Yahoo! JAPAN 政策企画

インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF Mexico 2016)に出席(前編)

2016年12月5日から9日にかけて、メキシコ・グアダラハラの文化通信宮殿(Palace of Culture and Communication: PALCCO)において、インターネット・ガバナンス・フォーラム(Internet Governance Forum: IGF)が開催されました。
今回、Yahoo! JAPANはこのIGFに参加し、初めてセッションを主催しましたので、ご紹介します(主催したもの以外のセッションやレセプション等にも参加してきましたが、その様子については、後日後編の中でご紹介します)。

1. インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)とは?

IGFとは、2005年の「チュニス・アジェンダ(Tunis Agenda for the Information Society)」によって国連の下に設けられたもので、さまざまな利害関係者(マルチステークホルダー)がインターネットに関する公共政策課題を議論するために、2006年以降、毎年1回開催されているものです。2015年12月にアメリカ・ニューヨークで開催された「世界情報社会サミット(World Summit on the Information Society : WSIS)成果の実施に関する全体総括レビュー・ハイレベル会合」では、このIGFのマンデートがさらに10年延長され、今後10年間もマルチステークホルダーによってインターネットに関するさまざまな公共政策課題が定期的に議論されることになりました。

なお、IGFのホームページによれば、IGFはさまざまなステークホルダー・グループによる寄付(donations)によってまかなわれています。年1回の会合については、毎年変わる開催国がその費用の大半を負担するようですが、IGF事務局の活動については、国連経済社会局(UN Department of Economic and Social Affairs : UNDESA)によって管理されているマルチドナー信託基金(multi-donor Trust Fund)に支払われる特別拠出金(extra-budgetary contributions)によってまかなわれているようです。

今年のIGFは、12月5日から9日にかけて、メキシコのグアダラハラにある文化通信宮殿(Palace of Culture and Communication: PALCCO)で開催されました。「Enabling Inclusive and Sustainable Growth」をメインテーマに、さまざまなセッションが開催されました。

IGF Mexico 2016のアジェンダ:https://igf2016.intgovforum.org/ 


(会場となった文化通信宮殿(Palace of Culture and Communication: PALCCO))


2. 「IGF Newcomers Track: Private sector and Technical community at the IGF: What is the role of these stakeholder groups within the IGF and ways for engagement?」に登壇

Yahoo! JAPANは、まず12月6日に、「IGF Newcomers Track: Private sector and Technical community at the IGF: What is the role of these stakeholder groups within the IGF and ways for engagement?」というセッションで簡単なスピーチを行いました。このセッションは、今回初めてIGFに参加する人を対象としたもので、IGFのキーパーソン(key stakeholders)が、自らの経験を踏まえてそれぞれの利害関係者のIGFへの関与の重要性を話すものです。Yahoo! JAPANは、民間セクターのキーパーソンとしてIGF事務局から依頼を受け、インターネットガバナンスに関する自社の立場を説明し、これまでの国際的な活動を簡単に紹介しました。


(セッションの様子(提供:Internet Governance Forum(IGF)))


3. 「Digital Trade Policy: TPP as Minimum Standard or More?」をテーマに発表

Yahoo! JAPANは同日、20分のLightning Sessionの形式で、「Digital Trade Policy: TPP as Minimum Standard or More?」をテーマにプレゼンテーションを行いました。そこでは、11月のアメリカ大統領選挙の結果勝利した共和党のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が、「環太平洋経済連携協定(TPP)については大統領就任初日に離脱通告をする」と発言したことに触れながら、TPPの発効は極めて困難な状況にあるものの、電子商取引章(第14章)にはイノベーションや経済成長を促進する規定が多く含まれており、今後の経済連携協定(Economic Partnership Agreements: EPAs)や自由貿易協定(Free Trade Agreements: FTAs)の基準となるべきであると述べました。その一方、電子商取引章(第14章)のとりわけ情報の越境移転やデータローカライゼーションに関する規定を取り上げ、世界貿易機関(World Trade Organization: WTO)の紛争解決手続きの下WTO協定の類似規定に関し蓄積された判例法と照らし合わせながら、さらなる検討が必要なポイントを紹介しました。


(野外で開催されたLightning Sessionの様子(提供:Internet Governance Forum(IGF)))


4. ワークショップ「Safe and Secure Cyberspace for Youth: Solutions for Asia and Africa」を主催

Yahoo! JAPANは、12月9日、「Safe and Secure Cyberspace for Youth: Solutions for Asia and Africa」をテーマにワークショップを主催しました。このワークショップは、スマートフォンの普及とともにソーシャル・メディアを利用する若年層がますます増加していますが、この傾向が同時に違法・有害情報へのアクセスを容易にしており、場合によってはいじめや差別等にも波及することから、こうした問題についてどのように対策を講じていくべきか、アジア・アフリカ地域におけるインターネット上の青少年保護に関する解決策を議論するものでした。

日本のみならず、インターネットにおけるホットラインの国際的な連合組織であるINHOPE(International Association of Internet Hotlines)もパネリストとして参加し、また若年層の生の声を聞くことを目的として、アジア・アフリカ地域からそれぞれ若手のパネリストを招きました。野村総合研究所の横澤誠氏からは、日本の総務省の取組みとYahoo! JAPANが参加しているセーファーインターネット協会(SIA)の活動について紹介がありました。INHOPEのVeronica Donoso氏からは、今後さらに数十億人がインターネットに接続することになるが、そこには潜在的なリスクもあるとし、INHOPEによる児童性虐待記録物(Child Sexual Abuse Materials: CSAMs)に対する世界的な取り組みに関し説明がありました。若手のパネリストとしては、まずRudi InternationalのArsene Tungali氏から、コンゴ民主共和国の状況とインターネットの利用に関する教育の重要性、とりわけ家族、教会、学校、コミュニティー・社会がそれぞれの役割を果たす必要があるといった説明がありました。次にNetMission.AsiaのRaymond Yang氏とHong Kong Youth Internet Governance Forum(HKYIGF)のShirley Wong氏からは、世代によってインターネットに対する考え方や利用するアプリが相当程度異なることや、オンラインショッピングを例に挙げながら、インターネット利用に関するさらなる教育の必要性について説明がありました。パネリストによるプレゼンテーションの終了後は、会場の出席者も交えてディスカッションが行われました。


(ワークショップの様子(提供:Internet Governance Forum(IGF)))

Yahoo! JAPANは、今回初めてIGFの場でセッションを主催することができました。IGFの場でセッションを主催するためには、多様なパネリストをリストアップした提案書を提出し、厳しい選考を通過しなければなりません。セッションにはいくつかの形式がありますが、ワークショップに関して言えば、今回、世界各国から260に及ぶ提案書が提出されましたが、当初選定されたのは約100の提案書のみでした。今年の6月に提案書を提出して以降長い道のりでしたが、最終的に無事2つのセッションを主催し、1つのセッションでの登壇を果たすことができました。IGFの全ての関係者、Yahoo! JAPANのセッションに登壇してくださった全てのパネリスト、そしてセッションに出席してくださった全ての人に、心から感謝しています。


5. 小括

会合後の議長サマリー(12月16日付)によれば、今回のIGFには、123カ国から2000人を超える人が約200の各種セッションに現地参加し、加えて1000人を超える人がオンラインで参加したとの事です。これらの数字からも、世界各国のさまざまな利害関係者がインターネット・ガバナンスの重要性を認識していることが分かります。

インターネットは本来、誰もが自由に接続でき、意見や情報を発信できるグローバルで共通な環境です。そして、そのインターネットの健全な管理・運営の議論についても誰もが参加できるように、インターネット・ガバナンス分野においては、マルチステークホルダー・アプローチが採られています。そうであるからこそ、先進国・途上国を問わず、そして国内で活動しているか国際的に活動しているかを問わず、さまざまな利害関係者が数多くIGFに参加し、情報や意見の交換を行っています。IGFは何らかの意思決定を行う場ではありませんが、IGFで議論された事項は国内外の意思決定権者に伝わりますし、ある提案が実際のルール・メイキングに反映されたり、ある国で実施されている措置が他国で実施されることも十分にあり得ます。こうしたことから、IGFに継続的に参加し、セッションの開催等を通じて、自らの主義主張の重要性や具体的な取り組みの有効性を訴えていく必要があるのです。

今回のIGFには、比較的多くの日本人関係者が参加・登壇し、また日本政府主催のオープンフォーラム(No.20 Outcomes of G7 Ise-Shima Summit and Ministerial Meetings)も開催されました。その意味で、日本のプレゼンスをある程度示すことができましたが、これを今後も継続していく必要があります。Yahoo! JAPANは、自社のプレゼンスのみならず、他の利害関係者とともに日本のプレゼンスの向上に寄与していきたいと考えています。そして、国境を越えた表現活動や経済活動をより活発化することのできるインターネットの無限の力を引き出せるような政策につながる「雰囲気」を醸成し、そうした政策が実際に国内外のルール・メイキングに反映されるよう、今後も積極的にIGFに参加していきます。


(KM)

(※Yahoo! JAPANが主催したもの以外のセッションやレセプション等については、後日後編の中でご紹介します。)