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米国におけるシェアリングエコノミー事情

4月9日から15日にかけて、米国フロリダ州タンパでISO/IEC JTC1(情報技術)SC27(セキュリティー技術)WG5(アイデンティティ管理とプライバシー技術)の国際会議が開催され、Yahoo! JAPANからも参加しました。この会議では新たにOECDがリエゾンとなり、日本からも初めて個人情報保護委員会が参加するなど、世界各国の専門家や規制当局が集って本人確認やプライバシー影響評価、匿名化技法などの標準化へ向けた検討が活発に行われました。しかしながら今回は、会議の報告ではなく、会議のかたわら実体験することができた米国におけるシェアリングエコノミー事情についてご紹介します。

今回のような標準化の国際会議は、持ち回りで参加各国がホストし、世界各地で開催されます。本会合が行われたフロリダ州タンパも温暖な気候で、リタイア後に居を構える米国人が多く、人口が流入していることで知られます。連日会議場に缶詰となる参加者の気分転換を狙った配慮ではあるのですが、国際会議場に近いホテルは家族で長期滞在するためのスイートルームが多く高額です。いい機会だったので本場アメリカでUberやAirbnbといったシェアリングエコノミーを出張に使えるかどうか試してみることにしました。

3月下旬に調べてみると会場近くのホテルが軒並み300ドル以上、100ドル台で探すと空港近くのホテルしかありません。しかしAirbnbなら徒歩圏内で数十ドルから宿がいくつもあります。最初に会場から徒歩10分ほどの宿を予約したところすぐに予約できたのですが、送られてきた住所をあらためて調べたら、会場から車で30分はかかる遠い場所でした。早速キャンセルしたところ仲介手数料を取られたのでサポートに連絡したら、ホスト側の登録ミスということで数日で返金されました。それから徒歩20分ほどで1泊130ドルの宿を申し込んだものの24時間待っても返事がなく、キャンセルされてしまいました。不安になりながら徒歩30分ちょっとで1泊58ドルの宿に申し込んだところ、今度は「どんな国際会議に参加するのか」「Airbnbでの宿泊は初めてか」といった質問をいただき、英語で答えたところ、すんなりと予約できました。


(宿泊した一軒家)

到着当日、空港からホストの家へはUber Xを呼びました。空港でUberアプリを立ち上げると、ロビーと航空会社を指定するだけでUber Xを呼ぶことができます。日本で使っているのと同じアプリで、日本語UIで呼び出すことができます。通常米国でタクシーを呼ぶ場合、まず電話番号を調べて慣れない英語で乗車場所や目的地を伝えますが、それに比べてずっと簡単です。ただ空港の到着ロビーに辿り着くまでに間違えやすい場所があるらしく、最初の2回は同じ運転手が呼び出しに応じたものの、ピックアップ場所に辿り着かずキャンセルされてしまいました。3回目の呼び出しでやっと別の運転手に繋がり、乗せてもらうまでに30分ほどかかってしまいました。タクシーを電話で呼んでも20分はかかるので、仕方ない気もするのですが、ちょっと残念な結果です。

ホストの家は3ベッドルームの立派な一軒家に素敵な絵がいくつも飾られていて、中年女性がひとりで住んでいました。以前は子供部屋だったようなベッドルームに案内してもらい、家の鍵と印刷されたハウスルールを渡されました。このハウスルールには無線LANの設定方法、ホームセキュリティーの使い方などが書かれています。キッチンや洗濯機、浄水器が使えるところはホテルよりも便利です。国際会議場まで1.8マイルほどあるのですが、Uberを使えば5ドルで5分、整備されたばかりのRiverWalk沿いを歩いても40分ほどで着くので、朝は散歩がてら川沿いを歩いて会議場に行き、夜、暗くなってからはUberで帰るようにしました。他の参加者に話を聞いたところ、高い宿泊費を払って会場近くのホテルに泊まるか、バスで治安の悪いエリアのホテルへ行っても百数十ドルはしたようで、徒歩圏内で1泊58ドルの宿は羨ましがられました。ホテルよりはホストに気を使うものの、住宅地の様子や現地の方々の息吹を感じることができ、国際会議場とホテルとの往復よりもずっとタンパでの生活を堪能できました。


(ベッドルーム)

Uberも日本で報道を見ていると白タクアプリという認識しかなかったのですが、米国で実際に使ってみるとタクシーよりずっと便利で運賃は半額以下、車も綺麗だし、運転手の愛想もいいです。話を聞いたところ、タクシーだと決められた車に乗って1度に20時間くらい働くのでプライベートが犠牲になるが、Uberなら自分の気に入った車に乗って1日8〜10時間くらい働き、客とも顔の見える関係を構築できて、収入は同程度でもずっと人間的な暮らしができるようになったそうです。ソーシャルイベントの後、私たちはUberを呼んで数分でピックアップできたのですが、別のグループはレストランでタクシーを呼んでもらい、実際にくるまで1時間くらい待たされたと聞きます。


(ナビ代わりのスマホだけで営業。タクシーのようなメーターはない)

こうして実際に使ってみてAirbnbやUberといったシェアリングエコノミーが本場アメリカでは社会に根付き、これまでよりも高品質のサービスを低価格で提供されていることを実感しました。従来ある枠組みにそのまま当てはめようとすると課題は多いのですが、もともと業法が担保してきた公衆衛生、輸送の安全確保や利用者の利益の保護をはじめとした法益まで遡れば、規制だけでなく技術革新を通じて解決できるのではないでしょうか。それは利用者から見てサービスの選択肢を増やすだけでなく、多様な社会参加の機会を提供し、柔軟な働き方を実現していく上でも役立つはずです。
(MK)

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