Yahoo! JAPAN 政策企画

世界情報社会サミット(WSIS)+10国連総会ハイレベル会合に出席(後編)

2015年12月15日から16日にかけて、アメリカ・ニューヨークの国連総会において、世界情報社会サミット(WSIS)成果の実施に関する全体総括レビュー・ハイレベル会合が開催されました。また、14日からはサイドイベントも並行して開催されました。後編では、Yahoo! JAPANが参加したサイドイベントをご紹介します。

1.各サイドイベントの議論内容
12月14日から16日にかけて、WSIS+10国連総会ハイレベル会合との関連でさまざまなサイドイベントも開催されました。その中で、Yahoo! JAPANが参加したものを以下にご紹介します。特に、最近ホットイシューとなっているテロリストによるソーシャル・メディア(SNS)や暗号化メッセージ・アプリの利用に関するシンポジウムも開催され、米国連邦捜査局(FBI)や国連の「表現の自由に関する特別報告者」らによる活発な議論が行われました(議論の様子は(3)で紹介します)。

(国連本部ビル内からの景色)

(1)IGF: Internet Governance Empowering Sustainable Development
ブラジル政府とインターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)共催で、IGFの誕生やこれまでの活動、今年ブラジルのジョアンペソアで開催されたIGFの報告、IGFの役割や今後の展望について、パネル・ディスカッションが行われました。今後の課題としては、IGFへの途上国からの更なる参加、IGFの財源、IGFアドバイザーグループ(MAG)やIGF事務局の強化が挙げられました。また、現在年1回開催されている国際的なIGFを年2回にする提案や、地域IGFや各国IGFとの連携強化、IGFが今後各国間で議論が継続される「協力強化(enhanced cooperation)」の問題にいかに関わっていくべきか等についても議論されました。なお、来年の国際的なIGFの開催地としてメキシコが立候補したことに言及がありました。

IGF(英語): http://www.intgovforum.org/cms/

(2)Presentation of GIP Digital Watch: A practical tool for navigating the complex field of digital policy
非営利組織であるDiploFoundation、Geneva Internet Platform、Internet Societyの共催で、Geneva Internet Platformの活動やそのウェブサイトの説明が行われました。Geneva Internet Platformは、スイス政府のイニシアチブでDiploFoundationによって運営されているものです。インターネット・ガバナンスに関する最新情報やイベントスケジュールの管理を行うのみならず、ニュースレターの発行やイベントの開催等も行っていることが紹介されました。質疑応答の時間には、データ・マイニングの重要性、ウェブサイトの多言語化、各地域との連携や欧州連合(EU)との関係等について話し合いが行われました。

Geneva Internet Platform(英語): http://giplatform.org/ 

(3)Preventing Terrorists from Exploiting the Internet and Social Media to Recruit Terrorists and Incite Terrorist Acts, While Respecting Human Rights and Fundamental Freedoms
厳密にはWSISのプロセスとは別個の枠組みですが、国連加盟国のテロ対策を監視するために安全保障理事会の下に設立されたテロ対策委員会事務局(CTED)もこの時期に関連テーマでイベントを開催していましたので、その一部に参加してきました。
※Yahoo! JAPANが参加した技術会合(Technical Meeting)のアジェンダはこちらをご確認ください。

(テロ対策委員会事務局(CTED)主催イベントの様子)

まずセッションⅠでは、インターネットやソーシャル・メディア(SNS)がテロ目的で使用されることによってもたらされている脅威についてパネル・ディスカッションが行われました。こうしたテーマが選ばれた背景には、SNSがテロリストの考えを広範に伝播させたり、人々を過激な思想に誘引したり、テロリストの「採用」に利用されていることへの問題意識があります。米国連邦捜査局(FBI)管理官からは、テロリストによるSNSの利用に関し、ヨーロッパや米国、アジア等、地域によってテロリストによるコミュニケーションの仕方が異なりうるため、それに応じた国家間の協力が重要であること、また民間セクターのレベルでも国境を越えた協力が必要である旨の発言がありました。ロシア連邦検察庁(Office of the Prosecutor General, Russia)の上席検察官からは、ロシアにおけるウェブサイトのブロッキングを含む最新状況について話があり、ロシアではテロ支援につながりうるようなウェブサイトのブロッキングを実施していることや、情報源が国外にあることも多いため国家間の情報交換の協力が重要である旨の発言がありました。安保理決議1267委員会監視チーム(Monitoring Team, 1267 Committee)の専門家からは、インターネットやSNSは、本来国境のないものであり、世界中の人々と手軽にコミュニケーションをとり情報収集を行うことができる費用対効果の高いものであるがゆえに、過激派組織IS「イスラミックステート」をはじめとするテロリストが、プロパガンダや資金集め、爆発物の製造や戦闘員の募集のために頻繁に利用している現実があること等の発言がありました。フランス地政学研究所(French Institute of Geopolitics)の教授からは、テロリストによるインターネットやSNSを通じた活動は発見するのが難しいことや、ある国の規制当局が他国のプラットフォームを規制する権限を有しないこと等に触れつつ、国際的なテロ対策への取り組みやその一貫性が必要であるが、プラットフォームやサイトのオペレーターのような民間セクターの協力なくして十分なテロ対策は行えないこと、プロパガンダそのものに対する対策も必要であることにつき発言がありました。

次にセッションⅡでは、デジタル時代におけるプライバシーと表現の自由についてパネル・ディスカッションが行われました。パリの首席検事(Chief Prosecutor)からは、フランス・パリでの同時テロ事件の際に暗号化メッセージ・アプリが使われた可能性が出てきていることに触れつつ、グローバルなテロに対しては国際協力が必要不可欠であることや、バランスのとれた解決を検討する場として国連が望ましいこと、各国の電子的コミュニケーションに関する法律をハーモナイズする必要性が語られました。国連の「表現の自由に関する特別報告者」(Special Rapporteur on the promotion and protection of the right to freedom of opinion and expression)からは、テロとの戦いも重要であるが、インターネットが有する広範な価値をどう守っていくかも重要であるとしつつ、インターネット、データ、法的枠組み、検閲の4つの論点につき説明がありました。その上で、暗号化アプリの問題にも触れつつ、テロ対策にはさまざまなステークホルダーの参加が必要であり、また何らかの対テロ措置をとる場合には、人権やインターネットの重要性も踏まえた、均衡のとれたアプローチ(proportional approach)が重要であるとの発言がありました。カナダ検察庁(Public Prosecution Service)のジェネラル・カウンセルからは、カナダにおける電子媒体の捜査やテロの扇動(incitement to terrorism)に関する最新動向について説明があり、電子デバイスの捜査や捜査におけるインターネットの使用についても人権への配慮が必要となることや、証拠の収集に関する国際協力の必要性等につき話がありました。この他、グローバル・ネットワーク・イニシアチブ(Global Network Initiative)のパネリストからは官民協力やプライバシー強化の重要性について話があり、民主主義および技術センター(Center for Democracy and Technology)のパネリストからは、表現の自由とテロの扇動に関して言えば、例えばどのような言論内容が規制されるのかに関する明確な定義が必要であり、またその削除プロセスについても検討する必要があり、現在も議論が続いている旨の話がありました。

なお、Yahoo! JAPANは全体会合との関係で参加できませんでしたが、この後セッションⅢでは、過激主義の広がりやそうしたメッセージングに対し、情報通信技術(ICTs)をどのように利用していけるのかについてパネル・ディスカッションが行われました。また、セッションⅣでは、安全なICT環境を確保するための民間セクターの役割や官民協力についてパネル・ディスカッションが行われました。

2.共同議長主催レセプション
なお、12月15日の夜には、共同議長(アラブ首長国連邦(UAE)およびラトビア)主催のレセプションが開催されました。そこでは、今回の参加者である各国政府や国際機関の職員、民間セクターやアカデミア、市民社会の人々が談笑していました。国際会議においてレセプションが開催されることは多く、さまざまな参加者と自由にコミュニケーションをとれることから、非公式な意見・情報交換の場として非常に重要です。レセプションでの交流がその後の友好的協力関係につながっていくことは珍しいことではありません。

3. 会合を終えて
世界中の誰もが自由に参加できる、グローバルで共通な環境こそがインターネットの価値であり、国境を越えた表現活動や経済活動をより活発化することのできるツールです。その一方で、インターネットにアクセスできない人が世界中に約40億人存在し、国家や地域、性別間の情報格差が存在することや、サイバー空間における人権やセキュリティーの問題があることも事実です。インターネット・ガバナンスとは、まさにそうした問題に対して、マルチステークホルダーが一致団結してルール・メイキングに取り組み、より多くの人々の豊かな生活に資する公平・公正かつ断片化されていない(unfragmented)インターネット社会を構築していくことではないでしょうか。インターネット・ガバナンスに関する議論は今後も続いていきますので、Yahoo! JAPANも、インターネットの本質的価値を守るべくルール・メイキングに積極的に参画していきます。

(ロックフェラーセンター前のクリスマスツリー)