Yahoo! JAPAN 政策企画

若手国際法曹協会(AIJA)のセッション「This is Your Digital Death: RIP or Staying Alive?」に参加

2017年8月28日から9月1日にかけて、新宿ヒルトンホテルにおいて、若手国際法曹協会(AIJA)の東京大会が開催されました。今回、Yahoo! JAPANから別所直哉執行役員が参加し、8月30日のプライベート・クライアント・コミッション主催のセッション「Working Session 2 - This is Your Digital Death: RIP or Staying Alive?」においてスピーカーを務めてきましたので、ご紹介します。

1. 若手国際法曹協会(AIJA、International Association of Young Lawyer)とは?
AIJAは、45歳以下の弁護士および企業内法律関係者を対象とした唯一の世界的な若手法曹団体です。1962年に創設されて以降、現在では世界100カ国以上に4,000人の個人会員がおり、日本弁護士連合会を含む60以上の世界の主要な団体会員が加盟しています。詳細については、AIJAの公式ホームページや、AIJA東京大会組織委員会のフライヤーでご覧になれます。

AIJAは、若手法曹に国際的なネットワーキングの機会を提供しているのみならず、約20の専門分野ごとの委員会(scientific commissions)を設置し、それぞれの専門分野における法務の最新情報やイベント情報を提供しています。

2. 若手国際法曹協会(AIJA)・東京大会について
AIJAは、毎年、世界各地で年次大会を開催しています。今年の第55回年次大会は、8月28日から9月1日にかけて、東京の新宿ヒルトンホテルで開催されました。

東京大会のプログラムでは、今回の目標として、世界各国から500~600名の弁護士や企業内法律関係者に参加をしてもらうこと、50時間のトレーニングの機会を提供すること、プロフェッショナル・ネットワーク構築のための国際的な場を提供すること、5日間にわたってソーシャル・ネットワーキング・イベントを開催することが掲げられていました。

プログラムの詳細については、こちらをご覧下さい。

3. モデレーターを務めたセッションの概要
今回、Yahoo! JAPANは、8月30日のプライベート・クライアント・コミッション主催のセッション「Working Session 2 - This is Your Digital Death: RIP or Staying Alive?」に参加しました。このセッションは、ソーシャル・メディア・プラットフォームにおけるデジタル資産(digital assets)の取扱いに関し、ラウンドテーブル形式で登壇者と参加者が議論を行うもので、ユーザーアカウント上に保存されているメールや画像・動画、電子書籍等のデータ、仮想通貨といったデジタル資産が各国の法律上どのように取り扱われているのかについてや、各事業者の対応、現在直面している課題や今後の解決策等について意見交換が行われました。

ヤフー・ジャパンが参加したセッションの登壇者が並んで座っている様子。右から2番目がヤフー・ジャパンの別所執行役員。

(本セッションの登壇者:右から2番目がYahoo! JAPANの別所執行役員)


セッション冒頭、ブラジル、スイス、ロシアの国別報告者から、以下の質問事項に関するそれぞれの国の状況について説明がありました。

(1)デジタル資産は死後に相続可能となっているか。
(2)被相続人の財産との関係で相続税が課されるか。もし相続税が課される場合、被相続人のデジタル資産はどのように評価されるのか。
(3)個人または執行人/管財人の同意を得ずにパスワードを用いてオンライン・アカウントやデジタル資産にアクセスした場合、プライバシーに関するルールに違反することになるのか。
(4)執行人/管財人が正式な許可(grant)を得ずにオンライン・アカウントにアクセスした場合、何らかの法律違反となるか。
(5)遺言の中で言及されているデジタル資産の場合、その管轄権はどのように決められるのか。
(6)多くのデジタル資産が被相続人の知的財産となりうるが、デジタル資産との関係で著作権法の中に関連規定は存在するか。
(7)デジタル形式の遺言は認められているか。すなわち、有効な遺言となるための要件として、デジタル形式の遺言を有効な遺言と認める旨の規定が置かれているか。
(8)デジタル資産との関係で立法の必要性があるか。あるとすれば、どのような提案を行うか。

デジタル資産の取扱いに関する立法の必要性についての各国報告者の見解がスライドに映し出されている様子。

(デジタル資産の取扱いに関する立法の必要性についての各国報告者の見解)


国別報告者による説明後、Yahoo! JAPANの別所執行役員を含むスピーカーが、それぞれのラウンドテーブルに着席し、そこに一般参加者も同席する形で、それぞれのラウンドテーブルでデジタル資産に関するさまざまな議論が行われました。

別所執行役員からは、日本では所有権は有体物に対してのみ認められるため、デジタル資産のような無体物に対する所有権を認める規定がないことに言及しつつ、デジタル資産の相続について直接的かつ具体的に明示した規定がないため、民法第896条や著作権法第59条といった一般規定によって整理されることを説明しました。また、デジタル資産の法律上の取扱いが確立していないために事業者の利用規約が重要になるとしつつ、Yahoo! JAPANで過去に提供していた「Yahoo!エンディング」というサービスの紹介や、現在の故人のアカウントの取扱い、今後利用規約に取扱いを明記することの可能性等について実例を挙げながら説明しました。

ヤフー・ジャパンの別所執行役員がラウンドテーブルでスピーカーを務めている様子。

(Yahoo! JAPANの別所執行役員がスピーカーを務めている様子)


なお、別のラウンドテーブルでは、Microsoft Japanの中島弁護士とFox Networks Group Japanの西川弁護士もスピーカーを務めました。中島弁護士からはMicrosoftにおけるデジタル資産の取扱いについて、西川弁護士からは日本における遺留分の制度や遺言状におけるデジタル資産の取扱い、電子遺言(digital wills)は民法上の遺言の要件を満たさないため有効な遺言として認められない等の説明がありました。

4. 結びにかえて
読者の皆さんは、「自分や家族が亡くなったら、オンラインのユーザーアカウントや保存していたコンテンツってどうなってしまうのだろう?」とか、「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の自分のアカウント上の写真や書き込みって、亡くなった後家族に見られるのかな?」と、ふと考えたことはないでしょうか。

多くの人は、生前から死後のことについてあまり考えたがらないかもしれません。しかし、情報通信技術(ICT)の発達とともに、今後多くのものがさらにデジタル化されることは容易に予想できます。
また、内閣府の「平成28年版高齢社会白書」によれば、日本の高齢化率は世界一であり、今後相続に関する問題も増えていくでしょう。その中で、デジタル資産の価値をどのように考えるのか、家族の権利と故人のデジタル・プライバシーのバランスをどのように取るべきなのか、今後非常に重要な社会的テーマとなっていくことは間違いありません。

一方で、上記のように、日本ではデジタル資産の相続に関し直接的かつ具体的に明示した法律上の規定がないため、デジタル資産の取扱いについては個々の事業者の判断に委ねられており、各事業者の利用規約等での取扱いも統一されていないのが現状です。

このような状況下において、私たちは何をすべきなのでしょうか。デジタル資産の取扱いに関する法律上の規定やガイドラインの策定を求めていくべきなのでしょうか。Yahoo! JAPANとしては、ユーザーの皆さんの声を広くお聞きしながら自社のサービスに反映させていくとともに、デジタル資産の取扱いという、日本が今後直面していくであろう喫緊の法政策的課題について、皆さんと議論し検討していきたいと考えています。


(R.I, K.M)

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