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米国ネット広告団体の年次総会「IAB Annual Leadership Meeting 2017」に参加

2017年1月29日から31日にかけて、アメリカ・フロリダ州ハリウッドにおいて、世界のインターネット広告の最新動向を伝える会合「IAB Annual Leadership Meeting 2017」が開催されました。今回、Yahoo! JAPANは一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)の関係者とともにこの会合に参加しましたので、ご紹介します。

この会合を主催しているIAB(インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー)は、ネットメディアやマーケティング業界の成長を促進する団体です。1996年に米国で設立され、ヘッドオフィスはニューヨークで、全米ネット広告産業86%にのぼる会社が会員となっているようです。活動内容は、会員社への啓発、関連省庁への政策提言にとどまらず、業界の人財育成、ネット広告成功事例の積極的情報発信などかなり活発で、さすがネット先進国アメリカで、経済成長の原動となっている分野を代表する団体という印象です。

「IAB Annual Leadership Meeting」は毎年開催される、キーノート、プレゼンテーション、ディスカッションなどで構成されている招待制の「年次総会」です。
昨秋の「IAB Global Summit」(こちらも年1回のイベントですが、やや小規模で、出席者は各国IABが中心)では、ビデオ広告の普及やVRへの期待もありましたが、アドフラウドやアドブロックへの対策など、やや厳しい話題が目立ちました。印象的だったのは「プログラマティック広告が進んだ結果、一部の大手だけが強者となり、多くのメディア企業は弱体化。多くの敗者を生んだ」といった話でした。


今回のテーマは、「Publishers & Platforms :What`s Next?」と題されています。IAB CEO のプレゼンテーションのテーマは、いきなり「Fake News」。
(IAB CEOランダル・ローゼンバーグ氏のスピーチの全文)
https://www.iab.com/news/repair-trust-randall-rothenberg-addresses-iab-annual-leadership-meeting
ちょうど大統領選が終わった直後というタイミングだったせいか、メディアの信頼性に関する話でした。IABの出自はメディアの団体ということもありますが、いつになくジャーナリスティック。トップのメッセージがマーケティングや広告に関する話ではないことはやや意外でしたが、インターネット広告の配信形態が複雑化したことや、一次メディアの弱体化によって、広告の信頼性に影響が生じているという議論は世界的に共通する課題認識であるようでした。

広告主の立場からP&Gのプレゼンテーションもありました。これが、3日間を通して最も印象的な話でした。直後にいくつかのインターネットメディアでも報じられ、早速業界で話題となりました。
(P&G 最高ブランド責任者、マーク・プリチャード氏のスピーチの全文)
http://www.campaignasia.com/article/procter-gamble-chief-issues-powerful-media-transparency-rallying-cry/433442
メディアの信頼性が揺らいでいるという流れを受けて、「P&Gは、『透明性』の担保されたメディアとしか、取引はしません」という強いメッセージが発信されました。
実施することとして、
1.ビューアビリティのある広告基準を採用
2.認定された第三者測定検証を実装
3.透明な代理店契約を結ぶ
4.アドフラウドを防止する
の4点を掲げ、これらについては金も出すから皆さんも実行しなさい、と叫びます。
「IABは設立されて21年になります。21歳は完全に成年です。未熟だから、とインターネット広告業界に言い訳を認めてきた時代は終わりました。われわれの側からクリーンで大人の市場にしましょう」
と高らかに掲げ、メディア業界の数字の不透明さや不正を一掃し、透明性のある業界に再投資しましょう、という堂々とした、かつ印象的なプレゼンテーションは、2017年におけるネット広告業界の大きな流れの象徴のひとつとなる可能性があります。

この他、1日目は、コンデナスト、ワシントンポスト、CBSニュースなどから、メディアの品質やジャーナリズムに関する話ばかりで、関心の高さを印象づけられました。
2日目は、Google、Facebook、Verizonなどのプレゼンテーションと、ワーキンググループがあり、ややスポンサー色の高いセッションも織り交ぜられていました。
最終日にアドテク関連などをまとめ、トリは流行のSnap Chatという構成でした。全体を通じてアドテクやデータ、ビデオ、スマホなどのフォーマットの話から、コンテンツの品質向上やメディアの信頼性の方へシフトさせるべき、という主催者の意思がはっきりと伝わりました。

最終日の各国IABの朝食セッションにて、JIAAが、IABグローバルネットワークに加入した記念のスピーチを実施しました。日本のネット広告市場について説明のうえ、今までは提携関係にあった関係から、今回の加入によりJIAAは海外ではIAB Japan(JIAA)の名称で活動することになったことを発表(国内では引き続きJIAAとして活動を行い、独自のガイドライン等を設けていきます)。業界課題は各国共通なので、連携を深めていきましょう、という結びで講演が終了した直後にプレスリリースを配信しています。スピーチの模様もIABスタッフがほぼライブでアップしてくれました。
JIAAのプレスリリース
http://www.jiaa.org/release/release_iab_170201.html

筆者はJIAAの活動に参加することが多いのですが、インターネット広告に関する議論を牽引していく業界団体としての規模の差や手法はかなり異なります。JIAAの会員はメディア、広告会社やその他の業種も合わせて228社(2017年1月31日現在)ですが、IABはメディア系中心で、800社以上。43カ国にライセンス提供し、世界規模で活動しています。
何より、業界団体のあり方、スタンスについて考えさせられました。IABが自ら明確なメッセージを力強く打ち出し、そのメッセージをいかに広め、業界の新しい潮流を作り出すかという心意気を肌身で体験しました。業界の流れを積極的に作り出すIABの活動をみて、「さすがアメリカ!」と痛感。JIAAの活動への貢献という意味でも、健全なインターネット広告ビジネスの発展のためにできることがまだまだある、と課題山積の頭で帰国しました。

(フロリダ州・ハリウッドの会場)

(S・Y)

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