Yahoo! JAPAN 政策企画

競売手続のオンライン化により競売の活性化を

政府の日本経済再生本部の下で裁判手続等のIT化検討会が開催されています。
これは、「未来投資戦略 2017」において、「迅速かつ効率的な裁判の実現を図るため、諸外国の状況も踏まえ、裁判における手続保障や情報セキュリティ面を含む総合的な観点から、関係機関等の協力を得て利用者目線で裁判に係る手続等のIT化を推進する方策について速やかに検討し、本年度中に結論を得る」とされたことを受けて開催されるものです。

第2回検討会が2017年12月1日に開催されましたが、そこでの事務局資料の6ページに「民事保全、民事執行手続、差し押さえ、仮差し押さえ、仮処分あるいは競売手続といったもののe-Filingが実現した場合、利便性が向上。特に、不動産の競売手続は、所在地において行われるが、インターネット等を利用し、どこからでも参加できることになればその効果はより大きい」との一文があります。

すでにYahoo! JAPANの官公庁オークションにおいては、インターネット公売として、各行政機関が税金などの滞納者から差し押さえた財産を国税徴収法などにのっとって売却する手続きの一部を実施し、落札された物件の買受代金を滞納者の未納税金などの支払いにあてるといった取り組みが行なわれています。

今回の検討会において議論されている競売手続は、債権を有している人(債権者)の申立てにより、裁判所が、債務を弁済することができなくなった人(債務者)の所有する財産を差し押さえて、これを売却し、その代金を債務の弁済にあてるものです。
民事執行法に基づく不動産競売の売却物件の情報は、インターネット上のBITとよばれる不動産競売物件情報サイトにおいて公開されています。
しかし現行法上、入札の方法は、入札書を執行官に直接差し出す方法と入札書を執行官に宛てて郵送する方法に限定されています。また、次順位買受の申出は開札期日において執行官に対し行う必要があります。
このような規制により、一連の手続きをインターネットを通じて行うことができない状況にあります。

国税徴収法に基づく公売は、10年以上前からインターネット公売を通じて入札を行うことが可能となっており、現在までに1000以上の自治体により適切に手続きが実施されてきています。
インターネット公売によって、全国の方がインターネットを通じて簡単に入札に参加できるようになったため、落札率、落札価格が向上し、行政機関の税収の増加に繋がっています。また、民間の創意工夫により構築されたシステムを利用することで、担当者にかかる公売公告、入札者の管理、落札者の決定等の事務手続きにかかる工数、負荷も軽減され、公売会場の運営も不要となっています。
民事執行手続としての競売での入札においても同様の取扱いを可能とすることで、債権者はより多くの額の債権回収が期待でき、競売に関する事務手続きにかかる工数、負荷の軽減も期待することができるのではないかと考えています。

この点、「「規制改革ホットライン」で受け付けた提案及び所管省庁からの回答」において、以前法務省から以下のような回答がなされています。

現行の不動産競売物件情報サイトを通じての買受けの申出を可能とするためには,システム改修等,その運用を可能とするための相応の措置が必要となることが想定されます。また,インターネットが利用できる環境にない者へ入札の機会を等しく保障するとの観点から同一の物件について現行の入札方法を併存させる場合には,競売手続が複雑化し,手続費用も増大するおそれがあります。さらに,インターネットを通じての買受けの申出を可能とした場合でも,入札人が法人であるときには,代表者の資格証明書は別途提出してもらう必要がある等,買受希望者が行うこととなる事務の軽減にはつながらないと考えられるほか,入札人の入札資格を審査する手続として,他のインターネット公売手続と同様,買受申込期間とは別に,あらかじめ参加申込期間を設けるとすると,現在よりも競売手続が相当遅延するものと見込まれます。 このように,インターネットを通じての買受けの申出を可能とするためには,入札人の負担増加に対する配慮とともに,競売手続の適正さ・円滑さを確保するという要請との関係を踏まえた極めて慎重な検討が必要であると考えられます。
ここで懸念されているのは以下の4点のようです。 1.システム改修等が必要になること 2.インターネットが利用できる環境にない者へ入札の機会を等しく保障する必要があること 3.入札人が法人の場合には代表者の資格証明書を別途提出する必要があること 4.参加申込期間を設けると競売手続が相当遅延すること

しかし、3、4の問題は、オンラインによる本人確認等の工夫によって解決が可能なように見受けられますし、2の問題については、すでにインターネット公売における前例もありますし、官民データ活用推進基本法10条で定められているいわゆるオンライン化原則やデジタルファースト原則の趣旨や精神に反しているように思われます。

競売手続を実施する裁判所は、官民データ活用推進基本法10条で対象としている「行政機関等」には該当しないのかもしれませんが、裁判手続等のIT化についても官民データ活用推進基本法で定められている基本理念や基本的施策の趣旨や精神に沿って検討いただきたいところです。

(R.H)