Yahoo! JAPAN 政策企画

世界情報社会サミット(WSIS)フォーラム2017に出席(後編)

2017年6月12日から16日にかけて、スイス・ジュネーブの国際電気通信連合(ITU)本部およびジュネーブ国際会議センター(CICG)において、世界情報社会サミット(World Summit on the Information Society : WSIS)フォーラム2017が開催されました。後編では、Yahoo! JAPANが参加したその他の会合やワークショップのいくつかをご紹介します。

1. WSISフォーラム2017の結果概要
6月12日から16日にかけて、さまざまな会合やワークショップが開催されました。6月13日から14日にかけては、14のハイレベル・ポリシー・セッションも開催されました。「開発のための情報通信技術(ICT for development)」コミュニティにとっての最大規模の年次会合として、今年も「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成や「WSISアクション・ライン(WSIS Action Lines)」の実施のためのさまざまな議論が行われました。

・WSISフォーラム2017のアジェンダ:https://www.itu.int/net4/wsis/forum/2017/Agenda/#intro

WSISフォーラム2017終了後そのホームページに掲載された「成果(Outcomes)」によりますと、フォーラム期間中、150カ国以上から実に2,000人を超える利害関係者が参加したとの事でした。
Yahoo! JAPANは、今回もさまざまな会合やワークショップに出席しましたが、ここではそのうち2つを取り上げ、以下紹介します。

2. 出席したワークショップの概要
(1)Innovating Together: How to Utilize ICT for Achieving SDGs?
6月15日、日本政府主催にて、持続可能な開発目標(SDGs)の達成するためにいかにして情報通信技術(ICT)を活用するかにつき、日本企業の実例を紹介するワークショップが開催されました。そこでは、ITUのHoulin Zhao事務総局長から冒頭の発言があった後、日本企業のパネリストとして富士通、古河電工、日立、三菱電機、日本電気(NEC)、日本電信電話(NTT)がそれぞれの取り組みについて説明を行いました。

NECからは指紋認証システムや監視システムといった公共安全に向けた取り組みについて、日立からはビッグデータや人口知能(AI)を用いたヘルスケア分野における取り組みについて紹介がありました。また、富士通からは、世界的な人口増加と資源の枯渇を踏まえた上で、スマートシティー、災害対策、スマートモビリティー&マニュファクチャリングに関する取り組みについて、三菱電機からは、企業の社会的責任(CSR)がコーポレート・マネージメントの礎石であるとし、環境保護や資源エネルギー分野における取り組みについて紹介がありました。NTTからは、東南アジア各国におけるICTソリューションのパイロット・プロジェクトについて紹介があり、古河電工からは、日本における光アクセスネットワークを紹介しつつ、光ファイバーネットワークの構築に自社製品が果たす役割について説明がありました。

その後の質疑応答では、会場から、スマートシティーに関し各社が取り組んでいるプロジェクトやセンシティブデータの保護に関する質問、そして、問題は日本企業各社が紹介した最新の情報通信技術(ICT)をいかに途上国の条件に適合させローカライズするかであり、途上国のニーズを踏まえた全体的なアプローチが必要とされているといったコメントがありました。

日本政府主催のワークショップの様子を正面からとらえた写真。モデレーターとパネリストが7名並んで座っている。

(ワークショップの様子 *ITU Pictures(Flickr)から引用(© ITU/R.Farrell))

(2)Action Line C9. Media: Strengthening Privacy, Encryption and Source Protection for Media Freedom and Internet Development
6月15日、国連教育科学文化機関(UNESCO)主催にて、3つの出版物、すなわち「Protecting journalism sources in digital age」、「Human rights and encryption」、および「Privacy, free expression and transparency」とそれらの主要な成果について紹介しつつ、プライバシーや暗号化、報道の自由の確保にとって必要なジャーナリスト等情報源の保護を取り巻く状況を議論する会合が開催されました。そこでは、UNESCO表現の自由・メディア開発部のXianhong Hu氏がモデレーターを務め、表現の自由に関する国連特別報告者(UN Special Rapporteur on Freedom of Expression)である David Kaye氏をはじめ、上記出版物の著者や欧州評議会(Council of Europe)、インターネット協会(ISOC)の関係者等が登壇しました。

会合の終盤、カメルーン政府が反政府デモ対策でインターネットを遮断(いわゆる「インターネットシャットダウン」)したことに話が及び、出席していたカメルーン政府関係者がそれを否定する一幕もありました。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)主催のワークショップの様子をとらえた写真。全登壇者のうち4名が写っている。

(ワークショップの様子 *ITU Pictures(Flickr)から引用(© ITU/R.Farrell))

(3)Challenges and Opportunities for Journalism Online
6月16日、欧州評議会(Council of Europe)主催にて、ニュースメディアやジャーナリズムが現在直面している課題や機会について、いわゆる「フェイクニュース(Fake News)」の問題を取り上げながらプレゼンテーションや議論が行われました。そこでは、Council of EuropeのMałgorzata Pęk氏がモデレーターを務め、UNESCO表現の自由・メディア開発部のXianhong Hu氏をはじめとし、大学の先生方やコンサルタント、ジャーナリスト等、この分野の専門家が登壇しました。

ワークショップの中では、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)経由でニュースを閲覧する人が米国やヨーロッパ各国で増加している一方、新聞紙の発行部数が各国でかなり減ってきていること、フェイクニュースで6カ月間に約60,000ドルも稼いだマセドニア人がいること、GoogleやFacebookが始めた事実確認プロセスの内容、そしてジャーナリズムの倫理等、多岐にわたり報告が行われました。

ディグ・ディーパー・メディアのプレゼンテーション資料。ニュースの事実確認プロセスが掲載されている。

(Dig Deeper Media Ltd.の考える事実確認プロセス)

3. ネットワーキング・イベント
今年のWSISフォーラムにおいても、さまざまな利害関係者と意見交換を行う場が多数用意されていました。6月13日に開催されたレセプションでは、世界各国の利害関係者と意見交換を行うことができましたが、日程が重なっていた国連インターネットガバナンスフォーラム(IGF)・マルチステークホルダー諮問グループ(MAG)第二回会合に出席していたMAGメンバーも数多く本レセプションに出席していましたので、そうしたMAGメンバーとより長く意見交換を行いました。

4. 会合を終えて
昨年同様、今回のWSISフォーラムでもさまざまな会合やワークショップに参加し、情報通信技術(ICT)がWSISアクション・ラインの実施のみならず、持続可能な開発目標(SDGs)の実施において果たす役割とその可能性を実感することができました。

今回のWSISフォーラム参加を通じて顕著に感じたことは、中国の勢いです。中国関係者が登壇していない会合やワークショップの方が少ないのではないかと思うぐらいの状況で、中国が官民を挙げてインターネットガバナンスにおけるプレゼンスを向上しようとしていること、そして自らの意見や立場を国際的なルールメイキングに反映させていこうとしていることが伝わってきました。

世界では、インターネットにアクセスできていない人がいまだ約40億人に達していること、そしてインターネットにアクセスできる国や地域においても、何らかの法規制や政策等でインターネットを自由に利用できない状況があることを、私たちは忘れてはなりません。そしてその上で、グローバルでオープンな環境であるインターネットをどのように管理していくかという、インターネットガバナンスの国際的議論にどのように取り組んでいくべきなのか、今一度真剣に考えていかなければならないと痛感しました。

国際的なルールメイキングに自らの意見や立場を反映させるためには、ネットワーキングや意見交換、セッションの開催等を通じてプレゼンスを高め、国際的な場で重要なポジションに就き、政府や国際機関等、意思決定権者に直接インプットできるようになる必要があります。それには時間もコストもかかりますが、相手のルールの上で競い合うコストと、自らに有利なルールの上で競い合うためのコストのどちらに意味があるのか、中長期的視点で考え、臨機応変に対応していくことが今後必要となっていくでしょう。

(K・M)