Yahoo! JAPAN 政策企画

インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF Geneva 2017)に出席(前編)

2017年12月17日から21日にかけて、スイス・ジュネーブの国連ヨーロッパ本部(United Nations Office at Geneva:UNOG)およびジュネーブ国際会議センター(CICG)において、インターネット・ガバナンス・フォーラム(Internet Governance Forum: IGF)が開催されました。IGFは国連の下に設置されたもので、世界中の利害関係者(マルチステークホルダー)がインターネットに関する公共政策課題を議論するために、2006年以降毎年1回開催されているものです。詳しくはこちらをご覧ください。

今回、Yahoo! JAPANはこのIGFに参加し、いくつかのセッションに登壇しましたので、ご紹介します(※Yahoo! JAPANとして登壇したもの以外のセッション等については、後日後編の中でご紹介します)。

1. IGF Geneva 2017全体概要
12月17日から21日にかけて、さまざまなセッションが開催されました。今回のIGFのメインテーマは「Shape Your Digital Future!」で、とりわけ人工知能(AI)、IoT、ビッグデータ、ブロックチェーン、仮想現実(VR)、フェイクニュース、プラットフォーマー規制といった最近話題のテーマについて、非常に多くのセッションを通じて多岐にわたる議論が行われました。

セッションの形式としては、例年通り、通常のワークショップに加えて、メイン・セッション、オープン・フォーラム、ダイナミック・コアリッション、ベスト・プラクティス・フォーラム等がありましたが、今年は、ホスト国(スイス政府)主催のハイレベルテーマ別セッションが特別開催されたこと、そして、国別・地域別イニシアチブ(NRIs)と呼ばれる、各国・各地域版IGFの共同セッションが多数開催されたことが特徴的でした。

なお、ワークショップのテーマについては、主に以下のように分類されていました。

(1)アクセス、包摂性、そして多様性(Access & Inclusion & Diversity)
(2)重要なインターネット資源(Critical Internet Resources)
(3)サイバー・セキュリティー(Cybersecurity)
(4)デジタル経済、デジタルワーク、貿易、そして持続可能な開発(Digital Economy & Digital Work & Trade & Sustainable Development)
(5)ジェンダーと若年者(Gender & Youth)
(6)オンラインの人権(Human Rights Online)
(7)さまざまな利害関係者間の協力とガバナンス(Multistakeholder Cooperation & Governance)
(8)新たな技術と課題(New Technologies & Emerging Issues: AI – IoT – Big Data – Blockchain – VR – Fakenews)

全体のアジェンダについては、こちらをご覧ください。

ホスト国であるスイス政府が主催したハイレベルテーマ別セッションの様子

(ホスト国(スイス政府)主催ハイレベルテーマ別セッションの様子)

2. ワークショップ「Policy Challenges for AI Development (WS91)」に登壇
Yahoo! JAPANは、まず12月19日に、「Policy Challenges for AI Development (WS91)」というワークショップに登壇しました。このワークショップでは、人工知能(AI)の開発に際し直面するさまざまな技術的・政策的課題について、ブラジル、インド、中国からの大学教授や市民社会など、さまざまな立場のパネリストとともに、意見を表明し議論を行いました。AIといってもその定義や範囲が画一的に定まっているわけではなく、SF映画に出てくるような、人間と同じような複雑な判断ができるものから、画像認識や音声認識、自動運転などさまざまです。そのような中で、プライバシーや人権への配慮といったさまざまな懸念が挙げられていることも事実です。Yahoo! JAPANからは、Yahoo!ショッピングにおける最適な広告配信や、Yahoo! JAPANトップページのコンテンツのパーソナライズに機械学習を使用していること等を紹介した上で、AIに関わる課題として、AIの判断に基づく行為の責任の所在や、AIの判断理由を説明することの困難さ等を挙げました。そして、AIの開発を妨げるような過度な規制は望ましくないこと、プライバシーや人権といった大切な価値を維持しつつAIの開発を進めるためにも、国際的な協調が重要である旨発言しました。

ヤフー・ジャパンが「人工知能の開発に関する政策的課題」というワークショップでプレゼンテーションを行っている様子

(ワークショップの様子)

3. ワークショップ「Equipping populations with the skills to shape and secure their digital future (WS141)」に登壇
Yahoo! JAPANは、12月20日に開催された「Equipping populations with the skills to shape and secure their digital future (WS141)」というワークショップにも登壇しました。このワークショップは、国際商工会議所(International Chamber of Commerce: ICC)・情報社会支援ビジネスアクション(Business Action to Support the Information Society: BASIS)が主催したもので、登壇者と参加者がいくつかのグループに分かれ、一緒になって議論するブレークアウト・グループディスカッション形式で行われました。テーマは、ざっくりと言うと「先進国や途上国の現状を踏まえた上で、デジタル経済に必要な技能をいかに身につけさせるか、またそうした人的資源をどのように配分するか」でした。

Yahoo! JAPANがモデレーターとして担当したグループには、日本に加えて、英国、イタリア、エジプトからの参加者が入り、事前に用意された質問リストをもとに、各国における現状や、政府、企業、市民社会や技術関係者といったそれぞれの利害関係者の役割について、非常に多岐にわたる議論を行いました。その後、Yahoo! JAPANから簡単なプレゼンテーションを行い、日本は「超高齢化社会」であり、2050年には総人口が1億人を切ると言われている中で、その労働生産性は先進7カ国(G7)諸国の中で最下位になるほど低いこと(※経済協力開発機構(OECD)調べ)、また、そのような状況の中で、官民が連携・協力しながら、教育の抜本的改革と老若男女を問わずIT技能を身につけられるような環境づくりを行うことが急務であること等を、日本政府の成長戦略である未来投資戦略2017やYahoo! JAPANがサイバー大学と行っているIT人財を育成する取り組みを紹介しながら説明しました。

このワークショップは、その後国際商工会議所のウェブページで詳細に紹介されましたので、こちらをご覧ください。スイス政府のイニシアチブであり、DiploFoundationによって運営されている「Geneva Internet Platform(GIP)」のウェブページでも紹介されました。

「デジタル未来を形成・確保するために必要な技能を人々に身につけさせる」といったタイトルのワークショップで、ヤフー・ジャパンが登壇している様子

(ワークショップの様子(©International Chamber of Commerce))

4. 小括
会合後の議長サマリーによれば、今回のIGFには、142以上の国から2,000人を超える人が200以上の各種セッションに現地参加し、加えて数千人がオンラインで参加したとの事です。
Yahoo! JAPANが参加した印象からは、やはり開催地がスイス・ジュネーブであったこともあり、ヨーロッパからの利害関係者の出席が多かったように感じられました。また、中国の利害関係者が登壇したセッションや中国からの現地参加者が例年にも増して多くなっていたとともに、ブラジルからの出席者も多かったようにも感じました。さらに、テーマとしては、中国におけるWhatsAppの一部遮断など、当局からのシャットダウン規制と表現の自由や、情報へのアクセス権等についての議論も多かったように感じました。いずれにせよ、世界各国の非常に多くの利害関係者が、インターネット・ガバナンスの重要性を認識し、このIGFという場をどううまく使っていくかを考えていることがうかがえます。

また、昨年に引き続き、官民問わず比較的多くの日本人関係者が参加・登壇し、数千人の参加者の中で日本のプレゼンスを示すことができたのではないかと思われます。IGFは何らかの意思決定を行う場ではありませんが、IGFで議論された事項は国内外の意思決定権者に伝わりますし、セッションや非公式会合を通じて提案されたものが、実際のルールやポリシーメイキングに反映されたり、ある国で実施されている措置が他国で実施されることも十分にあり得ます。また、国際舞台においては、「沈黙は金なり」は通用しない上、非常に速いスピードで進歩を続ける情報通信技術(ICTs)に関する法政策分野においては、世界に遅れずについていくのみならず、可能な限りその中でリーダーシップをとっていくことが今後につながりますので、2018年も、これを維持・強化していく必要があります。

Yahoo! JAPANは、自社のプレゼンスのみならず、他の利害関係者とともに日本のプレゼンスの向上に寄与していきたいと考えています。そして、国境を越えた表現活動や経済活動をより活発化することのできるインターネットの無限の力を引き出せるような政策につながる「雰囲気」を醸成し、そうした政策が実際に国内外のルール・メイキングに反映されるよう、今後もIGFに参加していきます。

(A・N、K・M)

(※Yahoo! JAPANとして登壇したもの以外のセッション等については、後日後編の中でご紹介します。)