Yahoo! JAPAN 政策企画

消費者契約法専門調査会報告書において法改正すべきとされた論点について(前編、取消し関係)

2016年1月7日に消費者委員会が「消費者契約法の規律の在り方についての答申」を行いました。
この答申は、契約締結過程と契約条項の内容に係る規律等のあり方について審議するために2014年10月に消費者委員会に設置された消費者契約法専門調査会における審議の結果をまとめた「消費者契約法専門調査会報告書」に基づくものです。

以下、報告書の項目に沿って報告書において速やかに法改正を行うべき論点とされた項目の具体的内容をご紹介します。詳細は報告書をご参考ください。
なお、専門調査会において意見の対立が大きかった勧誘と広告の関係や不利益事実の不告知等については、今回の報告書においては速やかに法改正を行うべき論点とはされず、引き続き検討されることになりました。

1.「重要事項」(法第4条第4項)
消費者契約法で定められている不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知の3つの誤認類型のうち、不実告知に限り、重要事項に「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」を追加することとされています。
これまで、取消しの対象となる重要事項は商品等の内容や対価等の取引条件に限定されており、その契約がなぜ必要なのかという目的の前提となる客観的な事実は重要事項ではありませんでした。
たとえば、客観的な事実に反して、「タイヤの溝がすり減っていてこのまま走ると危ない」と言われ勧められるままにタイヤを交換したようなケースや「床下が湿っておりこのままでは家が危ない」と言われ床下の換気扇を購入・設置したようなケースでは、消費者契約法上意思表示を取り消すことができませんでした(民法の詐欺等とはまた別の問題です)。
タイヤや換気扇という商品の性能について、事業者が事実に反することを消費者に告げ、消費者が誤認したような場合には消費者は意思表示を取り消すことができますが、事業者がタイヤや換気扇がなぜ必要なのかということについて客観的な事実に反することを消費者に告げ、消費者が誤認したとしても、消費者契約法上消費者は意思表示を取り消すことができませんでした。
このようなケースに対応できるようにするため、不実告知に限り「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」を重要事項に追加すべきとされました。
なお、報告書では明記されていませんが、「安くてお買い得である」、「人気のある売れ筋の商品である」といったことは、それが客観的な事実に反していたとしても、その契約がなぜ必要なのかという目的の前提となる客観的な事実ではなく「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」には該当しないとされています。

2.合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型
認知症等により判断力が不十分な消費者がつけ込まれ、不必要な商品を大量に売りつけられたような契約を取り消すことができるようにすることとされています。
「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」には様々なケースが考えられますが、今回は、過量契約(通常必要な量を超える契約)であること、および消費者に当該過量契約の締結を必要とする特別の事情がないことを事業者が知りながら消費者に勧誘することを要件とすべきとされました。
そのため、消費者が何のために商品を大量に購入するのかを事業者が認識していない場合(過量契約の締結を必要とする特別の事情がないことを事業者が知らない場合)や事業者が勧誘することなく消費者がレジに同種の商品を大量に持参したような場合(事業者が消費者に勧誘していない場合)には、この規定は適用されません。

3.取消権の行使期間(法第7条第1項)
現在の消費者契約法では、取消権の行使期間のうち、追認をすることができる時からの期間は6か月とされています。
しかし、アンケートに回答した消費生活相談員の約35%が消費者から相談を受けた時点で「騙されて契約していたことに気づいたときから6か月以上経っていた」相談を受けた経験があるというアンケート結果もあるようです。
そのようなことから、追認をすることができる時からの期間が1年間に伸長すべきとされています。

4.不当勧誘行為に基づく意思表示の取消しの効果
現在の民法では、消費者契約法に基づき消費者の意思表示が取り消された場合、消費者は現存利益の範囲で事業者に返せばよく、既に使ってしまった分の価値については事業者に返す必要がないと考えられています。
いっぽうで、現在国会に上程されている新民法では、原則として原状回復義務を負うことになり、既に使ってしまった分の価値も事業者に返す義務を負うこととされています。
しかし、それでは消費者契約法に基づいて消費者が意思表示を取り消す意味がなくなってしまうということから、現在と同様の運用に戻すために、消費者契約法に基づき消費者の意思表示が取り消された場合、取消権を行使したときまでに消費者が商品を使ってしまっていたとしても、消費者が給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、消費者は現存利益の範囲で事業者に返せばよく、既に使ってしまった分の価値については事業者に返さなくてもよいこととすべきとされています。
なお、この規定は、新民法の施行と同時に施行されるべきとされています。

意思表示の取り消しに関係する項目は以上です。
次回は、不当条項についてご紹介します。

カテゴリー「債権法・消費者法」の記事