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消費者契約法専門調査会報告書において法改正すべきとされた論点について(後編、不当条項関係)

前回は、「消費者契約法専門調査会報告書」において速やかに法改正を行うべきとされた項目のうち意思表示の取り消しに関係する項目をご紹介しましたが、今回は不当条項についてご紹介します。
報告書に沿って記載していますので、各項目の詳細は報告書をご参考ください。

5.事業者の損害賠償責任を免除する条項(法第8条第1項)
現在の消費者契約法では、「事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する『民法の規定による』責任」を免除する条項の有効性について規律されています。
しかし、法人の代表者による不法行為責任のように、民法以外にも事業者の損害賠償責任を規定する法律があります。
そこで、「民法の規定による」の文言を削除して、民法以外の法律を根拠にする事業者の損害賠償責任を免除する契約条項も対象とすべきとされています。

6.不当条項の類型の追加/消費者の利益を一方的に害する条項(法第10条)
①債務不履行、瑕疵担保責任の規定に基づく解除権等をあらかじめ放棄させる条項
債務不履行の規定に基づく解除権、瑕疵担保責任の規定に基づく解除権をあらかじめ放棄させる契約条項を例外なく無効とすべきとされています。
たとえば、「事業者の責任で消費者に債務を履行できなかったとしても消費者は一切契約を解除できません」といった趣旨の契約条項が無効になります。
これまで、不当条項として損害賠償の免除についての規定はありましたが、解除権の放棄について無効とする規定はありませんでしたが、その規定を追加すべきとされています。
なお、ある契約条項が無効となるからといって反対の権利が発生するわけではありません。
たとえば、「セール品につき返品お断り」との契約条項が、商品に不具合があり債務不履行や瑕疵があったとしても一切責任を負わないという趣旨であればその契約条件は無効となります。この場合、「セール品につき返品お断り」という契約条件が無効となることによって、一見、消費者の個人的な都合による返品が認められることになるようにも思われますが、当該契約条項が無効となった場合でも民法等の民事法が適用されることに変わりはなく、通常の売買契約については、消費者の個人的な都合による返品を認める規定は存在しないため、消費者の個人的な都合による返品が認められるということにはなりません。
また、損害賠償の免除については、事業者が不具合を修理することにしているなど一定の手当てをしている場合には、無効とならないという規定があります(消費者契約法第8条第2項)。消費者契約法専門調査会等では、これと同様の規定を解除権の放棄についても規定すべきではないかということが議論されましたが、損害賠償と異なり、解除の場合にはそのような一定の手当てがされた場合にはそもそも解除権が発生しないということで同様の規定は不要であるということになりました。

②消費者の不作為をもって新たな契約の申込み・承諾の意思表示をしたものとみなす条項
現在の消費者契約法第10条の前段には「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」という記載がありますが、「消費者の不作為をもって新たな契約の申込み・承諾の意思表示をしたものとみなす条項」が「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」に該当することが不明確であるということから、「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」の例示として、「消費者の不作為をもって新たな契約の申込み・承諾の意思表示をしたものとみなす条項」を記載すべきとされました。この契約条項が無効になった場合には、新たな契約に関する申込み・承諾の意思表示が存在しないことになり、当該契約は締結されていないことになります。
「消費者の不作為をもって新たな契約の申込み・承諾の意思表示をしたものとみなす条項」のようなものが「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」に該当することは、既に消費者庁の逐条解説でも説明されていますが、今回の改正は、そのことを法律の文言上明確にする趣旨であり、現行法からの解釈適用に変更はないといわれています。その意味で、無効であることを推定するいわゆるグレーリストとは異なります。
想定しているケースとしては、たとえば、「通信販売での掃除機の売買契約において、商品の掃除機が届けられた際に健康食品が同封されており、継続購入が不要である旨の電話をしない限り当該健康食品を継続的に購入する旨の条項が含まれていた。」 の「電話をしない限り健康食品を継続的に購入する旨の条項」のようなものが消費者契約法第10条により無効となる可能性があることを明確にするということです。契約期間が満了する際に事前に通知をしない限り契約が更新されるといういわゆる自動更新条項は、更新後に新たな契約を成立させるものと解釈され、この規定に該当するといわれています。一方で、報告書では必ずしも明記されていませんが、1つの契約が継続するような場合には、この規定は適用されないといわれています。たとえば、「2016年1月31日まで無料。無料期間が終了すると月額●●円が発生します。」というような契約において、無料から有料への移行が1つの契約の中で構成されている場合、有料になるのを避けるためには無料期間内に解約をしなければなりませんが、その解約をしなかったことをもって「新たな契約の申込み・承諾の意思表示をした」とはいえないといわれています。自動更新のように所定の期間が経過した後に別の契約が新たに開始されるのではなく、期間の定めのない契約として1つの契約が継続する場合も同様にこの規定の適用はないといわれています。
また、消費者契約法第10条はその後段により、最終的には民法第1条第2項の信義則に反するかどうかで総合的に判断されることになり、商慣習や取引の態様、事業者が消費者にわかりやすく表示・説明をしていたかといったことなどもその判断基準となるといわれています。

最後に
消費者契約法専門調査会報告書」において必ずしも明確に記載されなかった点についてもこれまでの議論の状況等を踏まえて補足しご紹介させていただきました。
今後の国会の審議等において、引き続き慎重な検討が行われ、改正の趣旨や適用範囲がより明確にされることを期待しています。

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