Yahoo! JAPAN 政策企画

2016-2018協力強化に関するワーキンググループ(WGEC)・第三回会合に出席

2017年5月3日から5日にかけて、スイス・ジュネーブの国連ヨーロッパ本部において、2016-2018協力強化に関するワーキンググループ(Working Group on Enhanced Cooperation: WGEC)の第三回会合が開催されました。今回、Yahoo! JAPANは日本政府の関係者とともにこの会合に参加しましたので、ご紹介します。

1. WGEC 2.0 第三回会合までの経緯
2017年1月26日から27日にかけて開催された第二回会合では、第一回会合の結果定められた以下の2つの質問のうち、1つ目の質問について議論が行われました。

(1)What are the high level characteristics of enhanced cooperation?
(2)Taking into consideration the work of the previous WGEC and the Tunis Agenda, particularly paragraphs 69-71, what kind of recommendations should be considered?

その結果、会合期間中に送付された「協力強化の高いレベルの特徴に関する意見を取りまとめた文書(得票順リストおよびスプレッドシート)」につき、①おおむね合意があるもの(色なし)、②さらなる議論が必要なもの(黄色)、③特徴というよりは成果に関連するもの(緑色)、④議論されなかったもの(青色)、⑤削除が検討されるもの(赤色)の5つに色分けがなされました。

【色分け表】協力強化の高いレベルの特徴に関する意見を取りまとめた文書(得票順リストおよびスプレッドシート)

第二回会合後、同じく第二回会合期間中に送付された「どのような勧告を行うべきかを取りまとめたコンピレーション」(上記2つ目の質問に関するもの)に関し、改めて意見募集が実施されました(ただし、前回提案を提出した者に限定)。その結果、第三回会合前に以下の2つの文書が共有されました。また、第二回会合を踏まえた協力強化の高いレベルの特徴に関する議長の統合文書も共有されました。

(1)コンピレーションの修正・追加のために改めて提出された意見をまとめたもの
(2)改訂版「どのような勧告を行うべきかを取りまとめたコンピレーション」


(第三回会合が開催された会議場の入口(国連ヨーロッパ本部))

2. WGEC 2.0 第三回会合に出席

(1)勧告提案の検討
5月3日、WGEC2.0の議長であるブラジルのBenedicto Fonseca Filho大使から、「今回の会合では勧告提案に焦点を当てて議論を行いたいと考えているが、われわれのマンデートは、意見の相違を考慮に入れながら、協力強化の概念をいかに実施するかに関する勧告を提供することであるから、コンセンサスに達することができそうな勧告から優先的に検討していくべきである」との発言がありました。その上で、本検討の取り進め方につきメンバーの意見を聞きたいとの発言がありました。

この点、議長からは、他のフォーラムや国際機関で議論されているものについては、議論の重複(duplication)を避けるためにも検討の範囲外とすべきであるし、またわれわれは他の機関に直接的な影響を及ぼすことはできないのであって、こうした影響を及ぼそうとする勧告提案についてもマンデート外とすべきであるとの発言がありました。加えて、チュニス・アジェンダ世界情報社会サミット(WSIS)+10成果文書の文言を繰り返すことや解釈を深めるといったことも避けるべきとの発言があり、論点の逸脱を避けつつ効率的かつ確実に議論を進めたいとの議長の意向がはっきりと示されました。

議長の冒頭発言の後、議題案の採択が提起されましたが、市民社会の代表メンバーの一人であるRichard Hill氏から、もう少し議題を正確なものとすべきとの発言があり、Richard Hill氏の修正を施した議題案が、特段の異議なく採択されました。その後、いくつかのメンバーから、協力強化の高いレベルの特徴について再び議論する機会を設けるべきといった意見や、本ワーキンググループの報告書(成果文書)の構成についても議論を始めるべきといった意見等がありました。これらについては、議長から、時間があれば報告書(成果文書)の構成との関連で協力強化の高いレベルの特徴についても議論する機会を今後設けたいと思うが、本会合ではまず勧告提案に関する検討から始めたいとの発言がありました。

議題案採択後、議長の求めに応じ、第二回会合後に改めて意見提出を行ったメンバーが、それぞれのポイントにつき3分程度で順にプレゼンテーションを行う機会が与えられました。プレゼンテーションの後、再びどのように勧告提案を検討していくかにつき話し合われ、勧告提案が100以上あるので検討する勧告提案の数を減らすべきといった意見や、小グループに分かれて議論すべきという意見、何らかの基準を設定したりカテゴリー分けをすべきといった意見等があり、結果的に議長主導で非公式会合が開催されることになりました。

関心メンバーのみを集めた非公式会合では、コンセンサスの可能性に応じて勧告提案をカテゴリー分けした事務局作成の文書(Categories Exercise)が共有されました(それぞれの勧告提案の内容については改訂版「コンピレーション」を参照)。このカテゴリー分けに不満を有する一部メンバーとの間で激しい議論となりましたが、議長が押し切る形で、この文書のカテゴリー1に掲載された勧告提案から順に検討していくことになりました。

結局、5月3日の午後と5月4日のほとんどの時間を、カテゴリー1に掲載された勧告提案26からuncategorised 4の検討に費やすこととなりました。検討された勧告の中には、勧告ではないといったものや報告書(成果文書)の前文に記載すべきといったもの、文言を修正すべきといったものが大半を占めました。

(2)協力強化に関する「新たなメカニズム」の必要性
5月5日、協力強化に関する「新たなメカニズム」の必要性の是非に関する議論が開始されました。そこでは、以下の順に勧告提案の説明、質問やコメントの受付、提案者による回答が行われました。

①ロシア(勧告提案49):政府間の形式で国連の独立した機関、枠組み、またはメカニズムを設置すべきとする提案。

②Parminder Jeet Singh氏(勧告提案72):経済協力開発機構(OECD)のデジタル経済政策委員会(CDEP)をモデルとした、新たな国連ベースのメカニズムまたは機関を設置すべきとする提案。

③インド(勧告提案75):国連の支援の下、中央集権化されたあらたな機関を設置すべきとする提案。

④イラン(勧告提案76~78):政府間で差別のない、政府間の新たなメカニズムを設置すべきとする提案。

⑤キューバ(勧告提案79~80):国連システムに関連した国際機関の創設、国連事務局のサポートを伴った常設的かつオープンなワーキンググループ、または国連インターネットガバナンスフォーラム(IGF)内に政府間メカニズムを設置すべきとする提案。

⑥サウジアラビア(勧告提案82およびuncategorised 6):既存の国連機構に組み込まれうるような、国連傘下の新たな枠組みまたはメカニズムを設置すべき、国連の資金援助を受けた国連傘下の政府間機関を通じた協力強化を行うべきとする提案。

⑦Jimson Olufuye氏(勧告提案83):国連開発のための科学技術委員会(CSTD)が年次のフォーラムを開催し、そこで全ての政府が平等に、その他の利害関係者の参加も伴ってインターネットに関する公共政策課題を議論すべきとする提案。

⑧Anriette Esterhuysen氏(勧告提案uncategorised 1):政策決定を行わず、また新たな機関あるいは政府間組織を設立したり、国連の既存のマンデートを拡張したりしない、さらには既存のプロセスと重複しないようなプラットフォームを立ち上げ、そこで政府が議論を行ったり政府によるIGFへの参画を強化できるようにすることを提案。

上記8つの提案に関する議論の中でさまざまな意見が交わされましたが、(1)インターネット公共政策を議論・実行する何らかの新しい機関やメカニズムが必要と主張するロシア、キューバ、パキスタン、インド、イラン、サウジアラビア、ケニア、一部の市民社会と、(2)そうした新たな機関やメカニズムを設置すべき緊急性や付加価値(added value)が不明な上、既存のメカニズム(各種国際機関)との権限関係や作業の重複可能性の観点から懸念があり、支持できないとする米国、英国、カナダ、日本等の先進国メンバーおよびビジネスコミュニティーとの間で意見が対立し、議論は平行線に終わりました。

なお、この議論の過程で、Tunis Agendaの実施状況、協力強化とIGFとの関係、キャパシティー・ビルディングの位置づけ、協力強化における政府や他のさまざまな利害関係者の立ち位置等に関する意見の相違が浮き彫りとなりました。


(第三回会合の様子)

3. 今後の取り進め方
会合の終盤にさしかかり、一時報告書(成果文書)の構成に話が及びましたが、議長から、本会合で報告書の具体的な構成を議論することは時期尚早であり、(その関連で話が及んだ)協力強化の高いレベルの特徴もここで再び議論する時間はない旨の発言がありました。結果的に、今回取り上げることができなかったその他の勧告提案、報告書の構成やドラフティング作業に関する議論等は次回会合以降に持ち越されることになりましたが、一部のメンバーから、議論を効率的に進めるためにも、次回会合に向けてメールベースで議論を行ったり電話会議を開催することにつき支持する旨の発言がありました。

次回会合の開催日程については、CSTD事務局から、9月25日から27日しか会議室が空いていない旨の発言がありましたが、具体的な開催日程や今後の取り進め方については、今後案内される予定となっています。

4. 結びにかえて
今回の会合では、協力強化に関しどのような勧告を行うべきかを中心に議論が行われました。議長の効率的な議事進行に基づき、勧告提案のうち合意に達しうるものから検討(”early harvest”や”low-hanging fruit”という用語がよく使われます)していきましたが、ほとんどの勧告提案につき、その内容や細かな文言につき意見の相違があり、コンセンサスに達することはありませんでした。

英国が提案した「全ての利害関係者が関与する形でベスト・プラクティスを推進すべき」といった勧告や「文化・言語の多様性やキャパシティーの制約を考慮に入れた上で、途上国出身の利害関係者の参加を促進すべき」といった勧告はおおむね支持を得られているようでしたが、これらの提案についても、紹介時に「協力強化プロセス(enhanced cooperation processes)の文言の意味が分からない」といった批判が出るなどしました。

今回も、議長の采配は全体として称賛に値するものでしたが、似通った勧告提案があるにもかかわらずそれを個別具体的に検討していったことにより、想定以上の時間がかかってしまったのではないでしょうか。例えば、各メンバーの反応にもよりますが、英国提案(uncategorised 4;そして類似のEU提案41)は複数の勧告がきれいにまとまっておりましたので、こちらから検討を始めても良かったのかもしれません。

具体的な議論に入れば入るほど、それぞれのメンバー(加盟国22カ国、ビジネスコミュニティー5名、市民社会5名、技術コミュニティー・アカデミア5名、国際機関5名)のみならず、サウジアラビアのようにオブザーバーとして参加している主体がどのような立場を有しているのかが鮮明となってくるため、議論はさらに難しくなります。しかし、現時点で世界の193カ国が加盟している国連の総会が経済社会理事会を通じ、CSTD議長に対しこのWGEC2.0の設置を要請したこと、そして2018年5月に開催される第21回CSTD年次総会に報告書を提出することがWGEC2.0に求められていることの重みを忘れてはなりません(国連総会決議A/RES/70/125)。

Yahoo! JAPANは、世界中の誰もが自由に参加できる、グローバルで共通な環境であるインターネットの本質的価値を損なう主張や、インターネットガバナンスにおける国家主権を強化し、さまざまな利害関係者がインターネット公共政策にアクティブに関与するというマルチステークホルダー・アプローチを損なうような主張に対し毅然とした態度で対抗していくためにも、友好国やビジネスコミュニティーと密接に連携しながら、今後もWGEC2.0の累次の会合に出席していきます。


(レストラン・レザミュールのディナー(Restaurant Genève Les Armures))


(K・M)