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熟論7【2】アベノミクスの現在の実績

別所:本日は、特に成長戦略に関するものについて掘り下げて議論ができればと思います。まず、こちらをご覧ください。

これは実績として、政府がこれまでの経済政策についての結果を発表したものです。これは全般についてですが、まず西村副大臣、これまでの経済政策の実績について、どのようにお考えでしょうか。

西村:フリップに書いていただいていますが、実質GDPもプラスで成長過程に入ってきたということです。雇用環境が非常に良くなりまして、有効求人倍率は、まさに1.14倍ということです。職を探している人の数の1.14倍の職があるということですので、選り好みしなければ職は見つかるということです。ミスマッチはありますが、ここも22年ぶりに高い数字で職が出てきているということです。賃金上げも昨年15年ぶりの水準で引き上げが行われて、さらに今年はそれを上回る勢いで、賃上げがなされています。
合わせて企業の収益がいいということで、これは先ほど鈴木さんのお話にあったように、行き過ぎた円高が是正をされてきたという中で、企業収益が上がってきているということです。こうしたことを背景に企業収益がいいですから、税収も増えていますので、借金を増やさずに補正予算を打つことができています。
そういう意味でデフレ脱却も、まだ道半ばですが、デフレの状態というのは物価がどんどん下がりすぎていますから売り上げが減っていく、したがって給料も減る、そうするとまた消費が減る、また物価が下がるという悪い循環を脱却をして、緩やかなインフレ、2%インフレ目標を立てたわけです。1%から2%ぐらいの、世界中の多くの国が目指している緩やかなインフレを目指してやっていこうというところに向けて、今その道半ばですが、その道筋がようやく見え始めたところです。そんな中で雇用環境もよくなっている、それから企業収益が上がっているということで、全体としては非常にいい感じになってきています。
追加して言えば、一番下にあります外国人の訪日客数です。これも昨年2014年は1,300万人を超えました。今年はさらに、1月、2月は昨年を上回る勢い外国人が日本を訪れてくれています。これはビザを緩和した効果、あるいは円安の効果もあるのだと思います。外国人10人が日本で使ってくれる消費金額が、日本人1人が年間消費する金額と大体同じぐらいです。日本は人口がもう減り始めていますが、1,341万人が来てくれたということは、平均すると134万人の日本人が増えたのと同じ効果をもたらしてくれていますから、そういう意味では、非常に国内消費を増やす原動力のひとつになってくれています。
全体としてはこういう環境にありますが、まだデフレが道半ばということ、あるいは大企業を中心に企業業績が回復していますが、中小企業、地方が、まだそこまでいっていないという声も聞いていますので、われわれとしては補正予算を活用しながら地域に、中小企業にこの動きが広がっていくことを、これからぜひ実行していきたいと思っています。

別所:ありがとうございます。まだ道半ばというお話をいただきましたが、ここに書かれているものは確かにポジティブなものがそろっています。一方で新聞報道等を見ていますと、賃金は上がったものの、まだ物価上昇には追いついていないという声があります。新聞のアンケートとかを見ると、まだまだ経済政策全般について評価をしている人の割合は少ないのかなという印象もあります。その点を踏まえて大久保議員は、これらの政策についての評価をどのようにお考えですか。

大久保:アベノミクスが2年たちました。私は、実はアベノミクスというのは「クロダノミクス」だと思っています。日銀の金融緩和に尽きると。2本目の財政に関しましては事実上、財政赤字を日銀がファイナンスをするといったことをおこなっております。3本目の矢に関しては、なかなか大変な問題ですから時間がかかる。いま副作用が出てきているのではないかと思うのですね。
例えば日銀の金融緩和による急激な円安。しかし、実は貿易収支は赤字のままなのです。2年前に安倍さんと予算委員会で議論したのですが、安倍さんは「1年後には4兆円のプラス、2年後には貿易収支が8兆円に改善する」と言われました。いま2年たちましたが、マイナス10兆円です。どうしてかといいましたら、やはり円安によって輸出が伸びていない。企業の行動パターンが相当変わってきています。さらには急激な円安により中小企業、家計にとっては極めて厳しい。そういう意味では副作用が相当目立ってきたと思います。
別の言い方をすると、資産インフレを起こしている。ですから株は上がっていますし、また不動産も上がってきています。その周りの人はいいのですが、資産がない人にとっては非常に厳しいと思います。所得も実質賃金はマイナスになっていますし、さらにさまざまな物価の値上げ、こういった点が課題です。
最後になりますが、最大の問題は資産インフレを起こす、つまりバブルを起こしておりますから、将来の経済の成長を先食いしている。いつかバブルは崩壊しますから、そのときに、数年後に大変な状況が起こると、こういったリスクがあります。私は、安倍さんはよくやっている部分もあると思います。やはり3番目の構造改革をしっかりできるか。特に西村副大臣が担当されておりますTPPであったり、場合によっては労働法制等に関しても、しっかりと議論していかないといけないと思っています。

別所:ありがとうございます。鈴木さん、今お二人の評価をご説明いただいたのですが、どのような感想をお持ちでしょうか。

鈴木:西村副大臣は、訪日来客数が非常に増えているという実体経済面で明るさが出てきているということをおっしゃいました。確かにマーケットは非常に大きく期待を持っております。ただ一方で、実体経済という面では賃金・物価、あるいは設備投資、ここはまだだと思うのですね。ですから次の一手として、先ほど地方ということも少しおっしゃいましたが、次の一手というのはいったい何なのかということを、ひとつお尋ねしたいと思います。
それから大久保先生には、民主党政権の当時というのは、当然リーマンショックのあとに政権を引き継がれて、それから東日本大震災もあって、非常に厳しい局面ではございました。当時、「社会保障と税の一体改革」という大きな改革もされましたが、パイを増やすという発想が十分だったかというと、明らかに今のほうが明るさは出てきています。安心を取り戻すということも重要ですが、ではいったい何を第3の矢の中で一番重視すべきなのかということについてお尋ねします。

別所:では、西村副大臣からお願いします。

西村:大久保さん、鈴木さんから、それぞれコメントもいただきましたので、私のほうから何点か申し上げます。1つは日本経済にとって、これは大いにプラスなことなのですけれども、原油価格が非常に下がりました、半分ぐらいになっています。これは日本経済、エネルギーコストが高いと言われている中で非常にプラスになります。特に地方経済にとっては、車に乗る方はガソリンの消費量は非常に多いですから、そういう意味では、まだ景気回復の実感がない地方にとっても、これはプラスに働くということが1点です。
それから2点目は、ようやく企業の輸出が増えてきて、これはアメリカ経済が非常に好調なこともあります。それからアジア向けのスマホの部品も、非常に好調なこともあります。円安の効果が出てきた、Jカーブ効果が出てきたと言えるのかどうかは、まだ分析が必要ですが、輸出が出てきていますので生産も非常に好調になってきました。そういう意味で雇用環境、あるいは企業の収益が引き続き期待できるというところがあります。その関係で言うと、TPP交渉も山場を迎えて最終局面ですので、なんとかこの5月、遅くとも6月にならないぐらいまでにまとめて、日本に立地しても輸出ができるような環境を、ぜひ作っていきたいと思っています。
エネルギーコストの面で言えば、原発の再稼働については安全性を最優先で、規制委員会でしっかりチェックをしてもらうことが大事なのですが、そのうえで、安全性が確認できたものについては、地元の理解も得ながら再稼働していくという方針です。もう少しすると目処が見えてくると思いますので、電力コストも下がることが期待できるということです。
次に実質賃金のお話もありました。確かに、まだ全体としては実質賃金がプラスになっていませんので、これをなんとかプラスにしたい。これはのちほど、また議論があると思いますが、われわれとしては一人ひとりで見るよりは全体としての実質賃金がプラスになることを、ぜひ見ていきたいと思っています。これは春以降、ぜひ期待をしたいと思っています。
5点目に、補正予算を組んで地方に対する景気刺激策を打っています。これは地方が自由に使えるお金ということで、プレミアム商品券のようなかたちで使ってもらったり、あるいはものづくり補助金とか、省エネ補助金というかたちで、設備投資につながるようなものも用意しておりますので、これをぜひうまく使ってもらって、遅れている地方経済の景気回復につなげてほしいと思っています。
最後に、3本の矢のうちの特に第1の矢の金融緩和は、これはわれわれとしても時間稼ぎだと思っています。その間に大久保さんの指摘された、まさに構造改革、3本目の成長戦略をしっかりと示して、それを実行していくことが大事だと思っています。アメリカの例を見ても、金融緩和をやっている間に、新しい企業Googleが出てきたり、Amazonが出てきたり、ドローンという技術が出てきたり、3Dプリンターが出てきたり、あるいはシェール革命も起こった。そういうイノベーションをこの間に起こすような改革が必要です。そういう意味で、3本目の矢の成長戦略、すでに医療改革も進んでいますし、農業改革も方向性を出しました。医療について言えば、再生医療について薬事法を改正して民間企業の力も借りながら、非常に速いスピードで再生医療を実用化していこうという方向性を出しました。今そのために、海外の再生医療をやっている研究機関とか、製薬メーカーなんかが日本企業、あるいは日本の大学と一緒にやりたいという引き合いもきていますので、そういったところにも期待したいと思います。大久保さんのご指摘の雇用改革も、企業に言われるがままに長時間働く労働生産性の低い働き方ではなくて、メリハリをつけて、かつ自分のキャリアを考えた働き方、こういったものをぜひ提案をして、実現をしていきたいです。

別所:ありがとうございます。では、大久保議員お願いします。

大久保:まず民主党において、成長戦略がなかったのではないかという指摘がよくありますけど、それは間違いです。例えば、西村さんから指摘がありましたNISA、もしくは外国人訪問客数が増えている。実は民主党政権で種をまいたと思っています。成長戦略におきまして、環境・観光、そして医療、こういったところに重点的に種をまきました。こういったことは、ぜひ認識してもらいたいと思っています。
私どもは成長も重要です、分配も重要です。いま成長戦略といっても実際、経済は事実上、ほとんど成長していないという状況です。どうしてかといいましたら、個人消費というのが全体の6割あります。ですから、個人がお金を使いたくても使えない。ですから、分配も重要なんです。恐らくは実質賃金が下がっているという状況、また、お金が入ってきたとしても、将来が不安で貯金しないといけないという状況に問題があります。ですから社会保障をしっかりと盤石なものにしていき、どんどん使ってくださいといったことが必要だと思います。このあたりで、国内の経済を良くしていく。若干アプローチは違いますが、経済を成長させていくということにおいては、ほとんど一緒だと思います。
さらに、日本の輸出が伸びるという話がありましたが、当然、為替が80円から120円、50%円安になっていますから伸びないのがおかしいのですが、問題は思った以上に伸びていないということです。日本の企業の構造が全く変わってきています。昔は日本で商品を開発し、そして部品を作って組み立てて、それで製品を販売するという構造でした。いわゆる垂直統合です。ところが家電製品を中心に水平分業がスタートしていますから、研究開発は日本でおこないますが、実際の生産は海外でおこなう。ですから事実上は輸出が伸びないという状況です。こういったことをしっかり考えておかないと、円安にしたのだけど、輸出企業はそれなりに儲かっていますが、それ以上に輸入サイドのほうで相当国民に負担を強いている。ですから経済が成長しない、こういった状況があると思います。このあたりに関しては税制をどうするのか、そういったことも踏まえて、今後議論していきたいと思います。

西村:おっしゃるとおりでして、日本企業は円高が進んだときに汎用品はほとんど海外に移して、日本では付加価値の高いものを作るという構造に、かなりの企業が変えました。したがって付加価値の高い商品を日本で作って輸出していますから、円安になったからといって値段を下げようという行動もあんまりなくて、量もそんなに出ないというのがあります。円安になったからといって輸出数量が急激に増えるという、かつてのJカーブ効果みたいなものは期待できないのではないかということも、われわれは認識しています。ただ景気回復、アジアの一部、あるいはアメリカが非常に景気がいいですから量が増え始めたのも事実ですので、ここはよく見極めたいと思っています。
一方で、数量は増えないけれども、受け取る金額は円安になっていますので、同じ1万ドルを受け取るにしても、かつて80万円だったのが今は120万円になっていますから、輸出企業を中心に企業収益がぐっと膨らんでいます。もちろん、これによって法人税収が増えていますので、それをわれわれは再配分に、地方の対策、所得の低い方への対策に使っていっているわけですが、それでもまだ企業は膨らみがありますから、これを賃上げに使ってほしい。それから、取引のある中小企業との取引価額を引き上げてほしい。中小企業はコストが上がって大変なわけですから引き上げてほしいということを昨年末、これは相当議論をして政労使の場で、経済界も受け入れてくれて、引き上げに取り組むということになっています。これをしっかりフォローして、経済産業省も2万社ぐらい調査をするということで、フォローすることになっています。大企業は賃金上がるけれども、中小企業、地方がまだ賃金が上がらない状況を、こうした取引価格を大企業が引き上げることによって中小企業も賃上げの環境が整っていくように、ここは我々努力をしていきたいと思っています。

大久保:実は為替に関しまして、輸出企業は非常に儲かっている。実際、輸出企業のほとんどは大企業です。実際に、トップ50社でほとんどの輸出を稼いでおります。ですから、そこに相当利益が上がっている。輸入企業といいますのは2つあります。1つは石油元売り。輸入をしますが、一方で価格転嫁をできる大企業。あとは中小の零細企業です。ここが問題なのは、輸入価格が上がっているのですが価格転嫁ができない。ですから、ほとんど利益が上がらないと、こういう状況です。
今アベノミクスで起こっていることは、いわゆる大企業・輸出企業は極めて好調なんですが、多くの中小企業であったり、価格転嫁ができない業種は非常に厳しいと。もちろんここに対して、「大企業はしっかりと中小企業に対して高く物を買いなさい」ということはできますが、これは民・民の取引ですから、国の介入には限界があります。こういった点に関して、しっかりとした経済政策とか産業政策が必要です。

別所:ありがとうございます。今お話しいただいた中にもありましたが、今のところ原油価格が下がって、その恩恵を日本がこうむっている状態だと言えるんですけど、それは日本が努力したことではなくて、たまたま海外的な要因があって下がっている状況です。西村副大臣が最初に「今の金融政策も時間稼ぎだ」とおっしゃっています。輸出の産業の構造が変わっていくのも必要だと思っていますが、それには時間がかかるんだと思います。これはなかなかお答えしにくい質問かもしれませんが、政策的にどのくらいの時間をみて回復をねらっているというのをご説明いただけるとありがたいです。

西村:改革については、例えば国家戦略特区というかたちで規制改革を集中的にやっていこうということで3年間進めております。そういったこととか、これは物価の状況、特に金融緩和は2%の物価目標を目指してやっていますが、これが当初は2年でということでした。2年程度を念頭においてということでしたので必ず2年ということではなく、ちょっと幅があります。しかし、原油価格が下がったことによって物価全体がちょっと今、下がっています。でもこれは悪い物価下落ではないものですから、原油価格の下落にともなう、いわばいい物価下落ですので、無理して2年で2%まで引き上げるということをしなくともいいと思います。したがって、想定したよりも時間をかけて2%というインフレ目標にしていく感じになっています。
われわれとしては、この期間に原油価格が下がったという、まさに神風のようなものもあるので、この期間に企業も収益がぐっと上がって余裕ができている、このときに次へのステップ、これは企業で言えばコーポレート・ガバナンスといわれる、企業内の改革もやってほしいと思いますし、無駄をそぎ落としてほしいと思います。われわれも規制改革を思い切ってやって、次の投資を決めてもらえるような環境をつくっていきたい。法人税を下げるのもそのひとつですし、いろんなことを今、この期間に集中してぜひやっていきたいというふうに思っています。

別所:ありがとうございます。

大久保:例えばアベノミクスで1本目の矢がすごく効いたという話がありますが、限界にきているぶんもあります。つまり日銀としましては、2年前は2年後に2%、それも早いうちにインフレを2%にすると。岩田副総裁は、「そうならなかったら私は辞任します」と、はっきりと国会で言っています。実際、財政金融委員会の議論でも、黒田総裁に関しては相当焦りが見えています。いま何が起こっているかといいましたら、年間80兆円の国債を買っておりますから、いわゆる国債の流通市場がほとんど枯渇している状況です。ですから金融市場から考えたら、もうこれ以上金融緩和できないと、こういう状況に追い込まれています。
経済財政諮問会議で、黒田総裁と安倍総理が不協和音という報道が出てきています。ですからあまり時間がないです。早急に構造改革をしないといけない。ところが構造改革をしようとした場合、自民党のいわゆる支持母体、いわゆるいろんな団体等の既得権益をはいでいくことになりますから、なかなか厳しいものがある。例えばJAの改革であり、あるいはTPPと、このあたりに関しては本当に難しいことをやりますから、私どもはしっかりと見守っていきます。

西村:不協和音があるわけではありませんので、われわれしっかり連携をとりながら、政府と日銀では協定を結んで、それは今のところ変える予定もありません。しっかりとゆるやかなインフレをつくっていくと、経済成長に向けての取り組み、そして財政再建に向けても政府は取り組んでいくということですので、そこはしっかり連携をとりながらやっていきます。