Yahoo! JAPAN 政策企画

世界情報社会サミット(WSIS)フォーラム2016に出席(後編)

2016年5月2日から6日にかけて、スイス・ジュネーブの国際電気通信連合(ITU)本部およびジュネーブ国際会議センター(CICG)において、世界情報社会サミット(World Summit on the Information Society : WSIS)フォーラム2016が開催されました。後編では、Yahoo! JAPANが参加したその他の会合やセッション、ワークショップやネットワーキング・イベントのいくつかをご紹介します。


(国際電気通信連合(ITU))

1. 各種会合等の議論内容
5月2日から6日にかけて、さまざまな会合やセッション、ワークショップが開催されました。5月3日から4日にかけては、14のテーマに関する16のハイレベル・ポリシー・セッションも開催されました。今回のフォーラムの全体的なテーマは「WSISアクション・ライン:持続可能な開発目標(SDGs)の実施を支援(WSIS Action Lines: Supporting the Implementation of SDGs)」でしたので、そのような視点からさまざまな議論が行われました。

・WSISフォーラム2016のアジェンダ:https://www.itu.int/net4/wsis/forum/2016/Agenda/ 

なお、WSISフォーラム2016終了後、そのホームページに掲載された「成果(Outcomes)」によりますと、フォーラム期間中、150カ国以上から実に1,800人を超える利害関係者が参加し、150を超えるセッション(会合やワークショップを含む)が開催されたとの事でした。

(1) ワークショップ
・Engaging Digital Actors, Fostering Effective Digital Policy and Monitoring Digital Governance

5月2日、2002年11月にスイス政府とマルタ政府によって設立された非営利組織であるDiploFoundationが運営しているイニシアティブ、Geneva Internet Platform (GIP)の活動とその役割を中心に、どのようにインターネット・ガバナンスの議論を進めていくべきかにつき話し合いが行われました。パネリストからは、インターネット・ガバナンスに関する国際的な議論も重要であるが、国や地域によって解決すべき問題が異なる上、その解決策についても各国や各地域の多種多様な実情を踏まえて議論を行う必要があり、フリーサイズ(one-size-fits-all)の解決策はないといった意見や、国や地域によって異なる問題を議論するためにも、さまざまな利害関係者が関与するマルチステークホルダー・アプローチが重要であることは理解しつつ、いかにしてローカル・レベルの人々の意見をくみ取るか、ローカル・レベルのインターネット・ガバナンスを強化することが今後の課題となってくるといった意見がありました。また、国際的なインターネット・ガバナンスへの参加者(生態系(ecosystem))についても意見交換が行われ、国や地域、産業等、各利害関係者間の意見交換がまだ十分にできていないといった意見や、国際的なビジネス・コミュニティによるインターネット・ガバナンスへの参加をさらに強化する必要があるといった意見もありました。その他、GIPがいかにして中立的な情報提供を行っているかや、ヨーロッパのインターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)では特定の問題に焦点を当てており、例を挙げればプライバシーに関する質の高い議論が行われている等の話がありました。


(ワークショップの様子 *ITU Pictures(Flickr)から引用(©ITU/D. Woldu))

・Establish an Inclusive, Shared and Open Information Environment, Ensure All Enjoy Information Civilization
5月5日、中国インターネット協会(Internet Society of China)主催にて、オープンかつ包摂的な情報社会を達成するための一環として、障がい者によるインターネットの利用を推進するために各国がどのような取り組みを行っているかについて紹介がありました。冒頭、国連教育科学文化機関(UNESCO)のIndrajit Banerjee氏から、世界には約10億人の障がい者が存在することを踏まえ、さまざまな利害関係者が参加する国際会議等、ユニバーサル・アクセスのためにUNESCOが取り組んでいる活動について紹介がありました。その後、他のパネリストから、中国、香港、オーストラリアにおける障がい者のインターネット・アクセシビリティーの改善に向けた取り組みについて説明がありました。中国のパネリストからは、政府の取り組みの推移と現状について紹介があり、香港のパネリストからは非政府組織(NGO)の役割について説明がありました。オーストラリアのパネリストからは、情報通信技術(ICTs)は障がい者のインターネット・アクセシビリティーのみならず、より広く社会問題の解決や新たな機会につながるとし、主にオーストラリア政府の取り組みについて紹介がありました。中国の企業もパネリストとして参加し、ウェブサイトのアクセシビリティー向上のための技術について説明がありました。


(ワークショップの様子 *ITU Pictures(Flickr)から引用(©ITU/I.Wood))

・Action Line C5 (Building Confidence and Security in the Use of ICTs) - National Cybersecurity Strategies for Sustainable Development
5月5日、Intellium社のAndrea Rigoni氏がモデレーターとなり、サイバー・セキュリティに関する議論が行われました。冒頭、国際電気通信連合(ITU)のHoulin Zhao事務総局長から、サイバー・セキュリティの問題は、もはや技術者のみで議論するだけでは不十分であり、さまざまな利害関係者が一丸となって議論を行っていく必要があること、また、持続可能な開発目標(SDGs)との関係で言えば、開発途上国ではモバイル・ネットワーク接続が広く普及しており、結果としてサイバー・セキュリティはインフラのみならず、経済を含む全てのシステムを守ることにつながるため、非常に重要であるといったような発言がありました。その後、それぞれのパネリストからプレゼンテーションが行われ、インターネット空間における信頼(Trust)が一義的に重要であるが、サイバー・セキュリティに対する政府の姿勢に依然として問題があるといった意見や、政府はサイバー攻撃が自国の国内総生産(GDP)に重大な影響を及ぼすことを考慮に入れた上で、国家戦略としてサイバー・セキュリティの問題に取り組んでいく必要があるといった意見がありました。また、国家安全保障とプライバシーの関係については、政府はしばしばセキュリティのバックドア(裏口)を要求するが、それはかえってセキュリティの脆弱性を高める結果となってしまうといった発言がありました。その他、最適なサイバー・セキュリティ戦略を立案するためには、国によってどこに脆弱性やリスクがあるかが異なることを踏まえた上で、リスク分析、インシデントを取り扱うチーム、そして国際および国内の協力(さまざまな利害関係者間の緊密な協力)が必要であるといった発言がありました。


(ワークショップの様子)

・Global Connect Initiative
5月5日、米国国務省のDavid W. Renz氏から、2020年までに新たに15億人がインターネットを利用できるようにすることを目指す「Global Connect Initiative」という米国政府のイニシアティブについて説明がありました。Renz氏からは、現在もなお世界の約60%の人々がインターネットを利用していないこと、インターネット接続が可能となることによって開発途上国が享受しうる経済社会的効果に言及した上で、同イニシアティブの主要な目標や接続原則(Connectivity Principles)、今後のスケジュール感等について話がありました。


(ワークショップの様子)

・Action Line C7 (E-environment) - Early Warning Systems for Disaster Risk Reduction
5月6日、世界気象機関(WMO)、国際電気通信連合(ITU)、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)の共催で、防災のための早期警報システムに関するワークショップが開催されました。そこでは、災害が起こる前の対策が非常に重要であることを念頭に、情報通信技術(ICTs)がその実施に際し果たしうる役割について、各パネリストから説明がありました。UNISDRのJohn Harding 氏からは、2015年3月の第3回国連防災世界会議において採択された仙台防災枠組2015-2030に言及しつつ、自然災害による犠牲者数は減少傾向にあるものの、後発開発途上国(LDCs)や小島嶼開発途上国(SIDS) では増加傾向にあること等が述べられました。WMOのAlasdair Hainsworth氏からは、気象サービスが莫大な量のデータを生み出す一方で、そのデータの記憶容量と処理に課題があること、いずれにしても適時に警報を出すためにもコミュニティとして取り組んでいく必要があるといった話がありました。


(ワークショップの様子 *ITU Pictures(Flickr)から引用(©ITU/D.Woldu))

(2)ハイレベル・ポリシー・セッション(WSIS Forum 2016 Official Opening Ceremony, Moderated High-Level Policy Sessions, High-Level Policy Statements: Concluding Session)
5月3日から4日にかけて、14のテーマに関する16のハイレベル・ポリシー・セッションが開催されました。

まず、5月3日にはOpening Ceremonyが開催されました。国連の潘基文事務総長のビデオ・メッセージおよび国際電気通信連合(ITU)のHoulin Zhao事務総局長のステートメントから始まり、国連専門機関の長やその他国連関係者、WSISフォーラム2016のパートナーを務める国や組織等からステートメントが行われました。また、Yahoo! JAPANがプレゼンテーションを行った、本年2月のインターネットエコノミーに関する日米政策協力対話(第7回局長級会合)にも出席された米国国務省のDaniel A. Sepulveda大使が今回のフォーラムの議長に正式に任命され、また各ハイレベル・ポリシー・セッションのファシリテーターが市民社会、技術コミュニティ、アカデミア、民間セクターのそれぞれから任命されました。その後、「High-Level Strategic Dialogue on WSIS Action Lines and SDGs」と題し、パネル・ディスカッションが行われました。

5月3日から4日かけては、さまざまなハイレベル・ポリシー・セッションが開催されました。Yahoo! JAPANが参加したセッションには、以下のものがあります。

①「Knowledge Societies, Capacity Building and eLearning」:各国や各地域におけるキャパシティ・ビルディング・プログラムについて議論
②「Inclusiveness – Access to Information and Knowledge for All」:情報格差の問題の背景や情報通信技術(ICTs)がその解消に向けて果たしうる役割について議論
③「ICT Applications and Services」:社会インフラの整備や経済および貿易の発展におけるICTsの役割と可能性について議論
④「Digital Economy and Trade」:デジタル経済におけるさまざまな利害関係者の役割やデジタル経済がSDGsの達成を支援しうることについて議論
⑤「Bridging Digital Divides」:情報格差是正に向けた各国や各地域の取組み、および民間セクターの関わり方について紹介
⑥「Bridging Digital Divides」:主にアフリカ地域に焦点を当て、情報格差の背景にある問題(インフラ整備やインターネット料金の低価格化、コンテンツの越境流通等)とその是正に向けてどのような取り組みが必要かについて議論

5月4日には、Concluding Sessionが開催されました。まずトンガのHon. Samuela 'Akilisi Pohiva首相がステートメントを行い、その後16のハイレベル・ポリシー・セッションのファシリテーターが、それぞれのセッションの総括を行いました。最後に、今回のフォーラムのSepulveda議長(米国国務省大使)、そしてITUのZhao事務総局長がステートメントを行いました。


(Concluding Session後に撮影された集合写真 *ITU Pictures(Flickr)から引用(©ITU/D.Woldu))

2. ネットワーキング・イベント
会合期間中、さまざまな利害関係者と意見交換を行う場が多数用意されていました。しっかりとしたレセプションから、会議場前にコーヒーや軽食が置かれている等の形式があり、このフォーラムが単に各種会合を開催することのみならず、世界各国の利害関係者間の「横のつながり」を維持・強化するためのものであることが示されていました。Yahoo! JAPANもそうしたネットワーキングの場に積極的に参加し、5月3日のお昼に開催されたスイス主催のレセプションでは、非常に多くの利害関係者と意見交換を行うこともできました。

ここで強調したいことは、実は各種会合そのものよりも、こうしたネットワーキングが非常に重要であるということです。各種会合の内容をより詳細に聞いたり、それぞれの利害関係者が専門としている分野の最新動向や今後の協力について話し合うことができます。そしてこうした活動を通じた「仲間作り」が、国際的なルール・メイキングの場では必要不可欠なのです。日本国内の政策の多くが海外の政策の影響を受けたものであることからも、国際社会におけるプレゼンスを高め、積極的に国際的なルール・メイキングに参画していくことが、今、求められているのです。


(スイス主催レセプションにてスピーチを行うITUのZhao事務総局長(©ITU/R.Farrell))

3. 会合を終えて
今回のWSISフォーラム2016を通じて、開発途上国の現状、そして情報通信技術(ICTs)がWSISアクション・ラインの実施のみならず、持続可能な開発目標(SDGs)の実施において果たす役割とその可能性を実感することができました。しかし、重要なのは議論の成果を実施に移すことです。Yahoo! JAPANは、世界中の誰もが自由に参加できる、グローバルで共通な環境こそがインターネットの本質的価値であり、国境を越えた表現活動や経済活動をより活発化することのできるツールであるということを常に心に留め、より多くの人々の豊かな生活に資する公平・公正かつ断片化されていない(unfragmented)インターネット社会を実現していくためにも、今後も国際的なインターネット・ガバナンスに積極的に参画していきます。


(レマン湖の大噴水(Jet d'Eau))

(KM)