Yahoo! JAPAN 政策企画

第3回「議論する国会」に向けた方策とは?

憲法企画の第3回として「国会をアクティベートさせるには?」をテーマに、国会審議を活性化するための方法を探りました。京都大学大学院の曽我部真裕教授、一橋大学法学研究科の只野雅人教授、学習院大学法学部政治学科の野中尚人教授、九州大学法学研究院の赤坂幸一准教授(ビデオ出演)にご登壇いただき、国会のあり方を活発に議論いただきました。

政府による紋切り型の答弁、パフォーマンス色の強い野党の追及、浪費される審議時間――。日本の「国会」のイメージを聞かれれば、こうしたシーンを思い浮かべる人も多いかもしれません。国会審議が有効に機能している、と実感している国民は、どれほどいるでしょうか。今、私たちが目にしている国会の姿は、歴史的な観点からも、国際比較の観点からも、国会の唯一のあり方ではありません。本来、国会とはどのような役割が期待される存在なのでしょうか。
第3回「憲法について議論しよう!」の登壇者の様子
「国会をアクティベートさせるには?」をテーマに討論した第3回の「憲法について議論しよう!」

ヤフー政策企画部にて2017年2月から開催している憲法討論イベント「憲法について議論しよう!」では、1990年代に始まった選挙制度改革と、いわゆる「平成の統治機構改革」とその影響について振り返ってきました。今回は、2017年8月に有識者の方々を招いて開催した第3回の対談イベントについて紹介します。
今回は「国会をアクティベートさせるには?」をテーマに、憲法学や政治学の専門家が国会審議を活性化するための方法を探りました。
 なお,このイベントの模様を簡潔にまとめたレポートが「THE PAGE」上でもお読みいただけます。
(参考 THE PAGE https://thepage.jp/detail/20170907-00000009-wordleaf

当日は、学習院大学法学部政治学科の野中尚人教授が「与党議員不在の国会の課題」について、九州大学法学研究院の赤坂幸一准教授が「国会における野党の権限拡充」について、一橋大学法学研究科の只野雅人教授が「参議院のあり方」について、それぞれプレゼンテーションを行いました。その後、京都大学大学院法学研究科の曽我部真裕教授がモデレーターを務め、イベントを主催したヤフー株式会社の別所直哉執行役員も議論に参加し、全体ディスカッションを行いました。(赤坂准教授はビデオ出演)

洋の東西を問わず、とかく議会は国民から不満を持たれがちだといわれます。日本の国会には、どのような特徴と課題があるのでしょうか。

■国会で役割を果たせない「与党」議員
野中教授が説明する様子
戦後の国会が進めた「合理化」の結果、与党が国会から排除されたと語る野中教授

野中教授は、与党が国会で果たす役割について、本来のあるべき姿、またそれが戦後、合理化されてきたことによる変化について、諸外国の国会活動の比較を交えながら解説しました。

その変化の結果である、日本の国会の特殊性を象徴するものとして、野中教授は“5.0%”という数字を挙げます。

これは、国会での与党議員による1人あたりの発言量に関するデータです。2005年衆院選後の国会審議において、共産党議員の発言量を“100”とした場合、与党自民党議員の発言量はそのわずか5%しかないことを示すものです。これは自民党特有の傾向ではなく、民主党が政権を握っていた国会審議でも、与党となった民主党議員の発言量は、激減し、同程度の数字でした。
ここから見えることは、政権を握ると与党議員(閣僚、副大臣、大臣政務官などとして政府に入っていない一般議員)は、国会でほとんど発言していないという事実です。
それがますます顕著になっているにも関わらず、改善ができていない現状をどうやって変えるべきかを真剣に考えるべきだが、かなり困難なものであると解説します。

野中教授は、与野党の議員が直接議論を戦わせる場面が用意されているヨーロッパの議会関係者から見ると、与党が「脱出し」た日本の国会の状況は奇異なものと映るといいます。

このような国会の特徴の背景にあるのは、戦後日本の国会が直面する制約条件の下で「合理化」を進めてきた結果であると野中教授は指摘します。制約条件とはすなわち、国会での政府の権能がほとんど完全に排除されていること、野党に有利な国会審議(質問時間の野党への重点配分等)、与党自民党の分権的なガバナンス等であり、政府による立法プロセスの統制は困難であったといえます。
こうした制約を乗り越え、政府が安定的かつ速やかに法案を成立させていくために進めた「合理化」とは、本来、国会で行うべき審議・審査機能などを「国会の外」に出してしまうというものでした。つまり、与党内部での事前審査プロセスや、より非公式な与党内の派閥間の調整等の国会以外での議論によって実質的な政治決着を図るというものです。

野中教授説明資料、タイトルは国会がどのように合理化したか、の図
(出典:野中教授資料)


「国会の外」で政策が決まっていく代表的な仕組みが、「55年体制」における「与党事前審査」です。

この与党の事前審査制度は、過去の憲法討論イベントでも議論になりました。与党が法案の国会提出前に法案の内容を承認する政治的慣習で、1955年に55年体制が確立されて以降、長く与党であり続けた自民党政権下で定着してきたものです。

野中教授は、90年代からの一連の「平成の統治機構改革」によって、選挙制度は中選挙区制から小選挙区制中心に変わり、首相がリーダーシップを発揮しやすいように内閣機能強化などが図られたことで、この状況は変化を遂げてきたといいます。例えば現在の安倍内閣では、与党議員や官僚に対する強力な人事権を背景に、官邸主導で政策決定する体制が築かれつつあります。事前審査自体は現在も存在しますが、いわば骨抜き状態で、「事実上、官邸がコントロールする力をかなり得ている」のが現状です。つまり、与党による法案への国会前の段階での関与は実質的にかなり弱められていることになります。しかし他方で、法案が国会に提出されてから以降は、与党議員の出番はほとんどありません。結局、与党平議員の役割は極端に弱まっていることになります。

 「与党事前審査制」については、別所執行役員からも、外から見ていて議論がわかりにくく、もっと透明化をして外に出していかないと、対案が生まれてくるような法案審査が実現できないのではないか、と指摘がありました。
野中教授からも、議院内閣制を取っている国で、与党プロセスを通らないと法案審査・国会に提出ができないような与党事前審査制を置いている例はなく、日本は議院内閣制の国としては異例なくらい、政府が国会の中から排除されていると問題提起がありました。


■形骸化した国会審議
議論に耳を傾ける傍聴者の様子
国会審議を活性化するための方策に耳を傾ける傍聴者ら

日本の国会の特異性はほかにもあるといいます。

とりわけ「本会議の極端な形骸化」を野中教授は懸念します。安保関連法のように与野党が激しく対立する法案であっても、委員会の審議では激しく揉めていたにもかかわらず、いったん委員会で可決されてしまうと、翌日の本会議では数時間ほどで採決が終わり、法案が衆院を通過する光景がよく見られます。

野中教授は、ヨーロッパ諸国の議会であれば、例えば委員会で100時間審議したら、同じように本会議でもしっかり審議時間を確保するといいます。委員会はあくまで一部の選抜された議員による「予備審査」の位置付けで、そこで法案の条文ごとの逐条審査を行い、法律のメリット・デメリットなど内容を細かくチェックした上で全議員が参加する本会議に上げられ、全ての議員による討議が行われるという段階を踏むのが一般的だからです。

また、日本では国会審議の中での法案修正はあまりなく、国会の法案修正機能の弱さも指摘されます。
こうした特異性と課題を抱える日本の国会をどうすれば活性化できるのか。野中教授は「本会議での全体討議の充実が重要であり、あわせて委員会レベルでは法案の逐条審議を導入し、個々の論点をしっかり議論する。その議論には与党議員も参加する」という議会本来の姿に国会を戻すべきだと提案しました。

只野教授からも、「逐条審議」は重要であり、フランスでも重要視されている、そのような審議により場当たり的議論ではなく、体系的な議論、修正のインセンティブも生まれてくるのではないか、との指摘がありました。

■国会審議活性化のために必要な野党の情報要求権
赤坂准教授がビデオ出演し、国会での野党権限拡充が必要だと語る様子
国会での野党の権限拡充が必要だと語る赤坂准教授。ドイツ出張のためにビデオ出演となった

赤坂准教授は、国会審議の活性化のためには、議会少数派、つまり野党の国会での権限を拡充することが必要だと訴えました。ポイントは「野党に情報要求権を与えること」だといいます。

それはなぜでしょうか。

議会の多数会派が内閣をつくる議院内閣制では、内閣が提出する法案や予算案は、基本的に議会で可決され、成立するのが大前提です。ですから「その分、議会の役割は議会少数派(野党)が内閣や行政各部を国会という公開の場で追及する」という点に求められます。つまり、議会が内閣・行政各部を統制(コントロール)する役割です。

その統制が有効に機能するためには、政権運営や政策に関する情報が必要となりますが、「統制対象が喜んで情報を出すことはない」(赤坂准教授)ため、野党への強制力を伴う情報要求権の付与が重要なのだといいます。

例として挙げられたドイツ連邦議会では、この点が憲法レベルでも規定されており、例えば、強制力のある議会調査権が認められていますが、日本にはこうした制度はほとんどありません。1997年に「予備的調査制度」が導入され、衆議院調査局長、法制局長に対して予備的調査を発令することができるようになりましたが、肝心の強制力はなく、報告書も公開が制度化されていません。そもそも,2010年以降では予備的調査の発令自体がない状況だといいます。
野党の情報要求権で、もう一つ重要なのは質問制度です。

日本の国会では、質問は原則として文書で行うこととされており、国会議員が内閣に文書で質問する、「質問主意書」という仕組みが存在します。赤坂准教授は、質問主意書の制度を「経過や答弁書がすべてインターネット公開される。地味だが効果的な統制手段たり得るポテンシャルを持っている」と評価しますが、一方で、政府側の答弁には不誠実なものも少なくないとして「質量ともに改善の余地はある」とします。

この点でもドイツの事例が紹介され、2009年のドイツ連邦憲法裁判所の判決によると、内閣は個々の議員や会派の質問に対して、「十分にかつ根拠を示して返答する憲法上の義務を負う」のだといいます。日本の国会答弁で散見される、根拠を示さない答弁、質問の趣旨と噛み合わない紋切り型の答弁などは許されないことになります。

赤坂教授は、議会少数派の問題は委任立法の統制の在り方とも結びついていると指摘します。委任立法とは、議会の立法権を一定の限度で政府に委譲するものであり、現代において不可避の現象ですが、行き過ぎると立法権を議会に与えた意味が失われるため「限界」がどこまでなのかが重要となります。
 特に議院内閣制の上では、与党と内閣の政治勢力が一致するのが通例であるため、内閣は議会で議論されるのを回避し、できるだけ命令によって規律するインセンティブが働くようになります。そこで委任立法の限界の問題は、「議会が自ら判断しなくてはならない領域はどこか」つまり「いかなる事項を野党(=議会少数派)の影響力の及ばないところに置くか」となります。
 そのため、本来の民主制原理・権力分立原理の観点から、議会が公開のフォーラムで判断すべき事項、領域は何か、それを法律形式でどこまで明確に規律すべきか、という大きな問題提起が残されていると説明しました。

野党による議会統制には「公開性」の確保も重要です。議会がなぜこのような立法をしたかの背景が分からないと、有権者が選挙などを通じて議会の責任を追及できません。赤坂准教授は「我が国では議会の構成員自身がどう考えたかを示す資料が少ない」と指摘。さらに国会で修正案が出された場合でも、「なぜ修正案が提出されたかの背景や趣旨が判然としない」とも指摘をしました。その上で、議会の公開性の確保については、討論議会(公開のフォーラムで政策決定を行う議会審議:主に本会議)と作業議会(実質的な法案修正や妥協形成のフォーラム:主として委員会)の(二者択一というよりは)役割分担を考えることが重要であり、例えば委員会レベルでも、ドイツの拡大公開委員会のような制度設計がありうることを指摘しました。

この点、曽我部教授から、現在の国会では不祥事を追及するという文脈での「行政監視」の側面が強いが、国会審議の充実を通じた議会統制が重要であること、そのためには議論の質の向上が鍵であることについて言及がありました。

また、場合によっては非公開による審議の活性化という観点も重要との指摘について、野中教授はドイツの例を挙げながら、公開性の原則は、ドイツにおいても本会議には当てはまるが、実務的な議論は委員会において非公開で行われることが多いと紹介がありました。只野教授は、議会統制を実効的に機能させるためには、少数派の地位を確立することが重要であるとしつつも、政権交代がなかなか起こらない日本において、野党に対してこのような権限を認める制度改正は実現が難しい面もあるとも指摘しました。


■参議院をめぐる“二つのねじれ
只野教授が説明する様子
「二院制の問題」は影響が多岐にわたると語る只野教授

国会活性化策を探るこの日の討論は、「参議院のあり方」にも及びました。只野教授は、実は「『二院制の問題』は広がりのあるテーマ」だといいます。

参議院をめぐっては、権限縮小論や選挙区の「合区」問題が取り沙汰されています。参議院のあり方を語るとき、参議院単体で語られることが多いですが、只野教授は「参議院は、衆議院のあり方、内閣の国会審議への関与のあり方、立法手続き等の国会審議のルール、選挙制度など多岐にわたる制度と関係する。参議院改革は、さまざまな統治機構の仕組みに波及するということを念頭に、統治機構全体を見て議論する必要がある」と語りました。
 
 また、このような議論においては、今ある国会が憲法の求める唯一の姿ではないこと、すなわち、これまで憲法改正が無いなかでも憲法のテキストの余白をうまく使い、解釈や運用の変更によって国会の姿は大きく変わってきたことを踏まえ、「憲法を改正したからといって、望んだ国会の姿がすべて実現されるというものでもないことも忘れてはならない」と述べました。

次に、二院制の仕組みについて説明がありました。只野教授は、正統性で最も重要なのは、民主的正統性、民主的基盤であり、二つの議院が対立する場合、より強い民主的基盤を持つほうに、より強い権限が配分されるのが通常であるといいます。
 この民主的基盤を満たす要素としては、普通直接選挙が主なものであるが、連邦国家では州を代表することも正統性を提供するとし、また二院制を考える上では両院の構成が違い独自性を発揮できるのか、あるいは、権限がどの程度異なっているのかも大きなポイントとなると説明しました。

只野教授説明資料、タイトルは「統治機構の中での第二院」として二院制の正統性と権限の相関を示す図
(出典:只野教授資料)

その上で、日本の参議院のあり方について“二つのねじれ”があったのではないかと指摘します。

一つは、衆議院と参議院の「ねじれ」の問題です。

参議院は、かつての日本では「弱い存在」と受け止められていた時期がありました。「衆議院のカーボンコピー」と揶揄され、憲法上も衆議院の優越が規定されていたため、「弱い第二院がイメージされていた」が、2000年代後半に入り、国会が衆議院と参議院で多数会派の異なる「ねじれ」状態に陥りました。「そのような経験を経て、参議院の権限は意外に強いと認識されるようになった」と只野教授は言います。衆議院については再議決規定がありますが、3分の2の議席数を得るのは容易ではありません。ねじれ国会において、政府与党は優越規定で予算は成立させることができても、予算関連法案を通すことができなくなるなど、参議院が内閣のあり方に影響を与えることができる事態が起こってきました。

只野教授が指摘するもう一つの「ねじれ」は、「平成の統治機構改革」で推し進められてきたイギリス型の議院内閣制と憲法規範とのズレです。

前回の憲法討論イベントで「ウェストミンスター型」へ向かっていると評される日本の議院内閣制ですが、これは、選挙制度、執政制度の双方で内閣に権限を集中させるタイプの議院内閣制です。選挙制度については小選挙区制が導入され、執政制度については官邸機能強化が進められてきました。

只野教授は、この制度改革はイギリスの二大政党による政権交代をイメージしたのだろうとした上で、「イギリスの貴族院(上院)は強い権限を持っていないが、日本のように参院が強い権限を持っている国で二大政党型、多数主義型の執政制度・選挙制度を導入すると、ねじれ国会などの際に極端に合意形成が難しくなる」と指摘。現在の選挙制度・執政制度と衆議院・参議院の権限関係の組み合わせは、なかなか運用が難しい仕組みで「むしろ連立型の政党システムの方がマッチするのではないか」との見方を示しました。

別所執行役員が説明する様子
「ねじれ国会」は野党の統制機能を期待したものだったのではないかと語る別所執行役員

「ねじれ国会」については、別所執行役員から「『ねじれ』が必ずしも悪いとはいえないのではないか。衆議院が政府に対する有効な統制機能を果たしていない状況に対して、国民が選挙を通じて野党に参議院の議席を与えた面もあったのではないか」と指摘したところ、只野教授は「『ねじれ国会』が本当に悪いことばかりなのかという指摘は重要」とした上で「内閣の行き過ぎにブレーキをかけるという目的を達成する手段として、衆参の「ねじれ」というのは、政権の運営が一気に困難になってしまうというやや極端な効果を持ってしまうと問題も生じる」と応じました。

■「変化する民意の反映=衆院」「長期的視座=参院」
登壇者の曽我部教授、只野教授、野中教授、別所執行役員が議論する様子
参議院をどう衆議院と差別化するかについても議論された


参議院のあり方について、私たちはどのように考えていくべきなのでしょうか。只野教授は、参院議員の任期が6年と長いことに着目し、戦後、大臣として現行憲法制定にたずさわった金森徳次郎の「長期と刹那」という言葉を紹介しました。

すなわち、「変化する民意を柔軟に捉える衆院」、「長期的視点で考える参院」という役割分担です。

与野党の意見が厳しく対立する法案の場合は難しいものの、そうでない法案については、調査や政策評価を中心に行ったり、長期的な視点に立った国会審議を行ったりすることが「長い任期を持った参議院にはふさわしいかもしれない」としました。

また参議院は、衆議院にはない「調査会」があります。「DV防止法」が調査会での議論をもとに策定された例を挙げ、参議院の新しいあり方の一つとして期待を示しました。
只野教授説明資料、タイトルは「参議院の役割」で、参議院は両院を基盤とした二大政党モデルであるべきか、地方代表などの異なる視点からの民意代表であるべきか、を投げかける図
(出典:只野教授資料)

野中教授からは、両院の関係の突破口として「両院協議会」の可能性が示唆されました。フランスでは両院協議会の中で中身をしっかり調査報告する「報告者制度」により、委員会レベルでの実質的議論が積み重ねられ、成案がかなりできたという例を挙げ、日本でも、かなりハードルは高いが、衆議院、参議院それぞれの委員長と報告者の4名がキーパーソンとなり、中身を熟知した上での話し合いが可能となるような仕組みも検討すべきではないかと提案がありました。 それについては只野教授からも、委員会単位それぞれ調査室のスタッフや機能をもっと活用していく手法もあるのではないかとの示唆がありました。


■どんな国会像を目指すのか?制度改革へ向けて
この日は、過去の憲法討論イベントにご登壇いただいた有識者も会場に来場し、議論に参加していました。

日本経済新聞の清水真人編集委員からは、この日提起されたさまざまな国会改革の論点について、野党による内閣・行政各部の統制権限の拡充は不可欠だとしたうえで、さらにどのような国会像を目指すのかを巡ってコメントがありました。すなわち、与野党が議論を重ねて合意を形成し、内閣提出法案の修正も日常茶飯事のドイツ流の「変換型」議会なのか。それとも、与野党が対決色の強い討論を通じ、次の総選挙での政権選択に向けて政策的争点を浮き彫りにしていく英国流の「アリーナ型」議会なのか。どちらに軸足を置くのか議論の的を絞り込むべきではないかという意見です。一方でよく話し合って法案修正を実現せよ、他方で対決型の丁々発止の討論もやれ、とあれもこれも欲張って国会に要求すると、特に野党側に極めて重い負荷がかかることになり、身動きが取れなくなりがちだ、という指摘です。

また、同じく前回参加していた慶應義塾大学の松井教授は、国会議員として、また内閣官房副長官として国会審議に携わった経験を踏まえ、憲法改正や法改正を伴わずとも国会審議の柔軟さを確保し、議論を充実させる方法があることを指摘し、一連の憲法討論イベントにおいて議論してきた課題を解決するために、その内容を提言としてまとめることを提案しました。

曽我部教授が閉会の挨拶をされる様子
モデレーターとして議論を掘り下げた曽我部教授

これに対し、モデレーターを務めた曽我部教授は「本日この場で議論された内容は、実は学会では相当部分コンセンサスができている話で目新しいものではない。しかし、そうした知見がメディア関係者や国会議員をはじめとした国会関係者には伝わっておらず、実際の制度改革に生かされていない。専門家による議論と、メディアの報道や国会実務をつなぐチャネルが求められている」と、こうした討論会の意義を語りました。

国会機能をアクティベートするために、今回の討論会で非常に示唆に富むいくつもの方策が示されました。このイベントでの討論をより多くの人に届けることで、国会審議活性化に向けた動きが加速することを期待したいと思います。

(R.H、E.I、Y.I)