Yahoo! JAPAN 政策企画

民法改正記念対談シリーズ (ダイジェスト版)「経済戦略としての民法改正」

今年、約120年ぶりに民法(債権法)の抜本改正が実現しました。民法改正を受け、法務省の参与として学界との橋渡しを担うなど、改正に向け中心的な役割を果たされてきた東京大学 内田貴名誉教授と、Yahoo! JAPAN執行役員 別所直哉が記念対談を行いました。すべての対談の様子は、文末記載の各ページよりご覧いただけますが、ダイジェスト版では、その一部をご紹介します。


森・濱田松本法律事務所にて
(左から、内田貴東京大学名誉教授、Yahoo! JAPAN執行役員別所直哉、Yahoo! JAPAN政策企画部今井理恵子)

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内田 貴
1976年東京大学法学部卒業、2007年法務省経済関係民刑基本法整備推進本部参与(~2014年7月)、2014年東京大学名誉教授、森・濱田松本法律事務所客員弁護士、2015年早稲田大学特命教授、2017年法務省法制審議会総会委員
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なぜ、民法を改正する必要があったのでしょうか。
内田:民法は、取引が安全に行われるための法的なインフラだと考えています。しかし、民法は、判例による解釈ルールが蓄積されてきたために、条文を読んでも分からないルールがあり、また、法定利率のように、民法制定当時は発展途上国であった日本を想定して定められた規定も存在しています。今回の改正の目的は、そうした条文を改めて見直すことで、国民にとってわかりやすく、そして現代の経済社会に対応できるものにすることにありました。

詳細はこちら⇒「民法改正にいたるまで」https://publicpolicy.yahoo.co.jp/2017/11/0815.html


新設された定型約款についての規定は取引実務にどのような影響を与えるのでしょうか。
内田:当初は新たな規制につながることなどを懸念して産業界から多くの反対意見がありました。しかし、議論が進むにつれて、反対が強かった規定案は削除され、定型約款の規定は取引実務を反映した内容になり、事業者にとっても不利益な要素はほとんどなくなっています。約款の効力について法的裏づけができたことで、取引の安定性が確保できるようになったことは、大きなメリットであり、最終的に産業界の理解も得ることができました。
特に、約款の内容を一方当事者が変更することについては、一定の取引実務では行われていたとはいえ、それについて明文規定をおいたことは他国に類を見ず、比較法的にもユニークな内容だと思います。このようにきちんとルールを作ったことは、約款によって行われる継続的な取引を安定させる、重要な手段になったのではないでしょうか。
別所:契約の一方当事者によって作成される約款は、現代の経済社会における大量取引に不可欠であるにもかかわらず法的な裏づけがなく、Yahoo! JAPANは、当初から取引の安定のために約款に関するルールの明文化を求めていました。IoTや自動運転など情報通信技術の発展により今後ますます約款を用いた取引が増えていき、その安定性を確保するために今回の約款に関するルールが重要になってくると考えています。

詳細はこちら⇒「『定型約款』制度の規定化をめぐって」https://publicpolicy.yahoo.co.jp/2017/11/0816.html

民法改正を受けて、産業界にどのようなことを期待しますか。
内田:日本は、約120年前にヨーロッパから民法を輸入しましたが、今回の改正は、自国に蓄積されてきた実務を基礎として行った自前の改正であり、非西洋国では初のケースだと思います。世界史的にみても、大きな意味のある改正だといえます。
東アジアにおける市場のボーダーレス化は、今後ますます拡大することが予想され、取引ルールを共通化する必要性も高まります。そのような中、日本の民法を東アジア経済圏における標準モデルとすることは、経済戦略の観点からも重要です。とりわけ、日本の取引実務は、最先端の経済活動の中で形成されてきたものですから、これを民法にしっかり反映させるべきです。
とはいえ、それを本当に実現するには、今回の改正だけでは十分とはいえず、今後さらなる努力が求められていくと考えています。
これまで、民法は不磨の大典であり、法律家は、その解釈をするのが仕事だという意識がありました。しかし、今回の改正をきっかけとして、「民法は必要に応じて変えてもいいものだ」という意識が生まれました。今後は、取引実務の要請をいち早く反映させていくために、産業界からも積極的に立法への提言をしてほしいと思っています。

詳細はこちら⇒「経済戦略としての民法へ」https://publicpolicy.yahoo.co.jp/2017/11/0817.html


民法改正記念対談シリーズ

(上)「民法改正にいたるまで」
(中)「『定型約款』制度の規定化をめぐって」
(下)「経済戦略としての民法へ」