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インターネットガバナンスフォーラム(IGF)・マルチステークホルダー諮問グループ(MAG)第二回会合に出席

2018年7月11日から13日にかけて、スイス・ジュネーブの国連ヨーロッパ本部(United Nations Office at Geneva:UNOG)において、国連傘下のインターネットガバナンスフォーラム(IGF)マルチステークホルダー諮問グループ(MAG)2018年第二回会合が開催されました。昨年2017年3月に、筆者がこのIGFのMAG日本委員に選出されたことはこのブログでご紹介しましたが、今回、筆者がMAG日本委員(二期目)として、2018年の第二回会合に参加してきましたので、以下ご紹介します。

なお、IGF/MAG第二回会合のアジェンダについてはこちらを、その他文書や会合のトランスクリプトについてはこちらをご覧ください。

国連ヨーロッパ本部の建物の一つが写っている写真。

(国連ヨーロッパ本部(UNOG))

1. IGF/MAG第二回会合・結果概要
7月11日、IGF/MAG第二回会合の初日は、オープンコンサルテーションに割り当てられました。これは、本会合に参加しているさまざまな利害関係者・コミュニティーから広く意見を聞くためのものです。今回のオープンコンサルテーションでは、MAG議長やIGF事務局、そして2018年のIGFホスト国(フランス)から、今年のIGF(フランス・パリにて開催予定)に関する進捗状況の報告があり、それに対し一般参加者およびMAG委員からさまざまな意見が表明されました。また、ベストプラクティスフォーラム(BPFs)コネクティビティーに関するプロジェクト(CENB)ダイナミックコアリッション(DCs)といった会期間活動(intersessional activities)、国別・地域別イニシアチブ(NRIs)、そしてMAGワーキンググループ(WGs)の進捗状況に関する報告も行われ、それらについても一般参加者やMAG委員からさまざまな意見表明が行われました。その後、IGF信託基金(Trust Fund)に関する報告に加え、IGFと密接に連携している各種国際機関やその他組織・団体からも、現在取り組んでいる活動等について報告が行われました。

全ての報告が終了した後、今回のMAG委員によるワークショップ提案書の採点結果を受けて、明日以降どのようにワークショップ提案書の最終審査を進めていくかにつき若干の議論が行われました。そこでは、合計で60件のワークショップをIGF期間中に開催できるとして、①上位40件のワークショップ提案書を自動的に採用とした上で、残り20件をどのワークショップ提案書にするかを検討すべきとする立場と、②上位40件のワークショップではいくつかの不均衡が残っているとし、それを是正するためにも、上位40件ではなく、所定の8つのテーマごとに上位4~5件のワークショップ提案書をそれぞれ採用すべきとする立場で意見が対立し、議論は翌日以降に持ち越されました。

IGF/MAG(アイジーエフ・マグ)第二回会合が開催された会議室の入り口と廊下が写っている写真。

(IGF/MAG第二回会合が開催された会議室の入り口)

7月12日(2日目)から13日(3日目)、主に以下の事項について、MAG委員の間で本格的な議論が行われました。

(1)ワークショップ
IGF/MAG第二回会合のほとんどの時間が、ワークショップ提案書の最終審査に費やされました。まず、ワークショップ提案書の最終審査をどのように進めていくかにつき、激しい議論が続けられました。途中、上位40件ではなく50件のワークショップ提案書を採用すべきとする新たな提案等も出されましたが、結果的に、上位40件をとりあえず採用とし、必要に応じ調整、残りの20件でいくつかの不均衡(地理的なバランスやジェンダーバランス等)を是正することになりました。

その後、IGF事務局から、より詳細な分析データが共有された上で、以下のような提案が出されました。

①上位40件のワークショップ提案書を維持


②上位40件のワークショップ提案書の中で残っているいくつかの不均衡を是正するために、必要最小限のワークショップ提案書(28件)を加える

③「28件」という数字は、8つのテーマごとに何件のワークショップ提案書が一次審査(IGF事務局によるスクリーニング)を通過したかを洗い出し、一次審査を通過した提案書の合計件数(344件)に対するそれぞれの割合(%)を算出、その上で、テーマごとに割合(%)に応じたワークショップ提案書の数となるよう、それぞれ点数の高いものから追加で拾い上げていった結果導き出されたもの

④開催可能なワークショップの数が60件と想定されるため、いかにして68件のワークショップを60件に近づけるかを議論


この提案についてもいくつかの反対意見がありましたが、とりあえずはこの68件を検討していくことになりました。

他方、追加で拾い上げられたいくつかのワークショップ提案書を統合すべきとする提案や、68件に入っていないワークショップを拾い上げるべきといった提案、あるいはそうした選外のワークショップ提案書と68件に入っているワークショップ提案書とを統合すべきといった提案が出され、さらには今回IGFがフランス・パリで開催されることを踏まえ、フランスの組織・団体から提出されたワークショップ提案書をもっと採用すべきといった意見や、フランス出身の登壇者を増やすべきといった意見等も相次ぎ、議論は混沌とした状態に陥りました。MAG議長の裁量により、8つのテーマごとに一つずつ検討が進められましたが、さまざまな提案や意見が表明されたため、結果としてワークショップの最終審査は次回のMAG電話会議に持ち越されることになりました。

(2)全体的なテーマ
今年のIGFのホスト国であるフランスのDavid Martinonデジタル担当大使から、「デジタル革命(digital revolution)」には「信頼(trust)」が必要といったような文言が入った全体的なテーマとしたい旨提案があり、さまざまなMAG委員から意見や提案が出されましたが、議論は平行線をたどり、全体的なテーマの決定も今後に持ち越されることになりました

(3)オープンフォーラム
IGF期間中、主に政府や国際機関等が開催するオープンフォーラムについても若干の議論が行われました。IGF事務局から、今回の応募件数は合計で40件、そのうち30件が所定の要件を満たし一次審査を通過した旨の報告がありました。これについては、IGF事務局が事前に示していたシナリオに触れつつ、最終的に採用する件数を24件まで減らす意向はあるのかといった質問がありましたが、IGF事務局からは、オープンフォーラムはIGFにおける政府や国際機関等のプレゼンスを強化するものであるから、基本的にはこの30件を維持したい旨の発言がありました。これに対し、いくつかのMAG委員から、オープンフォーラムというフォーマットに値しないような内容のものがあり今一度中身を精査して欲しいといった意見や、一つの組織・団体から複数の応募があり、1つに限定すべきといった意見が表明されました。今後、こうしたMAG委員の意見を踏まえ、開催を認めるオープンフォーラムの件数が確定される予定です。

(4)会期間活動および国別・地域別イニシアチブ(NRIs)
今年のIGFの開催期間が3日間と、例年よりも1日短いことから、ベストプラクティスフォーラム(BPFs)、コネクティビティーに関するプロジェクト(CENB)、ダイナミックコアリッション(DCs)といった会期間活動に関するセッションや、国別・地域別イニシアチブ(NRIs)に関するセッションをどうするかにつき、MAG委員の間で議論が行われました。まず、それぞれの会期間活動に関するセッションを、通常の1セッションにつき90分から60分に時間を減らすという提案については、数名のMAG委員から、とりわけダイナミックコアリッション(DCs)との関係で、2017年のIGFの際に60分で開催したところ多くの不満があったため、できる限り90分を維持したい旨の発言がありました。また、ベストプラクティスフォーラム(BPFs)に関するセッションについては、国別・地域別イニシアチブ(NRIs)との連携を選好する意見もありました。

なお、国別・地域別イニシアチブ(NRIs)のフォーカルポイントを務めるIGF事務局のAnja Gengo氏からは、今年のIGFでも国別・地域別イニシアチブ(NRIs)に関するメインセッションおよび合同セッション(collaborative sessions)を開催したいという要望を受けており、具体的な提案も出てきている状況であるため、今後ワークショップやその他各種セッションの動向を注視しながら調整していきたいとの発言がありました。

(5)テーマ別メインセッション
テーマ別メインセッションとは、原則としてMAG委員が開催を提案するもので、最も大きな会場で6言語(国連公用語)の通訳付で開催されるものです。昨年スイス・ジュネーブで開催されたIGFの際、筆者がデジタル経済に関するメインセッションのリード役を務めたことはこのブログでご紹介しましたが、今年のIGFでは8つのテーマについてメインセッションを開催することが提案されました。他方、今年のIGFは例年よりも短いことから、そのタイムスケジュールをどうするかにつき議論が行われました。途中、いくつかのテーマを統合し合同開催とする提案が出されましたが、統合対象となったテーマを選好するMAG委員から激しい反発があり、メインセッションについても今後検討が継続されることとなりました。

IGF/MAG(アイジーエフ・マグ)第二回会合の様子をとらえた写真。

(IGF/MAG第二回会合の様子)

2. むすびにかえて
IGF/MAG第二回会合の期間中、Antonio Guterres国連事務総長が「デジタル協力に関するハイレベルパネル(High-level Panel on Digital Cooperation)」設置すること、またそれに伴い、IGF事務局長のChengetai Masango氏がこのパネルに異動となることが発表されました。

7月12日(2日目)には、Antonio Guterres国連事務総長による記者会見の様子がIGF/MAG第二回会合の議場のスクリーンに映し出され、また7月13日(3日目)の午前には、ハイレベルパネルの事務局長を務めることになった、インドの在ジュネーブ軍縮代表部のAMANDEEP SINGH GILL大使との会合の機会が設けられました。

このハイレベルパネルについては、外務省から、日本からは安西祐一郎氏が委員に選任されたことを歓迎する旨の報道発表が出されましたが、上記ハイレベルパネルの事務局長との会合の場においては、政府、民間セクター、技術コミュニティー、アカデミア、市民社会出身のさまざまなMAG委員から、IGFやMAGとの関係やハイレベルパネルの透明性に関する質問が相次ぎました。とりわけ、どのような形で委員が選出されたのかを問う発言やマルチステークホルダリズムが担保されていないといった発言、今後どのように取り進めていく予定なのかを問う発言や、パブリックコンサルテーションを行うのであれば世界中の利害関係者の意見をしっかりと踏まえた上で議論を進めて欲しいといった発言がありました。

なお、このハイレベルパネルは20名の委員で構成され、Melinda Gates氏(ビル&メリンダゲイツ財団共同会長)とJack Ma氏(アリババグループ会長)が共同議長を務めます。必要に応じ電話会議を行いながら、2018年9月および2019年1月の2回にわたり対面会合を行い、9ヶ月以内に議論の結果をとりまとめた報告書を提出することになっています。

今後、このハイレベルパネルがどのような作業を行い、どのような報告書を発表するのか、またその中で、IGFやMAGとの連携が行われるのか、非常に注目されるところです。いずれにせよ、デジタル分野のルールやポリシーメイキングに、政府や国際機関のみならず、民間セクター、技術コミュニティー、アカデミア、市民社会といったさまざまな利害関係者が、今後も積極的に参画していくことになるでしょう。

昨年のIGF/MAG第二回会合に関するブログ記事の中でも書きましたが、国際的なルールやポリシーメイキングが国内のルールやポリシーメイキングに多大な影響を及ぼしていることは明らかであり、本来的に国境を意識しないグローバルで共通な環境であるインターネットに関するものはなおさらです。こうした観点から、国際的な動向を継続的にフォローしていく必要があることは言うまでもなく、またそれ以上に国際的な場でプレゼンスを発揮する、自らの立場を主張・反映させていくことが必要不可欠です。しかし、それを短期的に見て単なる「コスト」とみなしているからか、長期的に見てより大きな「ベネフィット」を生むために必要な上記認識が、日本国内において遅々として広がっていないことに、強い危機感を感じています。国内のみを見て、対外的に沈黙を続ける国や社会、組織や個人を待っていてくれるほど、世界は甘くはありません。そして、知らず知らずのうちに不必要な「コスト」を背負うことになるのは、結局そうした沈黙を続けるアクターであることは世の常です。

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IGF事務局関係者とMAG委員の集合写真。一列目の左端近くに筆者が写っている。

(IGF事務局関係者とMAG委員の集合写真)

(K・M)

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