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外国競争法コンプライアンスの重要性について

■外国競争法コンプライアンスに関する公正取引委員会の報告
今年3月27日、公正取引委員会(以下「公取委」という)から外国競争法コンプライアンスの日本企業における取組み状況が公表されました(http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h27/mar/150327_1.html)(以下「報告書」という)。これは、海外展開する日本企業が各国の競争法に対してどのようにコンプライアンスを進めているかを調査したしたもので、この調査結果に加えて外国競争法コンプライアンスの3本柱も取りまとめられています。多くの企業にとってその内容は、ここまで必要なのだろうか?と思われる難易度の高いものだったのではないか、と思われるところがあります。

というのもその内容をみますと、まず1つめに、親会社と海外傘下グループ会社は一体として対応することを求めており、例えば親会社が海外傘下グループ会社におけるコンプライアンスの取組み状況について詳細を承知していないことが憂慮されています。

2つめに、事業活動を行っている『全て』の国・地域の競争法を意識した『広範な対応』を求めています。例えば、米国、EU、中国、韓国と事業展開しているならば、それぞれの国・地域の競争法についてマニュアルを用意し、研修機会を設けることが望まれています。

3つめに、各国の競争法制の特徴を踏まえた柔軟な対応を求めており、例えば日本の有事対応とは異なる外国競争法違反への有事対応のあり方を踏まえたリスク管理が望ましいとされています。

まとめると、日本企業が支社、事業所等の名目を問わず事業拠点が所在している場所、また当該拠点を通してまたは通さずに事業活動を行っている場所に関しても、その全ての国・地域の競争法対策をとるよう示唆されているといえます。
米国、EU、中国といった主要な事業活動拠点の競争法対策を実施することですら、日本企業が費やす人的・物的コストは高いものとなります。いわんや、これが世界各国となれば、ますますハイレベルになります。

■なぜ、ここまで外国競争法コンプライアンスの強化が必要なのか
公取委は報告書の冒頭で日本企業の外国競争法コンプライアンス体制の脆弱性がグローバルに指摘されていることをあげています。
この指摘内容について公取委は特に詳細な説明はしていません。しかし、脆弱性については、実に様々な数字や実情によって示されています。例えば、日本企業は、競争法違反に関し米国司法省に処分された米国外企業の中で、またEU競争当局に処分されたEU外企業の中で最高の割合を占めています。また、米国では反トラスト法違反の場合に個々の従業員も刑事処分の対象となり、現在米国で服役中の日本人は20人を超えています。今後も、米国、EUのみならず各国において日本企業へのターゲティングはますます強化されるといわれています。

■日本人の文化・性質ゆえの難しさ
これではまるで、日本人が自由競争を逸脱するやり方でなりふりかまわないビジネスを展開しているかのようにみえます。しかし、そういうことではなくて、日本企業が競争法における違反行為を犯し易いのは、日本企業や在外日本人コミュニティの習慣や文化によるところが大きいのではないかと一般に考えられています。

というのも、日本企業の多くは、同業他社とも協調的行動に出る傾向があるといわれています。個人でみると、海外在住の日本人は現地で親密に日本人コミュニティを形成し、そのつながりを大事にするため、飲みの付き合い、休日のバーベキューパーティ等仕事以外の場でも仕事に関する情報交換を容易に行ってしまう傾向にあります。そのような場で、例えば同業他社の従業員と価格情報の交換を行えば、その地域の競争法の内容や情報交換態様等によっては違反行為となりえます。

習慣や文化に根ざした言動は、良識のある大人として身についていればいるほど変えがたいものです。なぜなら、そういった言動はごく自然な振る舞いとして身についているため、何かのルールに違反するかもしれないという意識につながりにくいためです。日本企業の競争法に関する摘発や処分を減少させるには、改めて『何をすべきか、してはいけないのか』、教育を通して個々の従業員に具体的に認識させる必要があります。

■大きすぎる代償
このような観点から外国競争法コンプライアンスの重要性については認識できるとしても、やはり費用対効果という観点で二の足を踏んでしまうかもしれません。この点ですが、まず競争法違反に課されるペナルティとしては金銭的支払があげられます。違反行為に対する代償として日本企業に課されてきたペナルティは、韓国、台湾、シンガポールおよびマレーシアといったアジアの競争当局においては数十億をくだらない前例のない高額なものとなっています。実際にペナルティを受けない限り、現実問題として自分達には起こりえないようにも思えますが、前述したように、日本企業は米国やEUにおいて最も高い割合で摘発され処分を受けており、決して油断はできません。

もっとも、金銭的なダメージよりも、もっと深刻なのは、従業員個人が訴追され刑事処分を受けることにあります。罰金であれば企業による援助が可能であるかもしれませんが、禁固刑を受けた場合はもはや企業による救済は及びません。誰かが変わりに服役することはできないのです。服役は、従業員個人の人生にとってもその従業員家族にとってもあまりにも大きな犠牲です。

企業利益のために熱心に業務を遂行してくれた従業員にそのような犠牲を支払わせることのないよう、外国競争法コンプライアンスを徹底することは企業の従業員に対する重要な責務といえるのではないかと考えます。

とはいえ、やはり様々な国・地域の競争法の内容や処分手続き等について網羅的に情報を収集し、外国競争法コンプライアンスのプログラムを策定することは一企業では難しいところがあります。こういう場合こそ、各企業間で外国競争法コンプライアンスのあり方について情報交換を行い協調していくことが必要そうです。

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  • 外国競争法コンプライアンスの重要性について (2015/06/16)