Yahoo! JAPAN 政策企画

APEC TEL 54@関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)

2016年10月31日から11月4日にかけて、京都府の関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)において、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の第54回電気通信・情報作業部会(Telecommunications and Information Working Group: TEL)が開催されました。今回、Yahoo! JAPANは、11月1日に開催された自由化分科会(LSG)のIndustry / Regulatory Roundtableに登壇しましたので、ご紹介します。

1. アジア太平洋経済協力会議の電気通信・情報作業部会(APEC TEL)とは?
アジア太平洋地域の21の国と地域が参加している経済協力の枠組みであるアジア太平洋経済協力会議(Asia-Pacific Economic Cooperation: APEC)にはさまざまな部局がありますが、電気通信・情報作業部会(Telecommunications and Information Working Group: TEL)は、経済・技術協力運営委員会(SOM Steering Committee on ECOTECH: SCE)の下に設置された作業部会の一つです。APEC TELは、APEC域内における新たな成長へ向けた情報通信技術(ICT)開発、ICT利活用を通じた社会経済活動の向上、安全・安心なICT環境の推進、地域経済統合の推進、ICT分野における協力の強化等をテーマに、APEC域内のICT政策の担当者や関係事業者が集まって議論を行う場です。会合は約半年ごとに、APEC参加国の持ち回りで開催されています。

APEC TELにおいても、取り扱う政策テーマが多岐にわたることから、実際の議論は、これらの各テーマに取り組むために設置された、開発分科会(Development Steering Group: DSG)、自由化分科会(Liberalization Steering Group: LSG)、セキュリティー繁栄分科会(Security and Prosperity Steering Group: SPSG)という3つの分科会においてそれぞれ進められています。各国の政策担当者が主な参加者ですが、Yahoo! JAPANのように各国・地域の民間セクターも参加して議論がなされるところに特徴があります。今回の日本側出席者ついても、政府のみならず、民間セクターからも複数の参加がありました。


(オープニングスピーチの様子)

2. 自由化分科会(LSG)のIndustry / Regulatory Roundtableに登壇
11月1日、自由化分科会(LSG)のIndustry / Regulatory Roundtableが開催されました。このRoundtableは、民間セクターの関係者が登壇し、ビジネスモデルとデータの自由な流通の利用について話し合うIndustry Sessionと、政策担当者も参加しデジタル経済や超スマート社会(Society 5.0)のための政策規制枠組みについて話し合うRegulatory Sessionの2つのセッションで構成されていました。今回、Yahoo! JAPANは、前者Industry Sessionにパネリストとして登壇しました。

Industry Sessionでは、米国AT&TのJake Jennings氏が司会進行を務め、米国のNational Center for APEC、シンガポールのRebright Partners、そして日本からはSONYとYahoo! JAPANがパネリストとして登壇しました。

このセッションでは、それぞれの企業のビジネスモデルにとって情報の自由な流通がいかに重要かという点、同時に相対するプライバシーの保護やサイバーセキュリティーの確保についてどのように取り組んでいくべきかという点についてプレゼンテーションやパネルディスカッションが行われました。例えば、ある国の領域で事業を行うための条件として、その領域においてコンピューター関連設備の利用や設置を要求するデータローカライゼーションの措置が具体的にどれほど多国籍企業のグローバルな事業展開に影響を及ぼすかといったことや、新興国におけるITセクターのスタートアップ企業への投資の現状、アジアにおけるデータ流通の規模が大きくなってきているが、そのほとんどがモバイル・ベースのデータ流通であるといったことについて説明がありました。加えて、APECビジネス諮問委員会(APEC Business Advisory Council: ABAC)によるデジタル経済分野における活動や、情報の自由な流通がイノベーションとデジタル経済の発展の鍵となるといった点、APECの越境プライバシールール(CBPR)システムについても説明がありました。

Yahoo! JAPANからは、プライバシーに関する社会的感受性(social sensitivity)は各世代によって異なることを考慮に入れながら、その事業展開において個人データの利活用とプライバシーの保護のバランスをとってきていること、そして、情報の自由な流通はインターネットの根本的な価値であり、政府による過度な規制は今日のビジネスにとって欠かすことのできないデータの流通を妨げる結果となるといったプレゼンテーションを行いました。


(Yahoo! JAPANのプレゼンテーションの様子)

Industry Sessionに引き続いて、Regulatory Sessionが開催されました。ここでは、野村総研の横澤誠氏がモデレーターを務め、経済団体連合会(経団連)、経済産業省、米国のAT&T、そして総務省がパネリストとして登壇し、主にルール・メイキングの観点から、情報の自由な流通を確保しながら、いかにしてサイバーセキュリティーの向上と適切なプライバシーの保護を行っていくかにつき、プレゼンテーションや会場も含めたパネルディスカッションが行われました。ここでは、(1)なぜAPEC参加国においてデータの自由な流通が重要なのか、(2)データの自由な流通に基づくデジタル経済を築く上で政策的な課題は何か、(3)データの自由な流通におけるAPEC TELの役割は何か、の3つの質問について、会場の参加者も交えてさまざまな議論が行われました。情報の自由な流通が促進されればそれだけサイバー攻撃のリスクが高まることから、サイバーセキュリティーの向上やプライバシーの保護がやはり優先的な課題となるが、両者のバランスをいかにとるかも重要であるといった発言や、デジタル経済にとって重要なポイントを専門家の間で議論する場がAPEC TELなのであるといった発言もありました。

3. 結びにかえて
11月1日午前のセッションはこの自由化分科会(LSG)のIndustry / Regulatory Roundtableしかなかったこともあり、会場はほぼ満席でした。他の登壇者によれば、民間セクターが参加するセッションにこれほど多くの参加者があったのは今回が初めてであるとのことでした。このRoundtableの結果は文書化され、後日自由化分科会(LSG)に提出されるため、
産業界の声がAPEC参加国政府に共有される予定です。

Yahoo! JAPANは、これまでもAPEC TELの累次の会合に参加してきていますが、議論の動向を追うのみならず、APEC参加国の官民関係者とネットワーキングを行うこと、そして機会があれば安心・安全なインターネット環境の整備に向けた自社のさまざまな取組みを紹介することに心がけています。

最近、デジタル経済やデジタル貿易に世界的な注目が集まっています。それに伴い、越境データ流通やプライバシーの保護、サイバーセキュリティーの確保等に関するルール・メイキングについても、APECを含むさまざまな国際的枠組みで継続的に議論されています。インターネットに国境はなく、物理的距離も関係ありません。であるからこそ、インターネットに基づく経済には無限の可能性があり、世界中の大小どの企業もその恩恵を享受する機会があります。他方で、プライバシーやセキュリティーに関するサイバーリスクも一瞬にして世界中に広がり得ます。しかしだからといって、各国政府が情報の自由な流通に過度な制限を課すようなことをすれば、インターネットの断片化が生じ、誰もが自由に参加できるグローバルで共通な環境というインターネットの本質的価値が損なわれ、結果として全てのインターネットユーザーの利益が損なわれることになります。こうしたことから、情報の自由な流通と安心・安全なインターネット環境の整備のバランスをいかにとっていくかの国際的な議論に継続的に参加することは、国内外問わず、そしてITセクターであるか否かを問わず、世界中の全ての企業にとって重要です。

Yahoo! JAPANは、APEC参加国政府が、産業界の声が反映された今回のRoundtableの結果を考慮に入れて国際・国内のルール・メイキングに従事していくとともに、今後もAPEC TELの活動に貢献していきたいと考えています。

(KM)

【参考資料】
APEC第54回電気通信・情報作業部会(TEL 54)の開催に関する総務省の報道資料:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin06_02000086.html 
APEC TELのホームページ:
http://www.apec.org/groups/som-steering-committee-on-economic-and-technical-cooperation/working-groups/telecommunications-and-information.aspx