Yahoo! JAPAN 政策企画

アジア太平洋地域のインターネット・ガバナンス・フォーラムにてYahoo! JAPANがワークショップを主催しました

2017年7月26日~29日にタイのバンコクで開催された、アジア太平洋地域のインターネット・ガバナンス・フォーラム(Asia-Pacific Regional Internet Governance Forum、通称APrIGF)にYahoo! JAPANも参加してきましたので、その様子を報告します。

1. インターネット・ガバナンス・フォーラムとは
インターネット・ガバナンス・フォーラム(通称IGF)とは、2005年の「チュニス・アジェンダ(Tunis Agenda for the Information Society)」によって国連のもとに設けられたもので、さまざまな利害関係者(マルチステークホルダー)がインターネットに関する公共政策課題を議論するために、2006年以降、毎年1回開催されています。

APrIGFは、このIGFの地域版イニシアチブで、アジア太平洋地域におけるインターネット・ガバナンスの発展のために、マルチステークホルダーがインターネットに関する公共政策課題を議論する場です。インターネットは特定の国や団体に所属するものではなく、世界中の人の共通の財産なので、ルールメイキングや課題解決に関しても様々な国や立場の人が参加することが奨励されています。
APrIGFは、2010年以降毎年1回開催されており、2012年には東京で、今年はバンコクで開催されました。今回Yahoo! JAPANからは、インターネット・ガバナンスを担当する筆者(野口明香里)が参加し、ワークショップを1つ主催するとともに、他団体主催のワークショップにゲスト登壇しました。

開会式にて、イベント主催者やゲストが記念撮影する様子
(写真:開会式にて、イベント主催者やゲストが記念撮影する様子)

2. Yahoo! JAPAN主催ワークショップ “Inclusive and multilateral approach to protect the youth online; a priori and posteriori solutions from Asia-Pacific”
「オンライン上の違法有害情報から子どもたちを守るために、問題が起こる前と後で出来ること」をテーマに、香港、タイ、台湾、フィリピンからパネリストを招いてワークショップを主催しました。各国における子どものインターネット利用やそれにまつわるトラブルの現状、問題を起こさせないための取り組みを紹介し、今後子どもたちがどのようにインターネットと関わっていくのが望ましいかについて議論しました。

パネリスト全員で記念撮影。右から3番目が筆者
(写真:パネリスト全員で記念撮影。右から3番目が筆者)

まずYahoo! JAPANからは、子どもに一番近い大人である保護者が、子どものインターネット利用に不安を感じている現状と、その打開のための以下の取り組みを紹介しました。「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」は、学識経験者・学校関係者・保護者で構成される専門家会議で、近年急速に広まる子どものインターネット利用について、保護者向けのガイドラインを発行し、単に子どもの年齢で判断するのではなく発達段階に応じて適切な機器の利用を進めるよう促しています。また秋田県などの地方自治体と協働し、ネットセーフティ教育を地域に根付いた社会教育として広める活動をしています。限られた専門家だけで全ての家庭に教育啓蒙活動を届けることは困難ですし、子どもは成長して常に新しい対象家庭が生まれます。地域に「少し詳しい大人」を増やすことで、ネットセーフティ教育が家庭や地域に根付き、ごく自然に家庭内でインターネット利用について対話が出来るようになることが、健全なインターネット利用の促進や、問題の防止につながると期待しています。

DotAsia Organization LimitedのDavid Ng氏からは、NetMission Ambassadorという小学生以上の学生を対象に、ロールプレイングやゲームを通じてインターネットにおけるプライバシーや表現の自由、ヘイトスピーチ問題を考えるプログラムが紹介されました。今回のAPrIGFにもアジア各国から60名以上の子どもたちが参加しており、幼い頃からこのような議論の場を経験し、将来のリーダー育成に繋げる狙いだそうです。
Yidian EducationのChris Zhang氏からは、子どもがオンライン上の課題について主体的に学び、学んだ知識を親に伝える教育プログラムが紹介され、「教育とは親から子に教えるもの」と無意識のうちに考えていたことに気づかされました。
台湾の国立政治大学Vivian Huang教授からは、子どもが自然にネットセーフティ教育に触れられるよう、ネットいじめやプライバシー侵害などを題材にした映画や絵本を製作する取り組みが紹介されました。
GoogleのJirawat Poomsrikaew氏からは「大人が子どもを守るだけではなく、子どもが自分自身を守れるように教育することが肝心だ」という考えのもと、同社が導入しているプライバシーやフィルタリングの個人設定機能や、特定の違法有害キーワードの検索結果にホットラインセンターを表示させる取り組み、Google Driveに児童ポルノなどの違法画像を保管できないようにする取り組みなどが紹介されました。
ECPAT InternationalのMarie-Laure Lemineur氏からは、昨今様々な問題がインターネット上で起こっているが、その根底にあるのは善悪の判断や人としての振る舞い方、価値観であり、オフラインで許されないことは匿名のオンライン上であったとしても許されないという倫理教育が肝心であるとの意見が出されました。
Internet SocietyのNoelle Francesca de Guzman氏からは、各国の子どものインターネット利用状況とネットセーフティ活動をまとめた「アジア太平洋地域における子どものネットセーフティ活動についてのレポート」が紹介されました。(英語サイト)

パネルディスカッションでは、子どもとインターネットを取り巻く諸問題に対し、今後どのように各ステークホルダーが行動し、連携していけばよいのかについて議論がなされ、以下のような意見が出されました。

・インターネットと子どもの教育の問題は比較的新しい分野なので、ルール整備が追いついていない場合もある。現状の法律やルールだけに則るのではなく、現状に即して各ステークホルダーが積極的に必要な対応を行うのが望ましい
・急速にオンライン化が進む時代に逆行することは不可能なので、子どもからインターネットやデジタル機器を遠ざけようとするのではなく、一緒に問題を理解すること、家庭内でインターネット利用について対話を欠かさないことが大切である
・インターネットが子どもたちの身体的・精神的成長に与える影響については、医療専門家や教育専門家の見解も求められるので、今後はより一層の情報連携が求められる

インターネットという便利なツールの登場は、急速に私たちの生活や時間の過ごし方を変えました。その便利さを享受する一方、他者の人権を侵害する言動や間違った情報を拡散するユーザーがいるのも事実です。子どもたちがオンライン上のトラブルに巻き込まれることなく、正しい知識を持ったインターネットユーザーとして健全に成長していけるよう、政府、企業、教育関係者、研究者、市民社会、保護者、子ども自身など各ステークホルダーが積極的に各役割を考え行動することが大切だと思います。

パネリストとネットミッションアンバサダーの子どもたちが記念撮影
(写真:パネリストとネットミッションアンバサダーの子どもたちが記念撮影)

3. ワークショップ“Detecting and removing child sexual abuse material. How is APAC doing?”にゲスト登壇
児童買春根絶のための国際的ネットワークECPAT Internationalと、オンライン児童ポルノ削除のための国際的ネットワークINHOPEが共同主催したワークショップに登壇し、以前にこのブログでも記事にしたセーファーインターネット協会(SIA)の活動を紹介しました。
Yahoo! JAPANのほか、タイやインドのホットライン、国際刑事警察機構(ICPO、通称インターポール)からもパネリストを招き、各ホットラインがどのような活動をしているか、その活動がインターポールの捜査にどう繋がっているかについて説明がなされました。

SIAでは、一般ユーザーやINHOPEメンバーからの通報に基づいて違法有害情報を確認し、ガイドラインに則ってサイトオーナーやプロバイダーに削除依頼をしていますが、インドでは児童ポルノの閲覧自体が違法行為となり、インド国内で確認することも出来ないため、イギリスに拠点をおくホットラインIWF (Internet Watch Foundation)と協力して業務を行っているそうです。また、性犯罪被害者のプライバシーや人権などに関わる法整備もまだ課題が多いとのことで、国による違いに驚きました。

SIAをはじめ各ホットラインから寄せられた情報はインターポールのデータベースに共有され、各国警察と連携しながら実際の被害者の救出や加害者の特定に役立てられています。通報されることで被害が可視化し、被害者の救出につながるので、違法有害情報と思われるコンテンツを発見した際は是非通報をお願いします。匿名での通報が可能です。
(セーフライン通報フォーム:https://www.safe-line.jp/report/

ワークショップの様子
(写真:ワークショップの様子)

4.むすびにかえて
これまで紹介した内容以外にも、会場では、忘れられる権利やオンラインハラスメントなど様々なテーマについてワークショップが開催され、多くの人で賑わっていました。インターネットは本来、誰もが自由に接続でき、意見や情報を発信できるグローバルで共通な環境です。そのインターネットの健全な管理・運営についてもマルチステークホルダーによるオープンな議論が行われています。もはや私たちの生活になくてはならないインフラとも言えるインターネットは、便利な一方リスクもはらんでいます。だからこそ、ルールメイキングを人任せにせず、問題意識を持って積極的に参加することが大切ではないでしょうか。ますますグローバル化する世界の中で、日本の意思と問題意識を意思決定権者にインプットし将来のルールメイキングに繋げるためには、「機会があれば打って出る」姿勢とそのための能力を磨くことを忘れてはいけません。

Yahoo! JAPANは、日本のインターネット企業として、国境を越えた表現活動や経済活動をより活発化することのできる、グローバルで共通な環境というインターネットの本質的価値を守るために、そしてより多くの人々や社会の課題を解決し新たな希望を作り出すために、今後もインターネット公共政策のあり方を考えていきます。
(野口明香里)

アジアのハブ都市として急速に発展するバンコクの夜景
(写真:アジアのハブ都市として急速に発展するバンコクの夜景)

(参考)昨年の2016 APrIGF Taipeiの報告記事:
https://publicpolicy.yahoo.co.jp/2016/08/0809.html

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