Yahoo! JAPAN 政策企画

「インターネット上に掲載された過去のプライバシー関連情報等の取扱いに関するシンポジウム」に参加しました

2016年12月12日、総務省主催のもと、学識者、弁護士、メディア関係者、消費者、検索サービス事業者、行政関係者など幅広い関係者が集い、「インターネット上に掲載された過去のプライバシー関連情報等の取扱いに関するシンポジウム」が開催されました。Yahoo! JAPANからも執行役員の別所直哉がパネルディスカッションに参加しましたので、当日の議論の様子をお伝えします。


パネルディスカッションの様子

当日は、まず3名の専門家から、いわゆる「忘れられる権利」に対する考え方について基調講演がありました。

東京大学の宍戸常寿教授からは、欧米での検索サービスの法的位置づけを確認した上で、日本における検索結果からの削除に係る裁判例が紹介され、今後の課題について説明がなされました。「忘れられる権利」が日本においても大きく注目を集めるきっかけとなったのは、2014年5月のEU司法裁判所の先行判決ですが、これは日本の個人情報保護法に相当するEUデータ保護指令の枠組みの中で判断されたものであること、一方、これまで日本における検索結果の削除を巡る裁判においては、個人情報保護法の枠組みではなく、既存の民事法理(人格権侵害を理由とする差止め・損害賠償、仮処分による差止め)の枠組みで判断されてきたことが紹介されました。日本とEUとでは、検索結果からの情報の削除を巡る法的枠組みが大きく異なっているという点は重要な指摘だと私たちも考えています。

次の講演者であるグーグル株式会社の野口祐子法務部長からは、2014年5月のEU司法裁判所の先行判決とそれ以降の欧州での議論動向、最近の日本の裁判例、同社が現在直面している課題などについて紹介がありました。欧州においても、同先行判決やその後のGoogleの対応については、BBCやTelegraphなどのメディアからの批判、英国貴族院からの反論などがあったほか、検索結果からの削除を巡るEU域内各国の裁判においても削除が認められない例も多く、依然として賛否双方から議論が続いていることが紹介されました。

朝日新聞社の津山昭英顧問からは、事件報道に携わるメディアの立場から、名誉・プライバシーなどの人格権と報道の自由の調和をどのように図っていくべきかについて、これまでの取り組みなどを中心に紹介がありました。朝日新聞では既に1980年代から事件報道小委員会を設置して検討を積み重ねてきているほか、業界横断的な取り組みとして、マスコミ倫理懇談会全国協議会の「ネット時代の報道倫理研究会」において検索サービスからの情報の削除について検討し、報告書をとりまとめたことが紹介されました。また、朝日新聞では、インターネットでの記事配信にあたっては、公益性が一定の地域に限られるニュースはインターネット上には配信しない、公益性が低い場合にはネット配信する際には実名報道を控える場合があるなど、いくつかの基準を設けてネット上での事件報道を行っていることが紹介されました。

その後のパネルディスカッションでは、英知法律事務所の森亮二弁護士をコーディネーターとして、パネリストには、基調講演者3名に加えて、虎ノ門南法律事務所から上沼紫野弁護士、全国地域婦人団体連絡協議会から長田三紀事務局長、Yahoo! JAPANから執行役員の別所が参加しました。また、オブザーバーとして、総務省から消費者行政第二課の湯本博信課長、国際経済課の菱沼宏之課長、法務省から調査救済課の山口聡也課長も登壇するかたちで、パネルディスカッションは進行しました。

実際のところ、日本における検索結果からの情報の削除を巡る法的論点については、学識者、弁護士などの専門家の間では相応に議論の蓄積が進んでいます。もっとも、東京大学の宍戸教授とGoogleの野口法務部長の基調講演においても指摘がありましたが、ネット上の情報流通のあり方を考えるにあたっては、検索にだけ焦点を当てた議論をするのではなく、インターネット上の情報流通全体を考える必要があります。これだけ多くの人々が身近にインターネットを使うようになった現在、インターネット上の情報流通には非常に多数の、多様な立場の人々が関与しています。そのため、専門家による法的論点の検討だけでなく、報道に携わるメディア、情報を受け取ったり調べたりする側の消費者や個人など、多様な参加者が議論に参加することが重要です。今回のパネルディスカッションの意義は、これまで主に専門家間で積み重ねられてきた議論が、メディア関係者や消費者など、より多くの関係者に共有されたことにあると私たちは考えています。

この点、パネルディスカッションにおいて、全国地域婦人団体連絡協議会の長田事務局長から、検索結果からの情報の削除に関して意見表明があったことは極めて意義が大きかったと思われます。自らに関する過去の情報を消したいという思いに理解を示しつつ、一消費者としては、やはり個人や企業の犯罪歴などについて知りたいという正当な場面がありうること、そうした情報を検索できることは消費者・個人にとっては重要であることなどが語られました。

今回のパネルディスカッションでは、Yahoo! JAPANからは、EU司法裁判所の「忘れられる権利」の先行判決以前から、日本においても検索結果からの情報の削除の申告を受け付けており、一部の情報については削除措置を講じてきたこと、現在では、2014年に設置した有識者会議を通じた法的検討結果を踏まえた対応を行っていること、直近の削除申告の状況について紹介しました。

また、パネルディスカッションでは、検索結果の削除について、裁判による透明性の高い、慎重な判断が求められる一方、現在日本で多用されている仮処分による手続きは、迅速さ・簡便さという利点がありつつも、十分な事実を確認しないままに判断がくだされるなど課題が多い点についても言及がありました。Yahoo! JAPANとしても、こうした仮処分による手続きの課題はこれまでも指摘しているところです。もっとも、そもそも裁判による手続きだけでインターネット上の情報流通に関して全ての課題を解決しようとするのは現実的ではなく、裁判を通じた慎重な判断に加えて、事業者による自主対応、民-民連携、官-民連携などを組み合わせて実効的に課題を解決していく必要があります。

パネルディスカッションでも別所から言明したとおり、Yahoo! JAPANとしては、表現の自由も、プライバシーも、双方が極めて大事な価値だと認識しています。私たちが、いま直面しているのは、こうした重要な価値のバランスをどのように図っていくかということです。インターネット上の情報流通のあり方、そのなかで検索サービスはどうあるべきかについては、今回のシンポジウムへの参加者に限らず、多くの方々が多様な考えをそれぞれに抱いています。私たちは、今後も、多様な立場の方々と連携しながら、バランスのとれた、実効的な課題の解決にあたっていきたいと考えています。

(N.Y)

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