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適正な象牙取引の推進に関する官民協議会の報告書が公表されました

2016年9月16日、象牙取引に関わる官民の幅広い関係者が参加する「適正な象牙取引の推進に関する官民協議会」より、象牙取引に係る現状の評価や参加機関の今後の取り組みをとりまとめた報告書が公表されました。

この協議会には、環境省、経済産業省、日本象牙美術工芸組合連合会とともに、ヤフーも共同事務局の一員として参加してきました。協議会の設置によって、官民の幅広い関係者が一堂に会して、日本の象牙取引の状況について情報を共有し、課題を発見した際には解決に向けた知見を持ち寄る場ができたことは、日本の象牙取引を持続可能なかたちで継続していく上で、非常に有益だと私たちは考えています。また、この場で確認された事実関係を国内外に広く発信していくことで、日本の象牙取引が密猟を誘引しているとする一部の団体の主張が、いかに事実と異なるかが明らかになっていくと考えています。

協議会には、政府側では、種の保存法を所管する環境省と経済産業省だけでなく、海外への情報発信や対外交渉を担う外務省、執行を担う警察庁と財務省(税関)が参加し、民間側では、関係事業者だけでなく、野生生物の保護に関して国際的に高い信頼を得ているNGO・トラフィックイーストアジア・ジャパンや本分野を専門とする研究者の方々が参加しています。

協議会がとりまとめた報告書は、以下で確認することができます。

「適正な象牙取引の推進に関する官民協議会」の報告書の公表について

報告書で取り上げたテーマは多岐に渡りますが、ここでは2つのポイントを簡潔にご紹介したいと思います。

1つは、日本の象牙取引の現状に関する評価です。1989年以降、象牙の国際的な商取引が原則禁止となるなか、国内の象牙の市場規模は縮小傾向にあり、現在は、ピーク時の1989年の10分の1程度(約20億円)と推測されています。また、税関での摘発件数、ワシントン条約事務局によるゾウ取引情報システム(ETIS)の報告(注1)等をもとに判断すれば、現在、日本へ象牙が大規模に密輸入されているとは考えらないことも示されています。すなわち、制度的に輸出入が禁止されており、かつ大規模な密輸入の兆候も確認されないなか、日本で取引されている象牙は、主に1989年以前に合法的に輸入されたものであるということです。したがって、報告書においては、日本に象牙の国内市場が存在していることは、近年のアフリカゾウの密猟増加に直接的に影響していないとされています。

(注1)CoP17 Doc. 57.6 (Rev. 1), “Report on the Elephant Trade Information System(ETIS)”によれば、”ETIS data do not provide any recent evidence that Japan is a destination for the significant illegal ivory flows presently leaving Africa.”とされています。

もう1つは、ヤフーをはじめとしたEコマース事業者の取り組みについてです。ヤフー自身のEコマースサービス(ヤフオク! 及びYahoo!ショッピング)における象牙製品の取扱いについては、今年1月に「象牙製品に関するYahoo! JAPANの現在の対応と考え方」で公表したとおり、違法な取引は一切許容していませんし、象の密猟や絶滅につながるような行為も容認していません。本報告書では、自社だけでなく、楽天株式会社、株式会社ディー・エヌ・エーとともに、改めてこのスタンスを明確にするとともに、今後も違法取引の排除の徹底に向けてEコマース事業者が、積極的なパトロールの実施など、法的義務を越えて自主的な措置を講じていくことを確認しました。さらに、ヤフーでは、こうした違法取引の排除に向けた取り組みを継続するとともに、NGO等の外部組織の協力を得ながら、自社の対応の効果を客観的に検証するとともに透明性を高める取り組みを開始する準備を進めています。

もっとも、本報告書で確認されたとおり、客観的な根拠に基づけば、日本の象牙取引がアフリカゾウの密猟に直接的には関係していないことは明らかな一方、アフリカゾウの個体数が絶滅が危惧される水準にあり、国際的に懸念されていることも確かです。

実は、アフリカゾウをはじめ希少な野生生物の種の保存にあたって大切なことは、野生生物の生息地の確保です。生息地の不足によって、ゾウが害獣化して農作物を荒らしている現実や、農業以外に頼れる産業が無いため、農地の拡大によってゾウの生息地が圧迫されている現実から目を背けたままでは、結果的に生じている密猟を防ぐことはできません(注2)。大切なことは現実を正しく見つめて対策を考えることです。アフリカゾウの密猟の原因を、根拠なく日本の市場の問題にすり替えることは、都合の悪い事実を隠してアフリカゾウの生存を脅かし続けることだと言うことです。

(注2)アフリカゾウの生息地において、地域住民の生活がどのような困難に直面しているかは、以下の文献で紹介されています。
象牙密猟は生息地でどう受けとめられているか?――二重に苦しめられるタンザニアの地域住民
岩井雪乃 / 環境社会学

したがって、種の保存を図るうえでは、希少な野生生物の生息国において、現地の人々が継続的に密猟を防止するための費用を確保でき、かつ野生生物の生息地を農地等に転用せずに維持するための経済的なインセンティブが必要です(注3)。こうした考えのもと、ヤフーは、生息国における保全の取り組みへの経済的な支援を含めて、種の保存や生物多様性に貢献するための取り組みの準備も進めています。

(注3)野生生物の保全にあたって、生息地の確保の重要性と、野生生物の商取引がもたらす保全上の利益の重要性を解説した文献として以下が挙げられます。
石井信夫「ワシントン条約における野生生物利活用の考え方」, 哺乳類科学51(1) : 119-126, 2011

従来より、「国際的に象牙取引に非難が高まるなか、ヤフーはなぜ自社のEコマースサービスにおいて、象牙取引をいまだに許容するのか」と問われることがあります。しかし、ご理解いただきたいのは、私たちは象牙の取引だけを特別視して守っているのではないということです。

ヤフーが守りたい価値は、「多様性の尊重」です。その多様性には、生物多様性はもちろん、各国・地域の文化の多様性も含まれます。インターネットを通じてグローバルに情報が行き来し、さまざまな価値観が交錯するなかにあっても、それぞれの国・地域において固有の文化が存在します。多くの巨大インターネット企業がグローバルに統一したポリシーで運営されるなかにあって、私たちYahoo! JAPANは、日本のインターネット企業として、日本の文化を尊重する存在でありたいと思います。象牙の取引についても、違法取引の排除に徹底的に取り組むことを大前提として、それがワシントン条約、日本法に照らして適法かつ種の保存を脅かすものでないならば、売り手・買い手が自由に参加できる場を提供することは私たちの責務だと考えています。

ヤフーは、今後も、客観的な根拠と法律に基いて、多様性を尊重した行動をとっていきたいと思います。