業分野からは、民法上で約款の必要性を感じないという主張もあり得ます。
しかし近年、個別の業法が存在しない分野においても不特定多数のお客様に画一的な形で提供する商品・サービスは増えており、インターネットを通じて提供される一般的なサービスにおいても、特段の業法等が存在しない分野は数多く存在します。
大審院の判決にて、お客様が約款に含まれる具体的な内容を認識していなかったとしても反証のない限り約款の内容による意思で契約をしたものと推定すべきであると示されており、現行法下においては、これに依拠して約款による取引が実施されています。
ただし、裁判例は、事案の個別事情によって個別に判断されるものなので、一つの事例についてたまたま出された裁判例が万能ということにはなりません。実際に、当社も約款の有効性について訴訟で争われたことがあり、非常に不安定な状態にさらされてビジネスを行っているという実態があります。このことは、ビジネス上のリスク要因であると言えます。インターネットサービスを提供している事業者は、小規模なベンチャー企業も多く、万一、約款についてその有効性を争われて訴えられた場合に、必ずしもすべての事業者が当社のように弁護士を使って訴訟に対処していくという対応ができるわけではありません。
民法上に約款についてのルールが示されれば、サービス提供者はそれに従い安心して約款による取引を行うことができますし、お客様としてもそのルールに従って、取引することを今以上に意識し、その内容を把握するものと思われます。
上記の理由から、今回の民法(債権関係)の改正により、「定型約款」に関する規定が盛り込まれることは、望ましいことだと考えています。

また、現在公表されている定型約款の組入れや変更のための要件も合理的で対応可能なものであると考えております。
なお、定型約款の変更が認められるのは、定型約款の中で「定型約款の変更をすることができる」旨定められているときに限るとされており、現在用いられている約款にこの記載がないものもあると思われるため、この改正案で進めるのであれば、改正の内容を広く周知し、合理的な経過措置を設けることが望ましいものと考えております。


以 上