Yahoo! JAPAN 政策企画

第4回「縮小」する日本において「地方自治」はどうあるべきか?

憲法企画の第4回として「地方自治」をテーマに、現職市長の兵庫県明石市泉房穂(ふさほ)市長、慶應義塾大学法学部大屋雄裕教授、大阪大学大学院高等司法研究科片桐直人准教授にご登壇いただき、地方の抱える課題を議論しました。

わたしたちが普段の生活のなかで当たり前のように利用している住民サービス。全国どの自治体に引っ越しても、概ね同様の住民サービスを受けられることもあり、わたしたちが自治体ごとの住民サービスやそれを支える制度について考えることは、あまり無いのではないでしょうか。
しかし、国全体の人口が減少し、財政面での自治体間の格差も鮮明になりつつある現代において、現在の地方自治をそのまま維持するのは難しくなってきています。地方自治体の役割やガバナンスの仕組みなど、地方自治のあり方を変えていく必要はないのか、今こそ改めて考えるべきではないでしょうか。

第4回「憲法について議論しよう!」の登壇者の様子
地方自治のあるべき姿について意見を戦わせた第4回「憲法について議論しよう!」

ヤフー政策企画部が主催し、今回で4回目となる憲法討論イベント「憲法について議論しよう!」では、「あるべき地方自治の姿とは?」をテーマに、現職市長として市政改革に取り組む兵庫県明石市の泉房穂(ふさほ)市長、地方自治や地方財政に詳しい慶應義塾大学法学部の大屋雄裕教授と大阪大学大学院高等司法研究科の片桐直人准教授、そしてヤフー株式会社の別所直哉執行役員が、地方の抱える課題を議論しました。
なお,このイベントの模様をまとめたレポートが「THE PAGE」上でもお読みいただけます。
(参考 THE PAGE https://thepage.jp/detail/20180131-00000006-wordleaf

地方自治体は、人口減少、住民ニーズの多様化などの時代の変化の中で、あらためて役割や存在意義の見直しが求められています。地方自治において、だれが意思決定し、責任を担うのか。一方で、一定水準の住民サービスをどのように全国規模で安定的に提供するのか。討論の中では、大胆な提案も飛び出しました。


■時代の変化に応じた地方自治を
泉市長が説明する様子
「都道府県が担うべき役割は変化してきた」と指摘をした明石市の泉市長

「そろそろ日本の社会システムを見直すべき。人口が減少し、財源も厳しくなる時代に、市民ニーズの多様化にふさわしいシステムづくりの議論を憲法論議の中でも始めるべき」

こう語る泉市長は、2011年から明石市長を務めています。泉市長は、市の人員や組織を整理して捻出した予算を「子ども」を軸にした政策に集中させ、子育てしやすい街づくりを進めてきたことで、市の人口が4年連続で増加したと語ります。

泉市長はこのような経験を踏まえ、地方自治のあり方をめぐって3つの提案をしました。

(1)現在の国・都道府県・市区町村の「3層構造」から、国と基礎自治体の「2層構造」へ
(2)地方統治機構(首長と地方議会の二元代表制)のあり方の見直し
(3)地方自治体に権限と責任を(特に自主課税権)

泉市長は(1)の「2層構造」の提案について、具体的には「全国一律の行政サービス(例;上下水道、生活保護)を提供する『国』と、住民に身近な存在として地域ごとの個別ニーズに応じた住民サービスを提供する『基礎自治体』の役割があればよい」といいます。

このように主張する根拠として、「時代の変化」を強調します。国-都道府県-市区町村の3層構造は、明治維新後、近代国家を作り上げていく過程では有効だったと評価します。幕藩体制が終わった直後、市町村等の自治体も存在しない地方に対して、全国一律でインフラ等のハード面を整備していくため「“中間管理職”的な広域自治体である都道府県をつくって市町村を束ね、迅速に国土を整備する必要があった」(泉市長)からです。

しかし、現在は、全国一律のハード整備は完了しているといえます。
また、人口減少の時代に突入し、財政収入の減少も見込まれるなかで、地方自治は、多様化する住民ニーズに対し、何を選択し、あきらめるべきか、選択と集中の判断が求められる局面に入っています。

泉市長は「そのため、基本的な整理として、自治体は多様化するニーズに応じた住民サービスに責任を持つ役割を持つ基礎自治体であるべき。政令指定都市や中核的な市は、基礎自治体として権限と責任をもち、住民と向き合う。一方、人口や財政基盤が十分ではなく、基礎自治体としての役割を果たせない小規模の市町村は、中間管理職的な役割を終えた都道府県が、それらに代わって基礎自治体としての役割をもち、住民に寄り添った仕事を担っていくべきではないか。」と述べました。
泉市長説明資料、タイトルは「新たな都市制度-廃県置圏の提案-3層構造から2層構造へ-」の図
(出典:泉市長資料)


■権限と責任のねじれ
泉市長が明石市役所の広報紙を掲げながら説明する様子
泉市長(右)は自身が作成に携わっているという市の広報紙を掲げながら市の権限強化を訴えた

泉市長は、なぜこのような「2層構造」にこだわるのでしょうか。市長は「住民に最も近い存在である市町村に必要な権限がなければ、責任をもった施政が実行できない」と感じているからだと説明します。

一例として市長が挙げたのが、市立小学校でのいじめ対策です。市立の小学校であっても人事権は県にある一方で、教育に対する責任は市が負い、問題が起きたときに裁判の被告になるのは市だといいます。このように、小学校でいじめが発生した際、市町村が再発防止のために適切な人材を配置するなどにより、いじめの再発を防止することが難しい状況にあります。「権限は県にあるが、責任は市が負っている。こんな理不尽な状況で、実効的ないじめ対策を講じられるわけがない」。


■二元代表制-地方の統治機構の改革
現在の日本の地方自治は、「二元代表制」といって、住民が選挙を通じて首長と地方議会議員をそれぞれ選び、この首長と地方議会とが車の両輪のように地方自治を担うことが制度的に想定されています。泉市長は、この地方議会のあり方についても見直すべきだとします。
具体的には、地方議会は、①地方自治体内の地域ごとのニーズをきめ細かに汲み取り市政に伝えることに特化し議決権や高額の報酬を得ずに活動するボランティア的な地域代表という形か、②実務の最前線を担当する地方行政の知見に長けた少数精鋭部隊という形のいずれかが望ましいといいます。

泉市長はここでも時代の変化を指摘します。現状の地方議員は業界代表・地域代表的な側面があるため、これまでのように新たに発生する財源をどのように配分するかを調整していた時代にはうまく機能していました。しかし、そのような時代が終わり、財源に限りがあるなかでどの予算を廃止するかを決めなければならない「政策シフトが必要な現代」において、現状の地方議会では迅速な方針転換が極めて困難であると考える。

「市民ニーズが多様化・複雑化している時代」に対応するためには、限りある人材、財源の効率的な運用が不可欠です。全国一律のサービスの提供のあり方ではなく、この自治体では、何らかの行政サービスを削るなど、政策において「何を諦めるか」を決定する作業が必要なのだといいます。


■地方に自主課税権を
議論に耳を傾ける来場者の様子
地方自治が抱える課題に耳を傾ける来場者ら

行政サービスや市が決めた重点政策を実現するにも、裏付けとなる財源が必要です。泉市長は自治体に実効的な「自主課税権」を付与すべきだといいます。「明石市が独自で増税しようと思っても国の同意がいる。自主財源を市でしっかり確保できるような対応が必要である」。

現在の地方財政制度は、財政基盤の弱い小さな自治体でも全国一律の行政サービスが提供できるように、予算が足りない分を地方交付税交付金などで国が補填する「財政調整」の仕組みをもっています。こうした制度では、知恵を絞って自助努力で税収確保を図っても、そのような自治体は逆に交付金を減らされてしまう側面がある。そうすると自ら税収を確保しても、がんばったら損をしてしまうシステムとなっている」と指摘します。

泉市長は、憲法における地方の統治機構のあり方を考えるときに、「地方対国家」でなく、市民、国民から見て、自分たちの税金がどのように有効に使われているかとの観点が重要だといいます。現状の3層構造を前提とした地方自治制度では、「権限と責任」がバラバラで、「やる気のある自治体」にとっては非常に独自政策を展開しにくいと訴えます。

憲法の議論をするのであれば、「合区」のような議論ばかりではなく、これから人口減少、財源が厳しくなる時代状況の中、市民ニーズが多様化、複雑化することに対して、どう対応していくか、それにふさわしい、いわゆるシステムづくりというものを、まさに憲法の議論の中でやっていかなければならないという強い思いを持っていると語りました。


■均衡ある国土発展は維持できる?
大屋教授が説明する様子
右肩上がりの時代と同じように全国一律の行政サービスを提供することがいつまでできるか、と問いかける大屋教授

大屋教授も、人口減少時代の地方において、現行の地方自治制度を維持していくことの難しさを指摘しました。
明石市のように、積極的に独自の魅力的な取り組みを進め、人口を増加させ、子どもも増加している状況はすばらしいが、日本全体で人口が減少する中、それは周りの自治体から魅力的な自治体に集まっていくことになり、ポジティブ・サムの状況での競争ではなく、マイナス・サムが決まっている状態の中で、みんなで競争して、競争にお金をかけていくと全体として何が残るのか、これも地方自治の今後を考える上で一つの課題であると考えます。

人口30万人を超す明石市のような自治体では、市職員の数は1750人超で「組織としていろいろな事業に取り組める大きさ」(大屋教授)である一方、人口1000人規模の小さな村の場合だと、村役場の人員は限られており、各分野を担当する職員は数名程度というケースも少なくありません。「2人の会計担当者だけですべての村の帳簿を管理している状況」があったり、議会事務局も事務局長と担当しかいなかったりといったケースも珍しくはないのです。大屋教授は、こうした小規模自治体では、役場が組織として安定的に機能することは不可能であると指摘します。こうした現実を踏まえて、これまで都道府県などからの制約・管理・サポートなどを受けて全国一律の行政サービスが提供されてきた実態があるのです。「泉市長が主張する「自分たちのことは自分で決める」という本来的な意味での「地方自治」を実現していくことももちろん重要だが、国として現実的には、小規模自治体も含めて地域に必要となる行政を各地できちんと実施していけるかについても考えないといけない」と指摘します。
大屋教授説明資料、タイトルは「地方自治体の現状」として、二極化、人口減少率、財政の現状、交付税交付金、小規模市町村の事務局体制、と項目が記載された図
(出典:大屋教授資料)

そして、この地方自治の課題解決の鍵を握るのは、実は憲法上の問題ではない、と指摘します。

日本国憲法は、非常に条文が少ないことでも知られますが、とりわけ地方自治について書かれた8章は、92条から95条までの4条しかなく、具体的な規定のほとんどを「法律に委任している」と大屋教授は言います。「3層構造」や都道府県や市町村という定義なども憲法上規定はされていません。「かろうじて手がかりとなるのは『地方自治の本旨』(92条)。でもそれが何かは具体的に書かれていない」(大屋教授)のです。

一方、二元代表制については、93条で首長と議会が直接選挙で選ばれるとの記載があり、地方自治の統治機構では、当然のように二元代表制がとられています。しかし、泉市長から改革の必要性が指摘されたことも踏まえ、大屋教授は「現在の時代に合った制度と言えるのか。世界的にはいろんな形態がある」といいます。

大屋教授説明資料、タイトルは「憲法上の地方自治」として、憲法第8章地方自治、第92条、93条、94条、95条が記載された図
(出典;大屋教授資料)

日本でも高知県大川村で議員のなり手がおらず「町村総会」の検討をしていることが話題になりましたが、海外ではさまざまな地方政府・議会のパターンがあります。例えば英国では「議院内閣制」的なモデルがあります。日本の国政と同じように、議会の多数派が地方議会でも「内閣」をつくるのです。ほかにも「シティマネジャー」という制度もあります。議会は選挙で選ばれた住民代表が担いますが、行政を運営するトップとなる人物は、その議会が選んで任命する制度です。大屋教授は「株主総会が外部から優秀な経営者を連れてくるような形」と会社に例えて説明しました。

大屋教授は「各国の憲法の内容には、例えば人権に関する規定などは共通点も多いが、統治機構については、グローバルスタンダードはない。だからこそ、より一層、我々国民、住民自身が自分たちの問題として社会にふさわしい制度を考えないといけない」と訴えました。財政調整制度についても、総務省からの指導・監督・同意などの制度にしても、小規模自治体まで含めて「ユニバーサルサービス」を提供していく、日本のどこに住んでいても最低限の行政事務が受けられることを保障するための制度であるという側面もあると解説します。しかし、大屋教授は、そのような財政調整制度などに頼る形での小規模自治体も含めた、全国一律の行政サービスの提供は「いつまで続けられるのか、自治体自体がなくなる可能性も踏まえ、憲法問題として何に手を付けるのか、本気で考えないといけない」とも警鐘を鳴らしました。


■難しい?地方の自主課税
片桐准教授が説明する様子
地方自治体の自己決定権と全国一律の行政サービスの両立は難しいと語る片桐准教授

片桐准教授は「地方のことは地方で決める」という論理と、全国一律の行政サービスの提供によってみんなで繁栄を享受しようという論理は「近いようで遠い」と語り、両立はなかなか難しいとの見方を示しました。

地方自治をめぐる憲法改正論議では、市町村などの自治権の強調という方向で議論が進む傾向があるとしながら、現在の地方自治制度は、地方自治法、地方公務員法、公職選挙法、地方財政法、地方交付税法、地方税法など、たくさんの法律で「複雑かつ精緻に決まっている」(片桐准教授)。そのため、憲法改正によって「今の制度が保っているバランスが壊れてしまう恐れにも配慮する必要がある」と指摘します。

「難しいのは各都道府県・市町村が現にそれぞれ独自の意味あるものとして存在していることであり、それを憲法改正というやり方で一方的に変更しようとすることが妥当なのか、またそのようなやり方が妥当だとしても、それが政治的に合意可能か。」(片桐准教授)
片桐准教授説明資料、タイトルは「憲法と地方自治」として、憲法上の地方自治の解釈、論点などを説明した図
(出典:片桐准教授提示資料より)


日本の地方財政システムでは、「行政サービスを実施する主体がその費用も負担するというのが法律上の原則である」と片桐准教授は説明します。つまり、国から地方自治体に委任されている仕事は、基本的にその自治体がお金を負担するというシステムです。

もっとも、地方自治体の行政サービスには、地方自治体がそれぞれの考え方で地方の実情に合わせて行うものと、国からの要請に基づいて、あるいは、全国一定の水準で実施されるべきものとがあります。本来ならば、これらすべてにかかる費用に充てる費用を、地方公共団体が独自に課税し徴収することが理想なのかもしれません。しかしそれでは税源に乏しい小規模自治体は困ってしまいます。また、国からの要請に基づいて、あるいは国が全国一定の水準で実施せよ、といって実施しているサービスについて、なぜ全額、地方公共団体が負担しなければならないのかという問題もあるでしょう。そこで、地方交付税交付金や国庫支出金などの、国による財源保障や財源措置の制度があるというのです。

もっとも、このような国による財源保障・措置の中には、対象となる行政サービスが特定されるとともに、行政サービスの実施の方法等も法律によって決まっていることがあります。
しかし、たとえば、全国どこでも「保育園」は必要ですが、その運営方法等は、地域の実情に併せて実施すればよく、その方が安く提供できるということもあるでしょう。
ただ、仮に安く提供できたとしても、使途が特定されている財源は、他の用途に振り向けることができません。また、国の財政も厳しいですから、各自治体が努力して行政コストを圧縮しても、その成果は国の財源措置の圧縮という形で反映されてしまえば、努力するだけ無駄になるのではないかという危惧もあります。
そこで、明石市の泉市長のように、より柔軟にサービスを展開できるようにしてほしいと希望を持つとともに、できる限り使途が特定されない独自の財源を確保したいと願っている自治体も少なくありません。
片桐准教授説明資料:タイトルは「主要税目(地方税)の税収の推移」として、個人住民税や地方法人二税、地方消費税などの地方税収が、平成に入って以降、大きく伸びていないことを示す図
[表]主要地方税の推移(片桐准教授提示の資料より)

このような使途の特定されない財源の際たるものが、地方税収です。しかし、自治体の歳入面で大きな柱となる地方税(個人住民税や地方法人二税、地方消費税など)の税収は、平成に入って以降、大きく伸びていません。また、地方税の歳入構成比を見ると、愛知県では50.6%を占める地方税収があるのに対し、島根県では14.8%しかありません。

これを踏まえて、片桐准教授は「税源と税収に自治体で偏りがある。国によって頭を押さえつけられていて、嫌だという自治体があっても、実際には、国の関与がないとやっていけない自治体もあるし、提供されなくなってしまうサービスもあるかもしれない」と地方の現状を語ります。したがって、「自主課税権の強化を求めることも理解できるが、むしろ使途の特定されない財源を広く確保することが必要であるとともに、地域間の格差を調整する制度や一定の財源を保障する制度自体は残しておかざるを得ない」といいます。また、税は地方公共団体だけでなく、国も賦課徴収するものですから、国民経済との調和などの観点から、両者の調整も求められます。
そのため、どうしても、一定程度国が関与することはやむを得ないのではないかと、片桐准教授は指摘します。

そこで、片桐准教授は「問題は、このような調整が、国から一方的に行われているように見えるところにあるのではないか。そうだとすると、課税自主権を明確化するよりも、憲法上、国政レベルでの利害調整において、市町村や都道府県の意見を適切に反映させる方向性が望ましいのではないか」と提案します。
地方の声をどう国に届けるかについて全国知事会の憲法改正草案にも示されているように、総務省や、全国知事会や全国市長会などの地方6団体、首長らの個別陳情、国と地方の協議の場などのように「複線化された意見集約の方法のあり方の当否」を含め、合意形成の方法を考えていくことが重要であり、それが結果として国政レベルにおける調整の仕組みに影響を与えていくことにつながるのではないか、と述べました。
片桐准教授説明資料、タイトルは「憲法と課税自主権」として、全国知事会「憲法における地方自治の在り方検討WT報告書」(2017年)を引用し、国との調整プロセスに公共団体が入っていくことが重要と説明した図
(出典:片桐准教授提示資料より)

■「地方自治の本旨」考えるべき
別所執行役員が説明する様子
国と地方自治体の役割を整理するべきだと語る別所執行役員(右)

こうした議論に対して、別所執行役員も、憲法でも明確にされていない「地方自治の本旨」について「もう一度考えたほうがいい」と今後の憲法論議を見据えてコメントしました。「住民自治の実現という観点から地方自治の機能が規定されてない。目的は、現行の自治体の維持ではないはずで、時代に合っていない制度の改正が必要。どこまでが国の役割で、どこからが地方自治体の役割なのか、泉市長ご提案の二層制度は非常に面白く大胆な提案であり、このような制度も機軸に色々議論を進めて、改めて整理することが今まさに求められているのではないか。」。
 
これを受け、大屋教授から、「現行の地方自治制度が、今後も正しく機能していけるのかということはしっかりと検討が必要。また、現在の行政では、ある事業を推進する際に、財源は国、都道府県、市町村でそれぞれ3分の1ずつの負担となる場合なども多いが、それは誰の意思決定に基づき誰の責任でやるのか、施策についても明確に評価測定ができない。
可視化することも含めた検討が必要。現在の憲法上の規定でそれは実行しうるものなのか。」という問題提起がありました。
地方財政の基盤のあり方については、片桐准教授からも「現行の憲法の規定で十分かというと難しいが、地方財源基盤について、任務分担、任務と税財源の関係、費用分担の課題など全てにわたった再整理が必要で大きな課題。そのため、全国知事会の憲法改正草案にもあるが、地方公共団体によく配慮し、調整の場などを実現することも重要ではないか。」という指摘がありました。
それに対して、泉市長からは、「ぜひ自主課税権と自主立法権が明確になるべき。地域特性を生かしたまちづくりには、財源確保も予算のつけ方も異なる。最低限のナショナルミニマムとして、国家が責任を持って財源確保をやり、それ以外は地方自治体が裁量をもって行っていく」と意見がありました。

別所執行役員から、今回の議論を受けて、「基礎自治体の課題意識から出発するべき。権限と責任がねじれている。住民として満足できるサービスが得られるのか。住民自治ができているのか。あるべき地方の姿を模索するプロセスが必要ではないか」と総括しました。


■会場からの質疑
白熱したパネラーの方々の議論について、会場からも質問をいただきました。

<地方自治のコミュニケーション>
これからの地方自治において、広報・公聴の機能不全との指摘もあり、メディアやコミュニケーションのあり方が重要ではないか、という質問がありました。
これに対して、泉市長からは、「市長をしていると実際に会う関係者は、自治会や業界関係者の方が多くなりがちですが、市役所には来ない大多数のサイレントマジョリティである市民にもしっかりと情報を発信し、そこで得た情報を行政に反映するということが重要。」との発言がありました。
大屋教授は、メディアとインターネットという観点から「昔と生活様式も多様化し、住居地と勤務地が離れている場合も多いため議会のネット中継など積極的な取り組みも重要。一方、テレビの県域免許や地方紙のあり方と都道府県への帰属意識も結びついてきたが、今後インターネット時代での影響力や有効性などが問われてくるのでは」と投げかけました。

<地方自治の人員と業務について>
また学生の方からも、「日本の公務員の数はOECD平均から4分の1程度しかいないともきくが、本当に地方公務員の数は多すぎるのか、どのような業務内容を増やしていくべきなのか。また地方基礎自治を行っていくべき人口20万人という指標は、都市部と地方都市の場合では大きく意味合いも変わってくるのではないか」という質問がありました。
泉市長より「人員の問題について、介護や子どもの分野には専門性が必要であるにも関わらず人が少なすぎるため、そのような分野では正規職員を増やすべきと考える。
また人口規模については地域特性で異なるので、人口規模というより、自己決定をするに足りる一つの範囲がしっかりと権限と責任を果たしていくべき。そこに財源が伴えばより合理的システムとなっていく」と回答がありました。
人員の問題については、大屋教授からも、「歳出の効率化という観点からも不要業務の削減は強く指摘されているところでIT化によってどれだけ業務を効率化して適正な人員配置ができるかが更に重要。また専門性についても非常に重要で、そのようなスペシャリティをもった専門家を確保するような認証機関なども必要となってくるのではないか」とご意見がありました。
最後にモデレーターの大屋教授より、「本日の議論のように、このような課題があるということを積極的に議論することが重要で、我々はどのような制度を選択するのか、どのように意思決定をしていくのか、それを考えるのが民主政治における主権者としての国民の仕事ではないか。」とまとめていただきました。

ヤフー政策企画部では、今後も、多くの方々に議論を喚起し、社会で生じている様々な事象に対して課題意識を持っていただけるような機会を提供していきます。


(T.H,D.K,Y.I)

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