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Yahoo! JAPANの組織再編に関する課税処分についての最高裁判決(最判平成28年2月29日(平成27年(行ヒ)第75号))に寄せて

Yahoo! JAPANの組織再編に係る税務処理について2010年6月29日に麻布税務署長により行われた更正処分の取消しを求め、5年半にわたりYahoo! JAPANが行ってきた一連の争訟が終了しました。大変残念なことに、Yahoo! JAPANの主張が認められないという結果となりました。

今回の裁判で問題となった組織再編税制に係る法人税法の条項については、確たる解釈や先例がないこともあり、本件の争点は多岐にわたりました。Yahoo! JAPANが一貫して主張してきたのは、税制は透明性を持つべきであり、その解釈適用は予測可能性を備えるべきである、ということです。

税法は、憲法上も保護された財産権に対して制約を課す法規であるとともに、その適用の在り方は人々の行動に大きな影響を与えます。したがって、その解釈適用については、極めて高い予測可能性が要求されます。しかしながら、今回の判断は、そのような要請に応えるものとは言えません。

たとえば、今回の一連の裁判においては、第一審、第二審ともに、Yahoo! JAPANの行った税務処理が、「組織再編税制の趣旨・目的」に合致しておらず、不当なものであるという税務署の結論自体は追認しています。しかし、「組織再編税制の趣旨・目的」がどのようなものであるかという点や、どういう要素をもとに「組織再編税制の趣旨・目的」にかなったものであるかどうかを判断するのかという点についての判断は一致していません。また、「組織再編税制の趣旨・目的」に合致していないという理由の根拠とされた法人税法の条項も、「組織再編税制の趣旨・目的」に合致していない場合には不当な税務処理であると判断されるということも、処分が行われた時には示されておらず、裁判手続きのなかでようやく明らかになったものです。つまり、今回示された理由により、税務署長がYahoo! JAPANの行った税務処理を認めないという判断ができるということは、裁判になって初めて知らされたものです。企業は自らの活動を選択する際に、事業の拡大・推進や効率化といったビジネス視点で合理的であることを優先させるのが当然であり、税務的な評価のみを優先させた行動は、ほとんどの場合合理的なビジネスジャッジメントにはならないと考えています。しかしながら国の主張の背景には、企業行動の選択は税務的なメリットを享受することを優先させているに違いないというような思い込みが透けて見えるように思います。その思い込みを前提として更正処分が行われ、法律の専門家である裁判官に後付けで条文解釈をさせて理由付けできるのであれば、企業がその解釈を事前に理解し、予測することは不可能です。

本件は非常に大きな注目を集め、地裁判決(東京地判平成26年3月18日(平成23年(行ウ)第228号))および高裁判決(東京高判平成26年11月5日(平成26年(行コ)第157号))に対しては、既に多数の評釈が刊行されています。こうした評釈において、学界・実務界から判決を支持する声は少なく、積極的に肯定しているのはごく一部に限られているということも、今回の判断が実務における実態や実感から乖離しているという問題の本質を端的に表しています。

現政権のもとで、法人税の実効税率を低減することについて議論されています。他国と比して国際競争力のある実効税率を備えることは、国内の事業者の競争力を高めるとともに、わが国への投資を拡大し得るものであり、国際的な水準にできるだけ早急に合わせていくことは必須だと考えています。もっとも、制度は、仕組みの構築と実際の運用の両輪により成り立つものです。法人税の実効税率を下げたとしても、M&Aという重要な企業活動に影響を及ぼす組織再編税制などの運用が恣意的で予測可能性が低いものである限り、国際的な競争力の強化にはつながり得ません。
いうまでもなく、税制は国家の基礎を支える制度です。そして、その税制の重要性を踏まえ、Yahoo! JAPANは、法律に従った正しい税務処理を心がけこの10年間でも総額で約3700億円にのぼる法人税を納めてきています。また、あるべき税制の姿を求め、海外から配信される電子コンテンツについて国内消費税が適切に課されるように消費税法を改正するための働きかけも行ってきました。その視点からは、恣意的な行政判断を追認する司法府の最終判断を極めて遺憾に思います。
これからも、Yahoo! JAPANは、納税という企業の社会的責務を果たすとともに、あるべき税制の姿を希求し日本の課題解決に貢献し続けます。

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