Yahoo! JAPAN 政策企画

2016-2018協力強化に関するワーキンググループ(WGEC)・第四回会合に出席

2017年9月25日から27日にかけて、スイス・ジュネーブの国連ヨーロッパ本部において、2016-2018協力強化に関するワーキンググループ(Working Group on Enhanced Cooperation: WGEC)の第四回会合が開催されました。今回も、Yahoo! JAPANは日本政府の関係者とともにこの会合に参加しましたので、ご紹介します。

1. WGEC 2.0 第四回会合までの経緯
2017年5月3日から5日にかけて開催された第三回会合では、第一回会合の結果定められた以下の2つの質問のうち、2つ目の質問について議論が行われました。

(1)What are the high level characteristics of enhanced cooperation?
(2)Taking into consideration the work of the previous WGEC and the Tunis Agenda, particularly paragraphs 69-71, what kind of recommendations should be considered?

第三回会合では、第二回会合後に改めて意見提出を行ったメンバーが、それぞれのポイントにつき順にプレゼンテーションを行いました。その後、コンセンサスの可能性に応じて勧告提案をカテゴリー分けした事務局作成の文書(Categories Exercise)に基づき、カテゴリー1に掲載された勧告提案から順に検討していきました。カテゴリー1に掲載された勧告提案の検討終了後、今度は協力強化に関する「新たなメカニズム」の必要性について議論が行われましたが、(1)インターネット公共政策を議論・実行する何らかの新しい機関やメカニズムが必要と主張するロシア、キューバ、パキスタン、インド、イラン、サウジアラビア(※オブザーバー)、ケニア、一部の市民社会と、(2)そうした新たな機関やメカニズムを設置すべき緊急性や付加価値(added value)が不明な上、既存のメカニズム(各種国際機関)との権限関係や作業の重複可能性の観点から懸念があり、支持できないとする米国、英国、カナダ、日本等の先進国メンバーおよびビジネスコミュニティーとの間で意見が対立し、議論は平行線に終わりました。

第三回会合後、メールベースでさまざまな情報交換や議論が行われました。その中には、第三回会合の議長サマリーの修正を求めるものや人工知能(AI)に関するガバナンス等がありました。また、第四回会合に向けた準備として、これまでに提出された勧告提案を改訂し再提出する機会が設けられ、9月19日(本来の期限は9月11日)までに、いくつかのメンバーから再提出が行われました。

国連ヨーロッパ本部建物内の廊下の様子

(国連ヨーロッパ本部)

2. WGEC 2.0 第四回会合に出席
(1)報告書の構成
9月25日、まず議長であるブラジルのBenedicto Fonseca Filho大使から、WGEC2.0の成果を意識しながら議論を進めるべきとして、最終報告書の構成に関する素案が提示されました。この素案は、「コンセンサスが得られた勧告案」と「コンセンサスが得られなかった勧告案」の両方を区別して記載し、協力強化の実施のための「新たなメカニズム」の創設については、後者のコンセンサスが得られなかった勧告案として記載する形となっていました。これについては、コンセンサスが得られなかった勧告案についても報告書に記載することを支持するイラン、キューバ、ロシア、ペルー、インド、そして一部の市民社会等と、コンセンサスが得られなかった勧告案については報告書に記載すべきでない(あるいは付属書に記載する等、何らかの差異を設けるべき)とするカナダ、米国、英国、豪州、国際商工会議所(ICC/BASIS)等が対立しました。その結果、報告書の構成については後日再度議論を行うこととなりました。

(2)勧告提案の検討
その後、9月25日から9月27日にかけて、第四回会合に先立ち改めて提出された改訂版勧告提案、そして第三回会合で取り扱われなかった勧告提案について、以下の提出メンバーの順に検討・それぞれ議論が行われました。

①Richard Hill氏
②Nick Ashton-Hart氏
③Jimson Olufuye氏
④英国
⑤国際商工会議所(ICC/BASIS)
⑥サウジアラビア(※オブザーバー)、ロシア、パキスタン、Parminder Singh氏
⑦米国
⑧キューバ
⑨ペルー

本ブログでは、③Jimson Olufuye氏、④英国、⑥サウジアラビア(※オブザーバー)、ロシア、パキスタン、Parminder Singh氏、そして⑨ペルーの勧告提案について、どのような議論が行われたか、以下主なポイントのみ簡単にご紹介します。

③Jimson Olufuye氏
「国連開発のための科学技術委員会(CSTD)が年次のフォーラムを開催し、そこで全ての政府が平等に、その他の利害関係者の参加も伴ってインターネットに関する公共政策課題を議論すべき」とする提案が示されました。Marilyn Cade氏からこの提案を支持する旨の発言があった一方、「新たなメカニズム」の創設に反対するカナダ、米国、国際商工会議所(ICC/BASIS)等から支持できない旨の発言がありました。また、逆に「新たなメカニズム」の創設を目指すサウジアラビア(※オブザーバー)やParminder Singh氏といったメンバーからも、この勧告提案では不十分であるといった意見が示されました。

④英国
全体としてマルチステークホルダー・アプローチが採られており、情報公開や透明性・包摂性、途上国参加や支援、既存の枠組みの利用といった要素が勧告提案として挙げられていました。英国提案については、米国、カナダ、日本、情報サービス産業協会(JISA)の横澤誠氏、国際商工会議所(ICC/BASIS)、インターネット協会(ISOC)といったメンバーのみならず、スイス、EU、ラトビアといったオブザーバーからもおおむね支持する発言がありました。他方、ロシア、サウジアラビア(※オブザーバー)、Parminder Singh氏等のメンバーからは、実施の手段を欠いているといった発言やTunis Agendaとの関連性が薄いといった発言、さらには細かな文言について批判する発言が相次ぎました。キューバやインド等のメンバーからは、英国提案は何ら具体性のない原則論を言っているのみであって、Tunis Agendaの文言を繰り返しているにすぎないといったような発言もありました。

⑥サウジアラビア(※オブザーバー)、ロシア、パキスタン、Parminder Singh氏
サウジアラビア(※オブザーバー)、ロシア、パキスタン、そしてParminder Singh氏の共同提案の中核は、政府がインターネット公共政策に関与するための「新たなメカニズム」を創設することでした。しかしこれに対しては、米国、英国、カナダといったメンバーが、「新たなメカニズム」を創設しないということは、2005年にチュニジア共和国のチュニスで開催された「世界情報社会サミット(World Summit on the Information Society: WSIS)」や2015年に米国のニューヨークで開催されたWSIS+10国連総会ハイレベル会合で既に決まっていたはずであり、既存の組織やメカニズムがあるにもかかわらず、それと重複するような「新たなメカニズム」を創設する必要はないとして、反対する旨の発言を行いました。この「新たなメカニズム」の創設に反対する意見については、情報産業サービス協会(JISA)の横澤誠氏や国際商工会議所(ICC/BASIS)、インターネット協会(ISOC)といったメンバーが支持を表明しました。他方、これら反対意見に対し、共同提案のメンバーは、既存の国連組織では分野ごとの縦割りになっていることから、相互に連携させる機能が必要であること、政府として現状に問題があると認識しても国際レベルでそれを取り上げて議論する場がないこと等を挙げながら、反論を行いました。

⑨ペルー
ペルーの提案は、「インターネット公共政策に関する国際的な法的枠組みを構築し、また国内のインターネット公共政策が国際法と両立したものとなるよう、適用可能な国際法体系を特定するワーキンググループを設置することを勧告する」となっていました。この提案については、ロシア、サウジアラビア(※オブザーバー)、インド、Richard Hill氏、Parminder Singh氏等からおおむね支持する旨の発言がありました。また、Marilyn Cade氏からも、新たな法的枠組みの構築には慎重であるものの、現状把握の観点から使えるかもしれないので反対はしない旨の発言がありました。他方、カナダ、英国、米国、インターネット協会(ISOC)、そしてオブザーバーのオランダ等からは、既存の国際的な法的枠組みで十分であり、2015年のWSIS+10国連総会ハイレベル会合でもそうした意見に強い支持があった訳で、この提案は2015年に行った議論を蒸し返すもので支持できない旨の発言がありました。

(3)報告書の構成(再議論)
最終日の終盤、初日に行った報告書の構成に関する議論が再開されました。まず英国から、コンセンサスを得られた提案を勧告案として記載し、コンセンサスを得られなかった提案については全て付属書に記載する第二案が提示されました。これについては、米国、豪州、カナダ、日本、国際商工会議所(ICC/BASIS)、インターネット協会(ISOC)、情報サービス産業協会(JISA)の横澤誠氏等のメンバーが支持した上、EU、オランダ、ラトビアといったオブザーバーからも支持する旨の発言がありました。他方、協力強化の実施のための「新たなメカニズム」の創設を報告書に記載することを目指すロシア、サウジアラビア(※オブザーバー)、イラン、インド、Parminder Singh氏等のメンバーからは、英国提案に反対する発言や、報告書の見出しのみ取り上げ構成全体の議論を避けようとする発言がありました。

3. 今後の取り進め方
今後の取り進め方についても、最終日の終盤に若干の議論が行われました。その結果、第五回会合までの会期間の作業を、以下のタイムラインで進めることにつき、メンバー間で合意がありました。

・2017年10月15日:すでに提出された勧告提案の再改訂期限
・2017年10月末  :議長からの報告書案(第一案)の送付期限
・2017年11月末  :議長の報告書案(第一案)に対する修正提案の提出期限
・2018年1月第一週:修正提案を踏まえた議長からの報告書案(第二案)の送付期限

また、第五回会合(最終会合)を、他の会議との兼ね合いから2018年1月29日から31日の日程で開催することを選好する旨の発言がありました(その後、同日程で第五回会合を開催することにつき、開発のための科学技術委員会(CSTD)事務局から正式に連絡がありました。アジェンダ案については、こちらをご覧ください)。

第四回会合において,ある勧告提案の紹介を,議長とメンバーが真剣に聞いている様子

(第四回会合の様子)

4. 結びにかえて
以上のように、今回の会合では、このワーキンググループの成果物となる報告書の構成、そして協力強化に関しどのような勧告を行うべきかを中心に議論が行われました。前者については報告書の性質について、後者については「新たなメカニズム」創設の要否について、特に意見の隔たりが鮮明になったといえます。

次回2018年1月末に開催される第五回会合が、WGEC2.0にとっての最後の会合となります。同年5月に開催される第21回CSTD年次総会に報告書を提出することが求められていますので(国連総会決議A/RES/70/125)、まさに正念場を迎えることになります。

一方で、最終会合を前に、課題は山積しています。成果を意識した議長の采配、そしてメンバーによる協力的姿勢がさらに求められてくる訳ですが、しかしだからといって、真に課題の解決とならない提案や、現状をさらに複雑化する提案、このワーキンググループに与えられた権限を越えるような提案を受け入れることはできません。Yahoo! JAPANの立場は一貫しています。すなわち、世界中の誰もが自由に参加できる、グローバルで共通な環境であるインターネットの本質的価値を損なう主張や、インターネットガバナンスにおける国家主権を強化し、さまざまな利害関係者がインターネット公共政策にアクティブに関与するというマルチステークホルダー・アプローチを損なうような主張に対し毅然とした態度で対抗していきます。そしてそのためにも、友好国や意を共にするビジネスコミュニティーと緊密に連携しながら、最後のWGEC2.0会合に出席します。

在ジュネーブ国際機関日本政府代表部近辺にあるレストラン・ルイジアの各種ピザ

(レストラン・ルイジアのディナー(LUIGIA Pizzeria Genève))

(K・M)