Yahoo! JAPAN 政策企画

IT業界のパパママたちによる「ネット×子育て」座談会

子どもにスマホやネットとどう付き合ってもらうか。親としては悩ましい問題です。 一方で、講演会などで紹介される例は、どれも立派なものばかり。 「完璧な親はいないし、子育ては思うようにはいかない。子どもとネットの問題もその文脈のなかで考えてみませんか?」ということで、今回はIT業界を引っ張るキーパーソンたちが、仕事上の立場ではなく、子育てをするパパママとして、子どもとネットにまつわる本音について語り合いました。

※この記事は、2月6日のSafer Internet Dayにちなんで開催されたシンポジウムのプログラムの一部として実施された企画『IT業界のパパママたちによる「ネット×子育て」座談会』の記録です。

モデレーター・パネリスト紹介

■モデレーター
クロサカタツヤ氏 / 株式会社 企 代表取締役
株式会社企(くわだて)代表。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。情報通信分野のコンサルティングなどに従事。
*小4女子、小1女子の父。

■パネリスト
五十嵐悠紀氏 / 明治大学 総合数理学部 専任講師
2010年東京大学大学院工学系研究科修了、博士(工学)取得。日本学術振興会特別研究員を経て現職。JSTさきがけ研究員、IPA未踏プロジェクトマネージャー等兼任。コンピューターグラフィックスの研究者として、子どもたち向けワークショップを展開する。
*小3男子、6歳男子(幼稚園)、2歳女子(保育園)の母。

江口清貴氏 / LINE株式会社 公共政策室長
「楽しいネットコミュニケーションを考えよう」というテーマのもと、全国で啓発活動するとともに、SNS事業者による「青少年ネット利用環境整備協議会」や「全国SNSカウンセリング協議会」を立ち上げ活動。
*小5女子の父。

別所直哉氏 / ヤフー株式会社 執行役員
1999年、ヤフー株式会社へ入社。法務、広報などの管掌を経て現在は執行役員インテリジェンス管掌。一般社団法人セーファーインターネット協会会長、立教大学院21世紀社会デザイン研究科兼任講師も務める。
*中3男子の父。

飯村由香理氏 / 総務省
総務省情報通信政策課等で、主に放送・情報通信政策を担当。2018年3月現在、ヤフーに人事交流で出向中。
*中1女子、小2男子の母。


■子どもにデジタル機器を持たせた年齢と、最初に持たせた機器は?
最初のお題は、子どもにデジタル機器を初めて持たせた年齢と、最初に持たせた機器について。

小4のとき、キーボードをつけたiPadでデビュー。
クロサカ:最初に、子どもにデジタル機器を初めて持たせたのは何歳のときか、また、最初に持たせたのはどんな機器か、お聞きしたいと思います。

まず我が家の話をさせていただくと、娘が小4のとき、僕がカタカタPCをたたいているのを見て「楽しそう!」と思ったらしく、パソコンをほしがったんですね。いきなりPCを使わせるのもなあと妻と話し合った結果、iPadにキーボードをつけたものを、サンタクロースに頼みました。すごく嬉しがって、今も楽しんで使っていますね。うちのルールとして、お父さん、お母さんが「見せて」と言ったときには、断ることなく見せてもらうようにはしています。
クロサカタツヤ氏(モデレーター)
クロサカタツヤ氏(モデレーター)

小6のとき、スマホでデビュー。
飯村:長女は、小6のときにスマホを持たせたのがデビューですね。ルールといっても、「人を傷つけたりしない」というような、普段の生活でも当たり前のことを約束している感じです。次男は3才ぐらいのときからスマホを触らせていて、YouTubeなどを通じて音楽やゲームにすごく興味を持っていました。ただ、1つのコンテンツを視聴し終えても、次々と新しいコンテンツがレコメンドされるので、子どももそれに従ってどんどん観てしまうのが悩みです。


小3年生のとき、タブレットでデビュー、その後はiPhoneもMacBookも。
江口:うちの娘は、小3のときに渡したタブレットでデビューして、その後iPhone、MacBookも渡しています。大人が会社で使うのと同程度の、最低限のセットアップだけをして、あとは特別なコントロールはしていません。原則、自由ですね。自由にさせているから、ただちに子どもが何か悪さをするっていうことはないと思っています。

もちろん、ルールについては話しています。でも、「これをやったらだめ」というよりは、「これ、こういう風に使ったらおもろいやん」という感じで。子どもが見つけてきたアプリを一緒に触り、子どもが扱う中でどんなリスクがあるかを自分なりにある程度把握するようにしています。私自身がリスク対策の仕事のプロである以上、もし子どもが自分の予想を超えるような使い方をした場合には、むしろ拍手をしたいぐらいです。「多少怪我しても、温かく見守る」っていうことをやろうとしているんですけど、家族にはよく怒られています(笑)。

幼稚園生のとき、DSでデビュー。
別所:うちでは、幼稚園のときに持たせたニンテンドーDS(ネット接続可能)が最初ですね。ソフトをダウンロードして使いますが、そこは親がパスワードをかけてコントロールしていました。電話は、小学生のときはいわゆるガラケーだけを持たせていましたが、中学生になると、周囲の友達もスマホを持ち始めたのでスマホデビューしました。
別所直哉氏
別所直哉氏

長男はiPod touch、次男はiPadで、2歳のときにはデビュー
五十嵐:長男は私の古いiPod touchで、2歳くらいのときにはデビューしていたと思います。私が使っているのを見て、本人もほしくなったみたいです。それを見た次男もやっぱり欲しがって、次男も2歳くらいのときにiPadを渡しました。

あるとき、兄がはじめたプログラミングアプリの「ScratchJr (スクラッチジュニア)」を、弟もできるようになると、兄としてはやっぱり負けてられないんですね。「物足りない、ScratchJrじゃなくて、Scratch(スクラッチ)がしたい!パソコンも欲しい。」って。兄弟間のあこがれやライバル意識みたいなもの、「できるようになりたい」という気持ちは大切にしたいなと思っています(※)。

(※)Scratch, ScratchJr…マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのグループが子どもの発達支援のために作った、教育用プログラミングソフト。主に8-16歳対象のScratchと、低年齢向け(主に5-7歳対象)のScratchJrがある。

生まれたときからネットが日常に浸透している現代
クロサカ:みなさんの話をうかがって、まず、2つの意味での「ネットワーク」っていう言葉がたぶんあるように思いました。一つは、家庭内のあらゆるデバイスがネットワークに繋がっているということ。親の経験したことがない世界が、いきなり子どもたちの日常になっていて、子どもとネットの付き合い方を考える上で、難しいと感じるところです。もう一つは、友達みんなが持っているから自分も欲しいという、「ネットワーク外部性」の話。これはスマホに限った話ではなくて、子どもがあれこれ欲しがる理由の多くは、「それがないと友達と繋がれない」っていうものだったりしますよね。これが、親にとって、どうしてもコントロールしにくい部分です。

子どもの安全を確保するだけでなく、いかに新しい時代に子どもたちが生きていく力を培うかというのも大事な視点だと思います。江口さんの話にもあったように、子どもの好奇心の力ってものすごくて、親のつくったハードルも超えてきてしまうんですよね。それを単純に否定してはいけない。また、教育心理学やICT教育に詳しい先生にお話を伺うと、文字を入力して文章をつくるって、非常に重要な力なんだと。何万字のレポートなど手書きでは難しかったものも、技術によって可能になってきている。こうした力は、子どもたちが社会に出て生きていく上で必要な力です。トラブルが発生することもつきものではありますが、できるだけ新しい技術に慣れさせるって、とても大切なのだとも思います。


■これはこまった!我が家のトラブル事例、そのときどうした?
続いてのお題は、子どもにスマホやゲームを持たせて、困ったな、あまり良くないな、と感じたことについて。パパママたちの気づきや、そのときとった行動にも注目です。

目を離した隙に、個人情報を入力…?
五十嵐:トラブルといえば、目をそらした隙に個人情報を入力しかけていたことがありました。息子が利用しているアプリが子どもにいろいろ質問を投げかけるのですが、息子が「名前」や「住所」など、どんどん情報を入力しようとしていたんです。「東京都ってどういう字を書くんだっけ」と、私のところに持ってきたときに気づいたんですが、これは本当に気をつけないといけないなって思いました。「その情報、どういう人に、どういうふうに使われるのか、考えなきゃだめだよ」って言いながら、子どもが自分で正しい判断をできない間は、何かトラブルが起こったときに気づいてあげられる距離で使わせたいなと思いましたね。

DSで、ポケモンのゲームで遊んでいると…?
飯村:ネットでのトラブルといって思い出すのは…うちの子、DSでポケモンのゲームにはまっていたときに、オンラインで遊んでいると、年上のお兄ちゃんにポケモンをだまし取られると言って、とても怖がっていたときがあったんですよね。ネット上だけのトラブルだけを見るのではなくて、普通にお友達とやりとりするときのコミュニケーションのようなものも、学んだり、気をつけたりするってことはとても大事だと思います。
飯村由香理氏
飯村由香理氏


クロサカ:今、とても重要なことをおっしゃっていて、こうしたトラブルって、必ずしも「ネットだけの問題」じゃないんですよね。技術的な話も、ネットの特性に起因するような話も、必ずしもそれらがネットだけの話に収束するわけではないと思うんです。日常の人間関係の中に、ネットが浸透している現状では、ネットサービスやアプリの使い方がいくら正しくても、その先にいるのは人間で、不特定多数の場合もあれば、場合によっては、特定の個人かもしれませんよね。ネットのことだけを考えていれば解決する問題って、ないのではないかと思います。

パスワードをやぶられて、すべてを諦めた。
江口:うちは、トラブルといいますか、パスワードロックをやぶられたことがありましたね。本人が、これやりたいからパスワード解除してってスマホを持ってきたことがあったんですけど、それで私がパスワードを解除したら、どうやら私が指で画面をなぞった後を読み取ったみたいで。そこまでの執念を見せられて、もう諦めましたね。
ポジティブに捉えると、本人に何かやりたいことがあって、それでもできなくて、本人なりに試行錯誤しながら知恵をしぼって乗り越えた結果だとは思うのですが(笑)
江口清貴氏
江口清貴氏


クロサカ:江口さん、やっぱりすごい話持っていますね(笑)。

遊び方、時間の使い方もSNS時代ならでは。
別所:ネットに関するトラブルって、うちはあまり無かったように思います。ただ、困ったことがあるとすれば、利用時間ですかね。平日だと、夜は10時までっていうルールにしているんですけど、この前の大晦日、夜の0時スタートで、長男が友達数人とSkypeでつながりながら徹夜でゲームをやるというのをやっていて。生活リズムを考えると大変なんですけど、友達とのつながりを考えると、管理もなかなか難しいんですよね。同級生のお母さん達と話してみても、やっぱりそれぞれのご家庭でも利用時間の問題はあるようです。ネットのトラブルというよりは、単純に遊び方の問題なんですが。


クロサカ:やっぱりこのSNS時代、画面の向こう側に誰かがいて、その誰かがいる限りなかなか、やりとりをやめられない、勝負から降りられないっていうのは、大人でもある話ですよね。子どもたちも、日が暮れても、昔のように「はい、今日は解散」とはならないですからね。自分の生活を考えて、どう律していけるかということなのかもしれません。

子どもたちの使い方について考察していると、話は、「働くパパママたち自身の普段の使い方」に発展。大人も耳が痛い話ですが、「親自身が自らを律するコツ」のようなものはあるのでしょうか。

クロサカ:先ほど話していたような、「生活の中で自らを律していかないといけない」って、子供だけじゃなく大人だって、難しいことです。五十嵐さん、自らを律するって、どうしたらいいんでしょうか(笑)。

ルールはパパとママで役割分担
五十嵐:自分自身の生活を見直すと、自分を律するって大人でも難しいですよね。実は夫も、私と同じコンピューターグラフィックスの研究者なんですけれど、夫は小さいうちは野原でかけずりまわって遊んでほしい、どろんこになって色んな経験をしてほしいっていうスタンスなので、お父さんとはデジタルデバイスは使わず、お母さんとは使っていいよってルールにしています。子どもは一応、このルールを理解して、守っているんです。

ただ、これを守らせている限りは、「ご飯のときにはスマホを机の上に置かない」とか、子どもが話しかけてきたときに「ちょっとお母さんメール一通書きたいんだけど…」とか言わないようにしなきゃって、私自身も、グッとこらえて我慢することが多々あります。大人でも、自分を律するって難しいからこそ、「親子で守っていこうね、お母さんだって全部正解なわけじゃないから一緒に考えていこうね」っていうことは、いつも子どもと話していることでもあります。
五十嵐悠紀氏  / 明治大学 総合数理学部 専任講師
五十嵐悠紀氏


クロサカ:いま、グサグサ刺さっています…!なにしろ今朝も、たくさん届いている仕事メールを1通でも打ち返しておきたいって思って、「朝ごはんつくりながらでもメールぐらいは打てるんだ」と、やっちゃってました。が、これがいけないんですよね(笑)。

五十嵐:子どもは親の姿を見ているので、子どもの中で、「いいこと・わるいこと」の線引きができなくなっちゃうんですよね。「ネット越しには待たせている人がいるんだけどな…」といった心苦しさはありますが、朝の時間は子どもとの時間っていうふうにメリハリをつけることが、生活を成り立たせるためには大切だと思います。

クロサカ:大事な話ですよね。僕の娘も、お父さんがパソコンたたいているのを見て、かっこいい、面白そうって言って、パソコンを欲しがったんですよね。僕らが思っている以上に、子どもは親のことを見ていると思います。

五十嵐:そうなんですよね。だからこそ、私の場合は「プログラミング教えて」って言われても、お母さんも正解をもっているわけじゃないから、バグの発生もふくめて全部見せるようにしています。完璧な姿だけでなく、お母さんだって失敗したり、我慢したり、いろんなことを試行錯誤しながらやってみているということを、背中をみて学んでもらえるといいなと思っています。



■みなさんから、最後に一言ずつお願いします。

飯村:先ほどの自分を律するという話も含めて、今日は反省することばっかりです(笑)。長女の学校でも、「LINEなどのSNSは禁止」というような話もあるんですけど、これから先、インターネットを、課題があったときに自分で乗り越えていくための手段にしていくために、単に禁止するのではなく、ルールの中で楽しさや面白さを探させるような教育をしていけたらと思いました。長女は反抗期に入りかけているのですが、「このアプリでこんなこと出来たよ!」など、親子で一緒に楽しめる共通の話題になったりもするんですよね。

別所:親も一人ひとり違って、子どもも一人ひとり違って、万人に共通のベストな子育てや方法なんてないと思っています。昨年の3月、息子と一緒に禅寺に3日間ほど行って滝行をしてきたんですよね。そこではもちろんスマホを使えなかったのですが、やってみると案外、「スマホがなくても大丈夫だな」って気づくんですよね。たまにはそういう体験によって、ネットに繋がりっぱなしの毎日から脱して考えてみるのも大事なのかなと思います。

五十嵐:私も子どもが3人いますが、性格もそれぞれ違いますし、同じ年齢でも、その時代によって、技術やデバイスの発達に応じて、ネットの使い方が違ってくると思うんですよね。その時々で、少し上のお子さんをもっていらっしゃるお父さん、お母さんから話を聞けたり、今日のようにそれぞれの子育ての悩みを共有できるコミュニティを持つことも、とても大切だと思います。

江口:僕自身、親には自由に試行錯誤させてもらいました。まあ高校クビになるみたいな紆余曲折はあったんですけど、でも、最終的には大学も出て、今こうやってなんとかなってると思っていて。だからこそ、自分の子どもには、自由に試行錯誤できる環境を与えてあげたいと思っています。といいつつ、みなさんみたいにちゃんと考えていかなきゃなって思ったのも、今日の本音でございます(笑)

クロサカ:私もダメ人間なので、今日から自分を律するのはたぶん不可能だろう、と弱気なところもあるのですが、みなさんの話を聞いていて、「子どもに教わる」ってことは、もしかしたら今日からでもできるかもしれないなって思いました。子どもたちが、新しい技術をどう受容して、使って、育っていくか。今の子どもたちは私たち親の世代とは全くことなる環境に身を置いているわけで、親の考えを当然のものとせず、子どもたちから教わりながら、子どもとネットの問題について考えていく必要があると思いました。
みなさん、今日はありがとうございました!


IT業界をリードするパパママたちの子育てトーク、いかがだったでしょうか。いかにして、子どもたちの安全と、好奇心や可能性を育むことを両立するか。インターネットが日常に浸透しているからこそ、「ネットの問題は、ネットだけ考えていても解決しない!」ということを前提に、親子がそれぞれ学び、教わり合いながら…これからも試行錯誤の日々は続きそうです。

(K.M)