Yahoo! JAPAN 政策企画

APEC TEL55@メキシコシティ

4月3日から4月7日、メキシコのメキシコシティで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の第55回電気通信・情報作業部会(Telecommunications and Information Working Group。略称APEC TEL 55。)の諸会議に参加しましたので、会議の様子などをご紹介します。

メキシコシティはメキシコ最大の都市で、日本のほぼ裏側に位置しています。メキシコといえば、カリブ海に面する美しいビーチ、カンクンがビーチリゾートとして有名ですが、今回APEC TEL55が開催されたメキシコシティは同国のみならずラテンアメリカの経済の中心地の一つとして有名です。近代的なビル群が立ち並ぶ一方で、アステカ帝国の歴史を感じる遺跡、大聖堂や宮殿などの歴史的建造物がビル群から車でわずか10分ほどの場所に位置しており、多種多様な時代や文化を同時に体感することができる非常に魅力的な都市です。

(メキシコシティにあるメトロポリタン・カテドラル)

●APEC TELとは
APEC TELとは、アジア太平洋地域の21の国と地域が参加している経済協力の枠組みであるアジア太平洋経済協力会議(Asia-Pacific Economic Cooperation。通称APEC。)の経済・技術協力運営委員会の下に設置された作業部会の一つです。
同作業部会では、APEC地域内における新たな成長に向けた情報通信技術(ICT)の開発、ICT利活用を通じた社会経済活動の向上、安全・安心なICT環境の推進、地域経済統合の推進、ICT分野における協力の強化等をテーマとして、APEC参加国のICT政策担当者や関係する研究機関、民間事業者が集まって、テーマに関する自国の取り組み等の発表や議論がなされます。

●各会議の様子のご紹介
先述のとおり、APEC TELで議論されるテーマは多岐にわたるため、実際の議論はテーマごとに設置された以下の3つの分科会において進められています。
・Development Steering Group (DSG、開発分科会)
・Liberalization Steering Group (LSG、自由化分科会)
・Security and Prosperity Steering Group (SPSG、セキュリティ繁栄分科会)
APEC TELの開催期間中、各分科会の会議が平行して行われますが、今回、Yahoo! JAPANは、全体会議、LSG、DSGのいくつかのセッションに参加しました。
LSGでは、日本の総務省主催のワークショップが開催され(詳細後述)、オンラインコネクティビティについて各国政府の取り組みや各事業者におけるデータ利活用の現状、デジタル産業におけるデータの自由な流通とセキュリティ強化の重要性等について、活発な議論がなされました。
DSGでは、ペルー主催のラウンドテーブルが開催され、通信サービスを利用する際に消費者が自身の権利を十分理解・認識できるような通信制度について議論が行われました。オーストラリア、メキシコ、ペルーの取り組みが紹介され、それを踏まえ利用者の権利を保護しかつ実効的に保つため、電気通信機器の販売などに関して、どのような規制が望ましいかについて各国から意見が出されていました。

●自由化分科会(LSG)では日本がワークショップを開催
今回、情報技術に関する貿易および投資の自由化、効果的な政策規制枠組みがテーマのLSGにおいて、日本の総務省主催のワークショップ(「Enhancing Online Connectivity for Unleashing the Potential of Digital Economy」)が開催されました。
本ワークショップでは、オンラインコネクティビティの強化をテーマに、前半に参加者からのプレゼンテーションが行われ、後半はその内容を踏まえて、デジタル産業の発展のためにICTインフラやデータ利活用の制度はどのようにあるべきか、整備されたICTインフラ上でのデジタル産業の発展のためにAPEC-TELが果たすべき役割は何か、などの論点について議論がなされました。
前半は、インターネットのコネクティビティがもたらす恩恵や、強い規制が市場にもたらすリスク等のデメリットなどについて、米国AT&T、Medisist(メキシコの医療機関)、ULカンパニー、ベライゾン、台湾国家通訊伝播委員会(NCC)、ロシア政府関係者からプレゼンテーションがなされました。各産業分野でのデータ利活用の現状や政府と事業者との連携、オンラインコネクティビティの強化のための技術的施策など、各プレゼン内容ともこれから日本においてデータ利活用の議論を進めていく上で非常に示唆に富むものであり、ビッグデータ企業であるYahoo! JAPANにとっても大変参考になる内容でした。
今回のワークショップのテーマとなったオンラインコネクティビティは、今後の世界経済の発展にとって非常に重要な要素であり、国境を越えた自由なデータの流通を適切に実現するためには、各産業やビジネスモデルごとにどのような形でのデータの自由な流通の実現が効果的か、相対するプライバシーの保護やサイバーセキュリティーの確保についてどのように取り組んでいくべきかについて、議論を継続することが重要であると考えられます。

(総務省主催のワークショップの様子)

●はじめての国際会議を終えて
各国の政府関係者が集まる国際会議というと、各国の利害関係の対立から激しい議論や交渉が行われ、なかなか結論が出ずに議論が難航する、という印象をもたれている方も多いと思います。
筆者は今回が初めての海外出張で、参加前はそのような議論の場に飛び込んでいくことへの不安がありましたが、実際の会議では、各参加者が自身の利益のみにとらわれずに互いの意見に十分に耳を傾けながら議論が進められていました。もちろん、時には厳しい意見も出ていましたが、それは決して自国の利益のみを優先させた意見ではなく、APEC地域内のICT利活用を通じた安全な社会経済の発達について、参加各国が真剣に取り組んでいることのあらわれであると思います。
近年、ICT化に伴い日本国内でもデータの価値が注目を浴びており、経済や技術の発展に資するデータ利活用についてさまざまな方面で議論がなされています。APEC TELに限らず、さまざまな国際会議において、各国政府や事業者のデータ利活用に関する取り組みを学び、各当事者と問題意識を共有し解決方法について積極的に意見を交換することは、今後日本がデータ立国として経済的に成功するために非常に重要である、と今回の会議に参加して改めて感じました。
また、会議の合間のコーヒーブレイクやディナーの場では、国や地域を問わず、各参加者によって会議のテーマに限られない自由な会話が繰り広げられていました。会議とはまた雰囲気が違った和やかなコミュニケーションの場において、各関係者が冗談を交わしつつ近況を確認しあったり、会議内容について忌憚のない意見交換を行っているのを見ると、APEC TELの各会議において感じた参加国の一体感はこういった会話があってこそ醸成されるものであるように思われました。
次回のAPEC TEL56は2017年秋にタイのバンコクで開催されます。

(ホスト国メキシコ主催のWelcome Dinnerの様子)

Yahoo! JAPANは、今後もAPEC TELに限らず、日本におけるインターネット分野のリーディングカンパニーとして、インターネットに関わる国際会議に積極的に参加し、他国政府や事業者の活動や問題意識について情報収集を行い、意見交換を行っていくことで、日本におけるICT利活用を通じた安全な社会経済の発達や、より良いインターネット環境の整備に協力していきたいと思います。

(T・K)